第3話 パラテネ

「ここが我が国のパラテネ司令部だ」


 


早速、新はパラテネの司令部に案内されていた。


 


「私の役目はここまでだ、では兄ちゃん我が国の為にその命燃やしてくれたまえ」


 


そう高笑いして男は立ち去った。


 


「私は日本国パラテネ統括幕僚長『宇佐美レナ』です。よろしく」


 


組織の長が自分の想像を裏切っていて驚きを隠せない新


 


「渡新くんだったわね。どうかした?」


 


「いや、すんません。まさかこんな綺麗な人が責任者だと思って無かったので」


 


「あら、ありがとう。でもおだてても何も出来ないわよ」


 


「あの…レナさんも犯罪を犯してるんですか?」


 


「貴様!幕僚長になんてことを」


 


「大島三佐。彼はここに来たばかりなのよ、知らなくて当然よ。渡くん。私とこの大島三佐は日本国国防軍から出向しているわ」


 


「国防軍って…表向きでは戦闘は起きないはずなのに、まだ存在する必要があるのですか?」


 


「まあ国防軍というのも形式的にね。民間人がこの組織を運営する訳にはいかないから防衛省の管轄下に置かれている立場にあるわ、だからここに携わる幹部は皆防衛省の役人よ」


 


「むしろ、極秘の施設だから民間人がいる方がおかしいって訳か」


 


「その通り、ここはあくまで【この世に存在しない組織】。一般市民を巻き込む訳にはいかないわ。さて、挨拶はこれくらいにしましょう。この施設でのルールをこの大島三佐が案内しながら説明してくれるわ」


 


「…よろしく」


 


「…フン。ついてこい」


 


司令部を出ようとした新。


 


「渡くん。期待してるわ」


 


レナに見送られ照れる新であった。


 


暫くお互い無言のまま進むと


 


「ここが貴様がこれから暮らす場所だ」


 


示された場所の光景に新は驚きを隠せ無かった。


 


「これは…町?」


 


「おかしいか?」


 


「いや…もっと独房とかを想像してたから」


 


「発案者である『渡部善彦』によると『犯罪者とはいえ国の為に命を懸ける者達へのせめてもの手向け』だそうだ。ここは地下都市『カルケル』貴様ら『カウサ』が住む町だ」


 


「『カウサ』…」


 


「貴様ら犯罪者の総称だ『カウサ』はこの都市でのみ生活を許され、司令部から『クリエイト』への召集が掛かる時以外はこの町から出ることは出来ない。」


 


「勝手に出るとどうなるんだ」


 


すると大島は新に道具を2つ投げ渡す。


 


「スマートフォンと腕時計?」


 


「まずはその時計を腕にはめろ」


 


新が腕時計を腕にかざすと、自動的に腕にかかった。


 


「この腕時計は時計としての機能と貴様の身分証明書の役割を果たしている。その時計は四六時中貴様の腕に固定され、取ることは不可能だ。」


 


「…成る程。これで監視されるって訳だ」


 


「そうだ。そしてさっきの貴様の質問の答えだが、もし『クリエイト』で召集されていない者が『カルケル』から外に出た場合。その時計から心臓に電気ショックが流れ、時計が爆発する」


 


「…おっかねぇ処分の仕方するんだな」


 


「電気ショックで一足先にあの世に逝っているんだ。まだましだろう。そしてそのスマホだが情報端末であると同時に仮想通貨『ペル』の管理端末となっている」


 


「『ペル』って」


 


「我が国の『円』のような役割を持った。『パラテネ』限定にして唯一の共通通貨だ。この『ペル』は他国の『パラテネ』もこの通貨のみを採用しているから、実質この世界の共通紙幣だ、そしてこのスマホと時計は連動しているから、貴様が生きている限りはそれは貴様専用だ。」


 


「とりあえずこれで生活しろってことか」


 


するとスマホに通知が来る。


 


「なんだ…司令部から30万ペル支給されたんだが」


 


「一律で初めてここに来た者には司令部から支給されている。価値は1円=1ペルだと思っていればいい、あとは貴様が好きなように使え」


 


「どうやって稼ぐんだ?」


 


「基本的に『クリエイト』の成果報酬でしか、ペルは稼げ無い」


 


「『クリエイト』で生き残り金を貰うか、シンプルだな」


 


「そう簡単き稼げると思わないことだ。『クリエイト』の成果報酬は召集されても活躍によっては0もあり得るからな」


 


「俺達からしたら、明日の生活も懸かってる訳だな」


 


「そういうことだ。それでだ説明している間に到着した。ここが貴様の住み処だ」


 


用意されたのは10畳程の一室。キッチン、トイレ、風呂がついた、これまた新の想像を越えた部屋であった。


 


「明日の9時。後程通知される場所で『イシュタル』の訓練がある。必ず行くように、それまでは貴様の自由だ。」


 


そう言って、大島は立ち去った。


 


(犯罪者に対する扱いとしては、優遇されているのかこの状態は?)


 


自由と言われてもどうしていればいいかわからない新は、町中を散策していた。


 


(日本ならどこにでもある町って感じだな、インフラも整備されてて、町ってよりは都市みたいに整備されてる)


 


休息も兼ねて立ち寄った。ファミレスで今後の事を思案していると


 


「このポンコツ、飯を溢しやがった」


 


他の客同士がトラブルになっていた。


 


「すっすみません」


 


「俺の服台無しにしやがって、どうしてくれるんだ?アァん!弁償しろや」


 


「あの…僕ペルがもうここでのご飯食べるくらいしか持ち合わせてないんですよ。ごめんなさい。」


 


「人様の服汚して弁償もしないだと、ふざけんなてめえ」


 


服を汚されたと騒ぐ客がもう一方の客を殴り飛ばす。


 


服を汚されたと騒ぐ客は連れの仲間と束になり、もう一方の客をボコボコにし始めた。


 


その様子に無関心な周り…気がつけば新の身体は服を汚されたと騒ぐ客を殴っていた。


 


「なにすんだてめえ!」


 


「それくらいにしろ」


 


「関係ねーだろてめえには」


 


「煩くてゆっくり出来ねーんだよ。それに謝ってるじゃんか、正直に金無いって言ってるんだからその辺にしてやれよ」


 


「人の服汚してごめんなさいで済ませる程世の中甘くねーんだよ」


 


「服汚したって、お前の連れがその男が通る時にわざと足だしたからじゃないのか」


 


「いちゃもんつけるんじゃねーよ」


 


「俺はあの席にいたから、一部始終バッチリ見てるんだわ」


 


「もういい、マジでこいつうぜえ、コイツからやんぞ」


 


囲まれる新。


 


「あの、いい加減に静かにしてもらえます」


 


服を汚されたと騒ぐ客の隣の席に座っていた客の女が鋭い目つきでこちらを睨みつける。


 


それが2人の出会いのキッカケであった。


 

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