第18話 欲望

「作戦会議は終わったかい?御三方?」


「そうですね。僕達は作戦内容通り御二人の後方支援に徹することにします」


「そうですか。了解しました。ではジャパンの皆さん。よろしくお願いします。」


「後方支援か」


「どうした?アリシア。」


「見たところそれを実現出来る機体はあの気の弱そうな男のしか無さそうだが」


「………まぁ、俺達邪魔さえしなければ。それでいいんじゃない」


「そうだな」


「では米日合同小隊作戦を開始する。」


米日合同小隊は前衛2機後衛3機の編成で進軍を始めた。


「ブロッサム5。敵位置わかるか?」


「こち·ら、ブロ·ッサム·5、11時方向距離300 に2機、4時の方向距離900に2機を確認」


「もう1機は」


「現在·こち·ら·の·センサーにはその4機·のみで·す」


「了解索敵をそのまま頼む」(なんだ通信感度が悪い)


(情報によれば今回の相手の1機は『支那連邦』きってのエース[滅突のフォン]。ならば近接戦闘を仕掛けてくる可能性が高いが)


「こちらブロッサム2。11時方向の敵を視認。仕掛けるか」


「ブロッサム2。OK許可する。」


「了解。」


ブロッサム2により砲撃が戦闘の火蓋を切る。


(アリシアさんの機体。後ろにミサイルコンテナ、主兵装がロケットランチャー2門の重装備だけど前衛で本当に大丈夫なのか?)


「………1機大破確認。データーリンク」


「ブロッサム1。データー確認。ブロッサム3撃ち漏らした1機の追撃頼めるか」


「ブロッサム3了解」


「こちらブロッサム4。4時方向の敵が接近して来ている。砲撃支援頼めるか?」


「ブロッサム2了解。敵から距離をとれ」


(ハジメの機体。武器といえる装備が見当たらないがどうやって戦闘するつもりだ?マオの機体は刀主体の近接型だとはわかるが、機体自体は既存機が彼女に最適化されてるってところか。現状使えるのはコジロウ機の索敵能力くらい………既存機の使い回しとは、やはりジャパンは『クリエイト』を舐め過ぎだ)


「ブロッサム1。聞こえているか」


「うん?すまない考え事をしてた」


「11時方向の敵はブロッサム3が撃破。4時方向も私の砲撃支援を得たブロッサム4が撃退。だが最後の敵機が依然所在不明だ」


「そうか。ブロッサム5を中心に索敵及び警戒を怠るな」


「了解」


(マオはまだしも、ハジメもこの短時間でやったのか。………改めて確認するとあの拳、他で見たことないが、まさか『イシュタル』で肉弾戦か?面白い。………文書による通信)


「各機方針変更分隊を作る。俺とブロッサム4、ブロッサム2をリーダーとして3、5で分かれて捜索だ」


「………了解」「了解」



2手に分かれ捜索するブロッサム小隊。


(この男の機体。なんだ、小型マシンガン2丁しか見たところ無いけど………背面の2つの細長い装備と腰部の2つのパーツあれは………)


「ブロッサム4気をつけろ、最後の敵が来た」


急速に接近する『イシュタル』。ブロッサム1が弾幕で牽制するが華麗に躱される。


「あの槍。近接特化型か、ブロッサム4頼めるか?こちらが援護する」


「ブロッサム4。了解した」


(さぁ、[滅突のフォン]相手にどこまでやれる?ハジメ)


(武装無しで突っ込む機体。日本の機体だと)


ブロッサム4の先制ストレートを槍で防ぐ滅突のフォンの『イシュタル』


「ちっ捉え損ねた」


(成る程。ヒットすると同時に内蔵された短剣が突き出す仕様のナックルグローブか、グローブにある程度の強度もあるから防御も出来ると)


しかしリーチのある槍が徐々にブロッサム4の有効攻撃距離を広げていく。


(まあ、拳と槍じゃあ当然か)


(しかしこのパイロットどうゆうことだ何故『イシュタル』でこのような人体に近い動きが出来るのか?)


「貴様。パイロットになってどれくらいになる?」


(あの『イシュタル』からの接触回線………)

「もうすぐ半年ってところだ」


「!?」


「なんだよ」


「いや、駄目もとでやってみたが、まさか敵から応答があるとは思わなかったのでな、それに半年にしては良い腕をしてるな」


「それはどうも。………なんか貴方は楽しんでます?」


「ほぉ、何故そう思う?」


「槍の軌道に遊びがあるっていうか、本気で殺しに来てる感じがしないんだよね」


「…………。」


「『クリエイト』って国の威信がかかってるはずだろ?良いのかよ?」


「米軍『ディスト』のメンバーが2人に、日本の優秀なメンバーが3人。ほぼ無傷の状態で揃ってる。1人になった時点でこの『クリエイト』は勝ちを諦めてる。それにそもそも国の威信なるモノに俺は興味がない」


「どういうことだ?」


「俺は戦う事が大好きでよ、祖国の武術を全てマスターし、軍人として最前線によく突っ走っていた。」


「…………。」


「ただ生まれた時代が悪かった。『もといた世界』は力を否定した。その結果俺は居場所を無くした。そして『この世界』にたどり着いた。力がまかり通る『この世界』なら俺は再び俺自身を満たせるそう思ったんだがな」


「満たせていないのか?」


「結局は権力闘争だ。俺達はその代理戦争をしているにすぎん。」


「あんたの言う戦いの欲は満たせているんじゃないのか?」


「………冷めてるんだよ、戦う1人1人に熱が無いんだ。それはそうだ。ここに来る連中は大抵自分の意志で戦っている訳じゃないからな」


「[生きたい。生き残りたい。]それが自分の意志じゃないと?」


「そうだ。何故ならそれは政府によって作り出された。用意された環境だからな。」


「用意された環境?」


「『カウサ』が生き残る手段として国連が発動した『オペレーション·シルスプレイナー』。必死なのは最初のうちだ。『パラテネ』での生活に慣れてきた者は、じきにその熱を忘れ、戦うことが[生き残る]ではなく[生活の一部]になる。そうなると最早それは当たり前のことになりそこに感情を抱かなくなってしまう」


新には覚えがあった。


「するとどうだ?『クリエイト』に出てくる者達は戦いに慣れた者達だ。生き残ることは当たり前。当たり前になったその者達の戦いは機械的だ。指揮官の支持に従い、敵に引き金を引く。そこに俺の求める熱は無い」


「あんたの求める熱……わかる気がする」


「ほう」


「俺もあんたに言われた通り、確かに生き残るのに必死だった初めの頃に比べると大分余裕が出てきたからな、そしてすっかり何故ここにいるのか、どうしたいのか………それすらも忘れていた」


「で?思い出せたのか?」


「あぁ、俺は自分が犯した罪と向き合い乗り越え、『もといた世界』に帰る」


「お前の罪とは?」


「人を殺したこと」


「………その罪とどう向き合う?」


「それが過ちでは無かったと証明する」


「お前!人を殺して自分に罪は無いと?本気で言っているのか?」


「………それをこれからの俺が証明する」


「………面白い。お前名前は?」


「渡新。」


「俺は鳳乔敏(フォン·チュウミン)お前の熱を魅せてくれ渡新。」


互いの熱を感じ取った2人は再び拳と槍を激しく交え始めた。









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