第35話 その背に負いしもの

「ではこれより司令部VS反乱軍の『クリエイト』を執り行ないます」


殺風景の景色の中で対峙する『イシュタル』。独特の緊張感が周囲を包む。


(あの機体………なんだ標準装備しか持ってないじゃないか、幾らなんでもパイロットに最適化する時間は無かったか!)


(特に警戒するような装備は無さそうだけど、後ろの2本の剣………相手も近接戦闘を得意としてるのか?)


「では、『クリエイト』開始!」


ドックン、ドックン


(この感じまさか…………そうですか。………必ずやご期待に応えてみせますよ)


距離を詰める新の『イシュタル』。


(動かないのか………なに)


新の視界から一瞬で流川の『イシュタル』が消える。


咄嗟に気配を察しナックルグローブで防いだ。


(この剣を拳で防ぐだと!?なんだあの『イシュタル』の手はなにか装備しているのか?)


剣で裁きながら銃弾を躱す流川の『イシュタル』


(こいつ、なんて動きだ、目でとても追いきれない)



固唾を呑んで見守る司令部。


「なんですか、あの動き」


「いくら『イシュタル』とはいえあのスピード異常です」


「あんな動きが出来る『イシュタル』や装備我が国にあるのか?」


「・・・・・。」



防戦一方の新の『イシュタル』、留まることを知らず常人離れしたスピードを更に上げる流川の『イシュタル』


「ハァハァハァハァ、ウグ。まだやれます・・・・・私はまだ、ですからどうかお導きを・・・・・」


(スピードは凄いが段々動きが単調になってきた?それに・・・・・)


「うひぃ~~~あひゃひゃひゃひゃ」


タイミングを計り、『メディオナイフ』を投げる新の『イシュタル』。刃は流川の『イシュタル』の左肩に刺さった。


「痛いじゃないか~あひゃひゃひゃひゃ~」


片腕で剣を振り回す流川の『イシュタル』


「お前・・・・もうよせ、機体の節々から火花が出てるぞ」


「・・・・・おい聞こえているのか、おい!」


「司令部より05。通信は無駄よ。その機体は我が国の機体ではないわ」


「なんだって」


「所有している『イシュタル』今貴方の乗っているのも含め10機全て確認しています」


「じゃあどこのなんです?」


「それはわかりません。ですが他国の機体とのやりとりは接触回線でなければ不可能です。」


「・・・・・・。」


距離をとる新の『イシュタル』。虚しく剣が空を切る。


「あぁ・・・・どうか・・・・お導き・・・・を・・・」



「反乱軍の『イシュタル』機能停止しました」


「・・・・・なんですか、この後味の悪い結果は」


「自爆・・・・・なのか?」


「パイロットが過剰な機体の動きに肉体的についていけなかったってこと?」


ざわめく司令部。



(!?なんだ。今一瞬感じた嫌な気配は、なっ!?)


目の前の『イシュタル』が再び動き出した。


徐々に距離を詰められる。再び始まる常人離れしたスピードでの攻撃。


「よせ!お前もその機体も限界なんだろ!?これ以上は」


(さっきより更に加速して・・・・・)


「グハ!」


研ぎ澄まされた新の感覚を持ってしても捉えきれなくなり、新の『イシュタル』に傷が増えてくる。


機体の各部位が警報音と赤い表示で画面に表示される。


「そろそろこの機体も防ぎきれなくなってきてるか。・・・・・。」


「!?」


胴体めがけて斬りかかってきた剣を右腕で止める新の『イシュタル』


すかさず左拳を相手の胴体に突き刺す・・・・・。


流川の『イシュタル』はまるでなにかから解放されたかのように滑らかに地面に崩れ落ちた。



流川学の『イシュタル』戦闘不能。勝者渡新。


コックピットを強引に開けすぐに機体を降り、相手の状態を確認しようとする新。


そこには白目になり、泡を吹き、節々から流血した流川学の見るに堪えない姿が遺っていた。


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