第11話 『N·A』

数日後久しぶりの『クリエイト』が実施された。


5機の『イシュタル』が各自準備を始めている。


「イースト小隊各自準備状況の報告を」


「こちらイースト1OK」


「イースト2OK」


「イースト3OKよ」


「イースト4OKだ」


「イースト5……イースト5報告を」


「こちらイースト5準備今終わりました」


「イースト5落ち着け」


「新さん。そうですよねまだ始まった訳じゃないですし」


「にしてもまさか始めから5人って決まっていたとわな」


「そうですね。なので今自分がここにいることが不思議です」


「まったく、宇佐美幕僚長も人が悪い。始めから目的を教えてくれても良かったのに」


「そうですね。でもあの緊張感のお陰で僕達はチームプレーを意識するようになった。と僕は思います」


「イースト4と5。オープンチャンネルでの私語は慎め」


「失礼しました!」


「うむ。それとイースト4。オープンチャンネル及び秘匿チャンネルは司令部には筒抜けだからな気をつけろよ」


「えっそうなんですか」


「イースト4。『クリエイト』終了後。私の執務室に来てください」


「了解です………幕僚長」


「………バカ」


(生き残る前提とはやっぱ司令部から気に入れてるなあのヤロー)


「では今回の『クリエイト』について確認します。今回の対戦国は『高麗公国』。原因は日本国領『竹島』あちらの呼称で『独島』近海で『シャエフ』が約50年分埋蔵されていることが確認された。」


「コン、『シャエフ』ってなんだ?」


「核エネルギーを中和する物質です。『シャエフ』の発見により核エネルギーの中和が可能となりそれを元に日本が『ニュートロン·アクセラレータ』を開発し原子力及び核エネルギーが安定的かつ高い安全性で運用可能になったんです。因みに名称の由来は核エネルギーの中和を研究していた学者さんの名前をもじったそうです。」


「なんでそんなモノ今更必要なんだよ」


「それは、『ニュートロン·アクセラレータ』が開発されて30年以上経った今でも『ニュートロン·アクセラレータ』以上に人類が使うエネルギーを低コスト低リスクで補える技術が確立されてないからです。現在、原子力及び核エネルギーは『ニュートロン·アクセラレータ』を使用していないモノは基本的に高リスクだからと例え低コストでも見向きもされないわ。そしてその開発権限と製造方法を我が国日本と国際連合が独占保持している」


「なんで独占なんて………」


「国家というものは世界の覇権を握る為なら力を悪用する物なの、歴史がそれを証明しているのよ。だから我が国と国連は他国への漏洩による『ニュートロン·アクセラレータ』の悪用及び発展を抑制する為に独占しているの、因みに我が国が国連に技術提供したのは国連自体の権限を強め組織体制を変革させる為。2000年代の国連は第二次世界大戦以後の名残が強く5大国と呼ばれた米·英·仏·中·ロへの異常過ぎた権限のせいでいざいずれかの国が当事者となった問題が起きた際にまともに機能出来ないというジレンマを抱えていたのよそのおかげで現在、安保理の常任理事国は各大陸から1国づつ計7カ国が4年周期で国連総会の決議で決められているの」


「日本は随時常任理事国にならなかったんですか?」


「それをしてしまうと、ただでさえ『ニュートロン·アクセラレータ』の所有権で現状国際的に優位な立場になった日本が更に国際的に優位な立場に立ち覇権を握ろうとしていると特に旧5大国から潰される危険性があった。だから時の総理大臣『渡部善彦』は敢えてどの国も常任理事国になれるチャンスを作ったの」


「あと、もう1つ。なんでさっきチラッと出た『ニュートロン·アクセラレータ』の悪用はまだしも[発展]もダメなんですか?」


「『ニュートロン·アクセラレータ』の開発者である名古屋大学教授『村山徹(むらやまとおる)』先生によれば[『ニュートロン·アクセラレータ』はエネルギーとなる『ウラン』と『シャエフ』をギリギリの黄金比で中和させており、黄金比を誤ると『連鎖核融合爆発』と呼ばれる『核融合』した原子によって発生した爆発が他の『核融合』した原子の爆発を誘発し連鎖し更に乗数単位で瞬時に膨れ上がる為。これ以上の発展は望ましくない]と回答されているわ」


「あくまで噂だが仮に『連鎖核融合爆発』が一度起った場合地球上の生命の3割が死滅。2割の土地が汚染され除染に約50年を有するらしい」


「そんなのに俺達は乗ってるのか………」


「まぁ『イシュタル』は『ニュートロン·アクセラレータ』搭載兵器だから安心して………とは言っても『ニュートロン·アクセラレータ』が爆発した場合は『核爆発』の1/10の威力はどうしても出てしまうわね。これくらいで良いかしらイースト4?」


「失礼しました。幕僚長。大丈夫です。」


「では話しが大分逸れてしまいましたが『クリエイト』の続きの話しをします。元々あの辺りは昔から領土問題を抱えていましたが約2ヶ月前『高麗公国』の市民活動グループが『竹島』に上陸したところを我が国の海上保安庁が逮捕し強制送還。その際に市民活動グループに諜報員が紛れ込んでいた為、政府は実力行使による占領への下調べを危惧し海上保安庁を随時竹島近海に配備し警戒。それを『高麗公国』が抗議するも我が国は沈黙を貫いたのであちらから『クリエイト』が提示され開催されることとなった。というのが流れです」


(権益がキッカケで燻っていた問題が加速度的に発展した感じか)


「『イシュタル』は5対5。場所は現在貴方達がいる竹島直下の地下500km。諜報員の情報によれば相手は見知らぬ新兵器を導入している模様警戒されたしとのことよ全員よろしくて」


「OKです。幕僚長」


「ありがとうございます。今回のステージは自然の地下でかつ調査も不十分な場所の為。判断は現場指揮官であるイースト1に任せます」


「イースト1了解。」


「ではそろそろ時間です。各員の奮闘と生存を御祈りします。」


「了解!!!!!」


未開の地、クリエイト初参戦者そして新兵器の情報の少なさ数々の不安要素を抱え5人は出陣した。


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