第25話 候補地

「ここが………チューリッヒいやスイスか」


とある『クリエイト』の関係で『スイス連邦』の都市『チューリッヒ』に派遣された4人。


「…………外の空気久しぶり」


「そうだな」


「なに感傷に浸ってるんだ。俺達は遊びに来た訳じゃないんだぞ?」


「わかってる。いいだろ別に」


「………さっさと行くぞ」


「なにあいつ苛ついてるんだよ?」


「それはやっぱり今回の『クリエイト』の内容が原因じゃないかな?」


2人の後ろから音も無く忍び寄る清水。2人の背筋が凍る。


「なっ、あんた!?」


「悪いね、驚かせて」


「だって[五輪(オリンピック)の候補地]決めの為に俺達命を賭けるんだろ?そりゃ今まで国の未来を賭けた戦いを生き延びた者からしたら当然ある反応の1つじゃないかい?」


「五輪だって国の威信を懸けたイベントじゃないか?」


「イベントと言ってしまう時点で[娯楽]なんだよね。五輪は」


「…………。」


「『クリエイト』ってのは元々永年未解決の歴史的問題や国家間では解決しにくい問題を解決する為の[最終手段]だ。五輪なんてやろうと思えば話し合いや国家間の取引でなんとかなる問題さそれをわざわざ命賭けで勝って掴み取ってくれって、そりゃ命かける俺達からしたら不満の1つ2つ出るさ」


「…………。」


「その割にあんたは平気そうだな?」


「まぁ僕は昔から命賭けるのが仕事だからね。なんの問題も無い」


(どんな仕事だよ………)


「君達も随分余裕そうだね」


「まぁ俺はどんな問題でも役に立てるなら今の自分に出来る事をやるだけだから」


「ふ〜ん。成る程」


「私は命じられたことをやるだけよ」


「ふむふむそれが君達の心の持ちようね。ごめん折角気分転換してたところ邪魔して、そろそろ行かないとまた杉本くん怒っちゃう。行こうか?」


「えぇ」


「そうだな」


合流し指定された場所に移動する4人。


「しかしなんでスイスが開催場所なんだ?」


「『スイス連邦』は今の国連の体制になった時に本部を『アメリカ連合国』のニューヨークから引き継いだんだ。現在の国連本部はこの国の『ジュネーヴ』にあるんだ」


「なんで本部移転なんか?」


「諸説あるけど有力な一説は永世中立国であり、ある程度発展している『スイス連邦』に本部を移転させることで『国際連合』がどこの息もかかってない独立した組織だとアピールする狙いがあると言われている」


「ふーん」


「でっ今回の『クリエイト』がこの場所になった訳だけど、恐らく不正を排除しているとアピールするのに一番効果的な国がこの『スイス連邦』なんだと考えているよ」


「中立公正を謳う国連の所在地で開催することで『クリエイト』が潔白であるとアピールしたいと」


「そうだね。まぁどこまで潔白なのかはわからないけど」


「確かに、思想があればある程、陰謀もあるだろうし色々な国が纏まっている国連だからこそ1枚岩とは言えないわね。」


「そういうものか」


「なんだい?渡くん」


「不正とか思惑とか気にせず自分の信じた事を貫きとうせばいいのになって思って」


「馬鹿か貴様。そう思い通りに成らないのが世界だから人は争うのをやめられないんだろうが、だから考えを何重にも巡らせ自分の信じた事を成していくんだ」


「それって結局相手と自分を比較するからだろ?闘う相手は相手じゃない。自分自身だ」


「なに言ってる?お前」


「別に人と競うことを否定はしない。相手に勝ちたいと思う気持ちが原動力になるのも理解出来る。でも結局自分がどう成るかを決めるのは自分自身だ。周りに流されず自分を貫けるか?昨日の自分を超えられるか?それが人にとって大事な事じゃないのか?」


「いや〜よくその発想で生き残れたね、君」


「………。」


「そう睨まないでくれよ、色々風当りが強そうな生き方でよくこれまでやってこれたねって思って。」


「そうか?別に俺は苦労してないが?」


「成る程その鈍感さが周りを気にさせない訳ね。」


「いちいちムカつく言い方するなアンタ」


「元来こういう性格なものでね」


「ふん…………」「…………。」


「あっ!ごめんね。『クリエイト』がここで行われる意図を話してたはずなのに脱線しちゃって。お二人さんもうすぐ『カルケル』の中だからこの景色見るのも今のうちだよ」




スイスの『カルケル』に着いた4人。そこには2人の男女が待っていた。


「君達が日本の代表者かね?」


「はい。清水圭太、杉本恒星、山内真緒、渡新以下4名。遅れながら今到着しました。」


「提出済みのデーターと一致しました。事務総長。」


「いや全然時間内だよ流石日本の方々。律儀に挨拶をありがとう。私は『国際連合事務総長』の『アルフレッド·アンダーソン』だよろしく。」


(このおじさんが国連事務総長………国連のトップかよ!?)


「これはわざわざ事務総長が私共『カウサ』を出迎えてくださるとは光栄です。」


「よしてくれ、私は[全ての人類の平等を宣言している立場]の人間だ。自分達をそこまで卑下することは無い。そしてこちらは」


「『国際連合安全保障理事会クリエイト管理委員会委員長』の「フェイ·ユーリン」です。よろしく」


「さて諸君。今回の『クリエイト』を何処まで把握しているのか聞いていいかな?」


「今回の『クリエイト』は[次期五輪の開催地を決定]するもので4カ国4人計16人のバトルロイヤル。最後に残った『イシュタル』の国が勝利と[五輪の開催地]となる。『フランス共和国』が申請し、『日本国』、『ブリタニア王国』、『フランス共和国』、『ローマ皇国』の4カ国がそれぞれ『愛知』『マンチェスター』『マルセイユ』『ミラノ』を開催地として立候補し競っていると聞いております。」


「しっかりと話しをしておいてくれて助かるよ、全く内容を知らされておらず怒り出したところもあったからね」


(国による『カウサ』に対する価値観の違いがあるのか?)


「こちらも各々思うところがあるようですが」


「………テメェ」


「無理も無いな。『クリエイト』は明日の予定だ。それまでは手配した宿舎でゆっくりしてくれたまえ、勿論スイス側には許可をとっているから安心してここの『カルケル』で休んでくれ」


「ありがとう御座います。ではこれにて」


「各員の健闘を祈っているよ」


アルフレッドは軽く手を振ると自らの職務へと戻った。




「と、明日までの自由時間となったわけだけど。ここで僕らも一時解散としよう」


「いいのか?」


「なになに、仲良くスイスの『カルケル』の観光でもする?」


「そういう訳じゃないが」


「死んでも嫌」


「右に同じだ」


「………って感じだし明日の『クリエイト』開始1時間前に集合してくれたらいいよ、流石少しは作戦や考えを共有したいし」


「わかった」


「了解よ」


「じゃあいいか?自由行動で」


「どうぞご自由に」


別々に『クリエイト』まで過ごすことにした4人。それぞれが特別な思い出を作ることになった。












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