横顔の正面画

 なんという事じゃっ....こんな事がっ!


 独り、旅人がゐた。

がらがらがらがらがらがらがら.....

銀の髪にパステルピンクの瞳...

その瞳孔は猫のように細く、

がらがらがら......

日向と日陰で敏感に絞りを変える...。

がらがらがらがらがら.....

彼女の名はシュネー...旅人だ。

がらがらがらがらがらがら......

さて、この私シュネーが何をしているか...

それが分かるだろうか....?

今、私は荷台を引いている...。

とある国王に、運んでくれと依頼を受けた...

それだけで金貨10枚....とても美味しい依頼だ。

国交を深めるため、

手始めに絵画とは...思い切ったものだ...。

旅人に任せるモノでも無いとは思うが...

私はちゃんとやりますよもちろん。

がらがらがらがらがら....

がらがら音に頭が洗脳される前に、

無事、国に到着した...。

国王から貰った特殊許可証で手続きをパス。

これが無いと商人だと思われたり、

王に近づくやべーやつに思われてしまう。

期限が付いている為...悪用はできない様だ...。

え?悪用??しませんけど。


 そうして城に入る...。

王にはぽいことを言って......

遂に絵画を渡す...。

王は布を払ってその絵を見ると....。

『なんという事じゃっ....こんな事がっ!....こういうのを使者の前で言うのもなんじゃが...この国の住民は....顔が半分しかないんじゃのう.....』

その絵は横顔の絵だった。

横から見た顔に正面から見た目が一つ....

エジプトの壁画のような絵だった。

この国、実は横顔を描く文化が無かった....。

正面からで勝負するタイプの国だったのだ...

故に横顔の絵を見て...そう感じたのだろう。

『うーむ...でも善意ならこちらも善意で返さねばならん....ほれ....絵と手紙じゃ...."今度我が国で会おう、宜しく"とだけ書いたよ。語弊はめんどくさいからのぅ』

「あ、はい...」

王室の一部屋で贅沢して次の日来た道を戻る。

え?なんでそんな贅沢をって??

うーん....何でだろうねぇ?


 そうして元いた国に到着...。

がらがらがらがらと荷を引き、目指すは王室。

『おぉ...待っておったぞ!結果は?いかに?』

「手紙です」

『なるほど...これは....おっけぇって事にしておこうぞ...わしポジティブ!』

「これ贈り物です...」

と絵を渡し、それを見て国王は青ざめる....

『なんということだ...この国の住民は目が4つあるのか....!』

その絵はやはり、正面から見た絵だった...。

2つの目がこちらを向いている...つまり、

片側に2つ...合計4つの目があると....

彼はそう思ってしまったという訳だ。

『魔族だった訳か......ええい、仕方がない....。おっけぇ貰ったのだから貰った分仲良くしなくては......。あぁ、ありがとうぞ。これが金貨10枚、受け取るが良いぞ』

ありがた〜く受け取り.......

ちょっと嘆く王の前からこっそり消え失せた。


 ちなみに、シュネーの知らない話だが、

後日、横顔絵を描く国では正面絵が、

正面絵を描く国では横顔絵が....、

新芸術として夫々それぞれ大流行したのであった...。





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