後悔の国

 つったかつったか....

意味も無くスキップで進む、

銀の髪にパステルピンクの瞳の女性がゐた。

彼女の名はシュネー旅人だ...。

「ふんふんふーん♪ふんふんふーん♪」

遂にはそう口ずさみ始めた...

何かいい事でもあったのだろうか、

いや、先述の通り意味は無い...

したくてしているだけである。

遠くに薄らと城壁が見えると...

普通に走りだしたのであった。


『こんにちは!旅人さんですね!ようこそおいで下さりました!突然ですが、名前の手続きはしますか...?』

「名前を?どうして」

『そう言うスタイルなのでございます。しなければプライベートを知られる事は無く、すればサポートが付く...それだけでございます!』

「いきなりギャンブルですねぇ...」

『尚、一度入国すると再入国はできませんので注意を!後悔しない選択を!』

「.....むぅ」

....と後ろにヒトが並びはじめた...

長く悩んでいる暇は無さげのよーだ。

「しましょう!しますか!」

『では名前を書いてあちらの待合室でお待ちください!』

待合室は普通に飲み物片手に、

観光ガイドを読みながら過ごした。

『クベレーさんどうぞ〜いい観光を!』


 という訳で入国。尚、クベレーとは偽名だ。

偽名持って無いとやっていけない理由が...

このシュネーにはある。

土造りの建築物で国は作られていて、

地面は土が丸見え...雨が降ったら大変そうだ。

向かうのは勿論宿...。

国側から指定された宿だ、

多分先程言っていた"サポート"なるモノが、

関わっているのだろうが....どうだろうか。

宿も土造りだ。自然って感じの匂いがする...

『カードはお持ちでしょうか?』

「あぁ、これかい?」

差し出したのは、城門で渡されていたカード。

首かけのストラップが付いているカードだ。

『ありがとうございます。貴女はこの部屋でございます...ごゆっくり』

部屋に入るが、未だにサポートが分からない。

身体ほぐしか、ドリンク無料か....

で、もうひとつ引っかかるのが

手続き無し側のメリットである、

プライベートを知られる事が無い...

という受付の台詞セリフである。

偽名を書いたとは言え...

名前が何に使われるのかが、どうも気がかり。

しかし、考えていても仕方がないので、

シャワーを浴びて寝る事にした。


 翌日、宿を出て国周りへ。

ぐるりと回って気づいた事がある...

この国はどうやら貧富の差がそこそこあり、

一つある城門とは反対側は治安悪めらしい。

因みに治安悪め側へ行こうとすると...


『No』

「どうして」

『クベレーさん!貴女みたいな旅人をあんな場所に行かせ、怪我をさせる訳には参りません』

「そ...」


 こうやって防護服の男に防がれる...。

フェイントをかけて入ろうとしたら、

ちょっと強めにNoと言われた。

何もそこまで....とは思ったが、

コレがサポートなのだろうか.......。

そういえばご飯がタダだった。

サンドウィッチ等は1、2個なら無料である。

これは美味しい...!

1個を店の中でトッピングもりもりで、

もう1個を外で食べようと歩いて行くと...

何人か小さい子供がぐったりと倒れている。

ムチを持った店主が、叫んで他の子供を叩く。

低所得エリアからの出稼ぎだろうか.,.

流石に見ていられないので、

店主がいなくなった隙に何か恵みに近づく。

私だって慈愛くらいは持ち合わせているぞ...

コソコソ近づくシュネーに気付いて、

子供達はキラキラと目を輝かせた...。

サンドウィッチをちぎって....

『No!』

ゆっくり手を伸ばした男の子の手が引っ込む。

声を上げ現れたのはやはり防護服の男...

「なんでさ?ここは治安良いだろ」

こう言うと

『クベレーさん!一度渡してしまえば、次から次へと群がってきますよ?蜚蠊黒い弾丸の様に!....ですから...!』

肩を捕まれ、Uターンさせられ、歩かされる。

頭だけ子供の方へ振り返ると...子供達は、

疲れ切った目でただこちらをじっと見ていた。

『クベレー...』『クベレーさん....』『クベレーさん行っちゃった』『あんな奴....』

もう見ていて無駄だと知って、

寸秒前は期待に目を輝かせていた筈の、

その子供達は、黙々と作業に戻って行った...。


 次の日、国を出た。

国を出る前に...

『後悔は無いですね?』

「さあな...サンドウィッチは美味しかったよ」

『良かったです!良い旅を!』

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