第19話 滾るモノ
「こちらブロッサム2。今合流したが、ブロッサム1何故敵を見つけながらこちらに報告しなかった」
「ごめんごめん。ブロッサム4に先攻させたら凄まじい戦闘になっちゃってさ」
「数的優位を活かしてさっさと終わらせれば」
「ブロッサム2。これを誤射無しに支援出来るか?」
(なんだ、この戦場痕は幾ら近接戦闘だからといっていったいどれだけの時間戦っているんだ?それにあの『イシュタル』の動きはなんだ?フォン機はまだしも渡新だったか、既存機を自分に最適化しただけであんな動きを既存機の『イシュタル』で行えるのか?)
「新さん」
「………。あれは滅突のフォン」
「山内さん。知ってるんですか?」
「過去に『支那連邦』との『クリエイト』に参加した時、刃を交えたわ。その時は敵の作戦で最終的に自爆してたけど、なかなか強敵だった」
「援護しなくてもいいんでしょうか」
「あの場に介入すれば巻き込まれて命を落とす危険性がある」
「だから支援攻撃の指示が無く傍観しているのでしょうか」
「………恐らく」
激しく交わる拳と槍。ブロッサム小隊はその戦いを静かに見守る。
(………ブロッサム1。貴様のあの兵装なら、フォンの隙を作れるんじゃないのか?)
(…………面白いことやってるから、耳で拾ってみなよブロッサム2)
「不可抗力ね、懐かしい言葉だ」
「俺はアイツがあんなことになったこと事態は自業自得だと思っている」
「それは自分の行いを正当化する為の言い訳じゃないのか?」
「そうかもしれない、けどあそこで抵抗しなければ俺は既にこの世にいなかった」
「まぁ不可抗力と言うあたり、最初に殺りに来たのは新が殺した人間なんだろうな」
(なんだ、戦闘中に敵と会話しているのか?ブロッサム4)
「お前の力なら無力化も出来そうだがな?」
「ただの学生に凶器を持った人間の無力化なんて出来ねーよ」
「ただの学生ね………。俺にはそうは見えないが」
「何故だ」
「何故って、ただの学生なら俺と戦って10秒もしないうちにあの世に逝ってるはずだからな」
「グッ」
フォンの『イシュタル』の重い一撃がブロッサム4を吹き飛ばす。
(なんなんだこの嫌な感じ。俺を熱くさせるが俺の内面を見透かそうとする嫌な拳だ)
右腕を突き出し手を広げ、左腕を直角にし脇を締め拳を握るブロッサム4の『イシュタル』。
(あれが、新の型の構えなのか?)
「俺があんたを看取ってやるよフォン·チュウミン」
「俺を看取る?お前が?」
「………。」
「面白いやってみやがれ」
槍を突き刺し一直線に突っ込むフォンの『イシュタル』。
(微動だにしないだと、なんのつもりだ?………肉を切らせて骨を断つってか、なに!?)
右手で槍を反らし姿勢を低くするブロッサム4。
(へぇー。機械で脱力の動作を見れるとわね)
「ハァーーー」
カウンターで左拳が一直線に伸びる。
「ゴフ、グバッ」
左拳の短剣がコックピットに突き刺さる。
「祓うと同時に脱力して視界から姿を消すとはやるじゃないか」
「俺はあんたが本気になっていたら死んでた」
「何故………そう思う?」
「死んだと思った太刀筋が4回あったからだ。でもあんたは俺のイメージと違う攻撃を選んできた。だから俺は立っている」
「そうか、悪くない眼だ………しかし、謙遜が過ぎるな、俺は動きを読まれたと思い咄嗟に切り替えた。新。お前はそれすらも退いた。」
「そうか。なぁフォンさんよ」
「なんだ…………」
「満足出来たか?」
「ハハッ、全然足りねーよ」
「そうか。悪い」
「………次に会うときはもっと楽しませろ。渡新。」
「わかった。」
後ろから飛んできたロケットランチャーがフォンの『イシュタル』に直撃し爆散する。
『クリエイト』終了。勝者『ダイワン』
AIのコールが響くフィールド。
「お疲れ、ブロッサム4」
「あぁ、援護結局なかったな」
「余計なお世話かと思ってさ」
「…………。」
「今回は少なからず、助かった礼を言う」
「そうだね。始める前に散々言ったけど、僕らの予想を超える活躍だったよ。散々バカにしたことを詫びるよ。ゴメンね。」
「いえいえ、確かにレオンさん達から見たら僕らは『カウサ』であることに違いありませんし、貴方の価値観で見たら僕らの国の方針は理解し難いのもわかりますから」
「僕も目の前にある状況で判断するなんて、まだまだ鍛錬が必要だね」
「また会おう。今度は敵としてかもしれんが」
「敵でないことを祈ります」
輸送船を見送る2人。
「正直。ホント見くびってたよ日本」
「あぁ、確かにな」
「いづれ俺達にとって邪魔な存在になるかもしれないな」
「レオン?」
「さっ俺達も帰ろう、俺達の国へ」
レオンとアリシア。其々の思惑を抱き母国へと帰還した。
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