第24話 四面楚歌
「これは・・・・」
「えげつないことするね、あいつ等」
「・・・・・。」
「なんだよ?」
鋭い眼光が杉本に突き刺さる。
「別に・・・・」
「俺が仕向けたとか思っているなら、妄想も甚だしいぞ山内。確かにここには俺のいるエリアの後藤と粕谷がいるが。あいつ等と組むメリットがどこにある?それに清水と太田にはいつコンタクトを取るっていうんだ?そもそも所属の違う奴らなのに。それに宇佐美幕僚長が言ったろ?これはバトルロワイヤルだって。あいつらの思惑は知らないけど、渡を真っ先に潰したい理由が各々にあるんだろ?」
(・・・・・渡)
「あれ恵くん。君も渡狙いなんだ?てっきりこっちに恨み辛みを晴らしに来るものだと思ったんだけど」
「あんたはその後やってあげるから、安心しなさい」
「それはどうも」
「それよりアイツ………不気味なのよ」
「不気味?」
「だからヤツをやる」
「あっそう。でも譲れないな、アレは僕の獲物だ」
(凄いです渡さん。4機に囲まれて全て対処してますわ!私達の腕もそこまで悪くないはずですが………)
「あっ、ちょっと後藤さんそこ邪魔ですわって、発砲!?」
「粕谷、お前こそ俺の邪魔をするな」
「あら、貴方私の邪魔を出来るような腕でしたかしら」
「俺は貴様のしたたかな面に痛い目に遭っているのであって腕では負けてはいない」
「あら……彼処までやってまだそこまでの自信。壊しがいがありますわね」
(どうやら俺は共通のターゲットみたいだが、あいつ等が連携している訳ではなさそうだな。だけど『アヌシン』ってこうも動かしにくいのか………慣れって恐ろしいわ。・・・・・さてと圧倒的不利な状態でこれではマズい)
呼吸を整える新。
「俺はお前だ、お前は俺だ」
(なんだ!?一瞬空気がピリついた)
「やっぱりあいつ気持ち悪い」
独特の構えを見せる新の『アヌシン』に警戒する4人。
「舐めた真似を」
後藤の『アヌシン』が発砲しながら突撃し距離を詰める。標準装備盾『メデュオシールド』を地面に突き刺す新の『アヌシン』。左にスラスターを吹かしながら突き立てた『メデュオシールド』を右足で蹴る。視界に新の『アヌシン』を捉えた後藤の『アヌシン』は狙いを定めるために構えていた『メデュオシールド』を下げた。
「なに!?」
すると目の前には新の『アヌシン』が蹴った『メデュオシールド』が迫る。再び『メデュオシールド』を構えるのは間に合わないと判断し後退する後藤の『アヌシン』
「隙あり♪」
後方から粕谷の『アヌシン』の発砲が直撃する。
「粕谷。テメー」
「バトルロワイヤルですよ、後藤さん恨みっこ無しです」
後藤亮二。後方からの銃撃がコックピットに直撃。死亡判定
AIの判定がアラートされるとそのまま後藤の『アヌシン』は強制的に機能停止になった。
スラスターで宙に浮く新の『アヌシン』を太田の『アヌシン』が追撃する。めい一杯スラスターを吹かし回避し素早く地面に着地する新の『アヌシン』
(人型機動兵器『アヌシン』。『イシュタル』のベースにして初の人型機動兵器。約50年前に初の実戦投入され当時は戦車の砲弾や戦闘機のミサイル、戦艦の主砲をも耐える装甲とその分厚さに似合わぬ機動力で戦場での新たな主役と期待された兵器であったが国家間紛争が『クリエイト』のような決闘方式になったことで、より機動力が求められた結果。よりスタイリッシュに洗練された後継機にあたる『イシュタル』に主役の座を譲った機体。『ニュートロン・アクセラレータ』開発前だったこともあり主動力が『モーターバッテリーエンジン』で稼働時間に制限があったのも『イシュタル』に主役の座を譲った要因とされている。もっともこの『アヌシン』は現代型に改修され『ニュートロン・アクセラレータ』及び『ダイレクトシンクロン』搭載型だが『イシュタル』の3割に満たない性能の『アヌシン』でここまでやれるのか、あの男は)
「大島三佐。何故今回は『イシュタル』で演習じゃないんですか?」
「・・・・国家間で『イシュタル』の保有数は最大10機と『クリエイト』のルールとして定められている。だから本来演習で『イシュタル』を使うことはこちらとしては本意では無かった。」
「だからあの旧型?」
「あぁ、最近『アヌシン』に『ニュートロン・アクセラレータ』と『ダイレクトシンフロン』を搭載することに成功した改良型が完成して、それが今演習を行っている『アヌシン』だ。差し詰め『アヌシン改』といったところかだが性能はせいぜい『イシュタル』の30%くらいだ」
(それをあの男、機体の最適化無しであそこまで動かせるのか・・・・)
「こいつ、死ね!!」
(あの依怙贔屓君の動き、いくら『ダイレクトシンクロン』で動いているとはいえあれは人間に出来る動きなのか?自身のイメージで動かすとはいえ、痛覚が残る関係上人間に出来る以上の動きをしたら自身に痛みが伴うんじゃないのか?・・・・・!?)
清水の『アヌシン』に忍び寄る影、とっさに回避する。
「あの~参戦者4人ってこと覚えてますか?」
「いや~ごめんね、眼中に無かったよ」
「そうですか。ではその人を見下したように見る顔をプライドともどもズタズタにして差し上げますわ!」
「いや~なんかとんだ嫌われ者だね。僕は」
(なんか知らないけどあの男別の相手と交戦に入った。ならその隙に此奴を・・・・!?)
先程まで回避運動を続けていた新の『アヌシン』が反撃の銃弾を浴びせる。
「戦場で他事考えるのは命取りになるぜ」
「知ったような口火を!クッ…」
体勢を立て直した新の『アヌシン』動き回りながら発砲し太田の『アヌシン』に反撃の隙を与えない。
(何が狙いだ。無駄弾を撃ちつくせば補給など出来ないのだから一気にこちらが畳み掛けるだけ………投げ捨てた盾の回収!?それが狙いか)
盾を回収するとすかさず上空に舞う新の『アヌシン』
(馬鹿が狙い撃つ………盾を下敷きにするだと!?あのまま落ちて来たら押し潰ぶされる………何故動けない!)
乱射されていた弾丸は太田の『アヌシン』の周囲に打ち尽くされ足元が沈殿していた。
(足が抜けないだと!マズイ押し潰される)
新の『アヌシン』は盾を置き去りにし太田の『アヌシン』の後ろにつける。
「ウグッ!軽い!?ヤツは!?グハッ!?」
太田恵。後方からの銃撃がコックピットに直撃。戦闘不能。
「よし!あとはギザ野郎と不思議ちゃんか…………」
粕谷咲。四肢破壊により戦闘不能。………条件達成につき演習終了。
そこには無惨に破壊された粕谷の『アヌシン』とそれを見下ろす清水の『アヌシン』の姿があった。
「清水くん、渡くん演習お疲れ様。っとあとの2人も合流して、この4人で今回のクリエイトは参戦してもらいます。」
「幕僚長。それでその特別な案件の『クリエイト』とはなんです?」
「それはですね……………」
「えっ!」「………。」「ふ〜ん」「そのような案件も『クリエイト』で」
「では、よろしくお願いしますね。皆さん」
「………渡。渡起きなさい。着いたわよ」
「あっ、悪い。ここが…………」
「えぇ、そうみたい」
数日後、彼等は『スイス連邦』の都市『チューリッヒ』にいた。
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