第26話 各々の出会い·壱

「『カルケル』に違いってあんまりないのな」


新は街中を観光がてらふらついていた。


(これは本当に4人で観光とかやらなくてよかったかも)


あてもなく歩いているとある店に目が止まる。


(ファミレスか………俺のこの生活もここから始まったっけ)


何気なく入ったお店にてメニューを見る新。


(日本では見たことない名前のメニューだ。こういったところでは国の違いが見れるわけだな)


「ふぅ〜前祝いだぜ呑んだ飲んだ!」


「ふぃ〜もっと酒持ってこい!!」


「おい!ネェチャンも一緒に呑もうぜ」


(ファミレスに来たんだよな?ここは酒場か??………メニューはファミレスなんだけど)


「すみません。お客様ご迷惑ですよね?」


「えっ、まあ………なんですかあれ?」


「さぁ?なんでも祭りの前祝いとかで大盛り上がりの外人達で」


「外国人?あの人達スイスの人じゃないんですか?」


「あんな野蛮なのスイスにはいません。………貴方もこの国の人じゃないですよね?アジア人?」


「えぇ、まぁ」


「珍しい。こんなに外人が集まってなにかあるのかしら?まぁ暫く騒がしいだろうけどごゆっくり。キャー」


酔っ払った男の1人がウエイターの臀部を触り絡んで来る。


「ネエチャンそんな優男と話してないで俺達と呑もうぜ」


「ちょっと離して変態!それに私仕事中です」


「つれねーな。俺達の奢りだからさ」


「結構です」


「折角出会ったのもなんかの縁だ。ちょっとだけ付き合ってくれよ〜。イテェ」


気がつくと新は酔っ払った男の腕を掴んでいた。


「その辺にしとけオッサン」


「なんだ優男。俺とやろうってのか?グォー」


余りの激痛に顔が歪む酔っ払った男。


「おいおいどうした?アロルド。軟派失敗かってなんだテメェは」


「あんたらのお仲間が嫌がるこの娘にちょっかいかけてたから注意しただけだ。」


「ざけんな、軟派の邪魔してんじゃねーぞコラ!」


「軟派は一度失敗したら引いた方がいいと思うんだけど」


「まだ失敗したって決まった訳じゃねーだろうが」


「対象の娘が嫌がった時点で失敗だろ」


「テエメ舐めた口聞きやがって」


「表出ろや!優男!!」


「いいのか?余計あんたらの株下げることになるぞ」


一触即発の4人慌てるウエイター。


「ったくうるせーぞお前ら!」


1人の女性の怒号で静まり返る店内騒いでいたアロルド他2人も鎮まる………どころか恐る恐る振り返る。


「あっ姐御………」


「人様に迷惑かける呑み方はすんなって散々言ってるよな?」


「すっすまねー姉御」


際どい服装の女性が新に近づく。


「あんた悪かったねウチの連れが、仕事戻りな」


「ハッハイ!」


ウエイターは新に頭を下げ足早にその場を抜けた。


「兄ちゃんも悪いね。ウチの馬鹿共が」


「いえ、別に」


「どうした?」


「いや、目のやりどころに困るといいますか」


「うん?………はぁ〜んおませだなお前」


「いや、その服もっと自重した方がいいですよ」


「これがアタシだ。他人にとやかく言われる筋あいは無いね」


「それはそうですが」


「………もっと見たいか?」


「はっ?」


「言葉とは裏腹に目はこっちをチラチラ見てるから実は気になるんだろ?」


「そんなことは………ないです」


「そうか………チキンか」


「なんですって?」


「レディにここまで言わせて尻込みとはチキン以外になんて言うんだい?」


「………アバズレに興味は無いんで」


「ほう、今度は一転啖呵か?」


「そうやって男が誰でも自分に屈すると思ったら大間違いですよ?オバサン?」


「上等だコラ!」


「勝手に誘ってキレんなオバサン」


「女性に年齢で侮辱するのは失礼って学ばなかったか?童貞。それに私はまだ20代だ!」


「俺は童貞じゃないし、そう感じさせるあんたが悪い」


「………ってことは大人な遊びが出来る訳だな」


「はっ、ウグ!」


ボトルのワインが新の喉を通る。


「オェー」


「なんだ?酒がダメなのか?童貞」


「ワインをあんな飲み方フツーはしねーよ」


「悔しかったら一気に呑み干してみろ」


「上等だコラ」


「テメェ黙ってきいてりゃ姉御になんて口のきき方して………」


「お前らは黙ってろこれはコイツとアタシのサシだ!おらどんどん酒持ってこい!!」


「わかりました姉御!!」




浸すら呑んだくれる2人…………新が気がつくと知らない酒場の席で眠っていた。


(イッテー。調子乗りすぎた、ってもうすぐ明け方じゃないか!?こんな状態で『クリエイト』はマズい、あいつらになんて言い訳する?)


「お前。口だけじゃないみたいだな」


カウンターであの女性が1人呑み続けていた。


「あんた………まだ呑んでたのか?」


「私もさっき目が覚めた」


「そうか」


「だらしないウチの連れはここに来る前からベロベロだったよ、結局お前との呑み比べは私の勝ちらしいが正直そこの記憶が無い。」


「そうか」


「あんた『クリエイト』参加するんだろ?」


不意な質問に戸惑う新。


「なんでそう思う」


「この時期に日本人がこんなとこ彷徨くなんてそれくらいしか理由がないからだよ」


「…………。」


「早く仲間の元に戻りな心配してるよ」


「あんた名前は?」


「『ローマ皇国』の『エルサ·ベッキア』だお前は」


「『日本国』渡新。」


「そうか、新また『クリエイト』で」


「じゃあまた」


フラフラになりながら新は酒場を後にした。

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