第20話 それぞれの罪

「あの遠征からなんか浮かないなあの2人」


「あぁ日米合同の『クリエイト』以来か」


「そうそう、最近どうやら別々の行動をしてるみたいだ」


「なんかあったのか?」


「さぁ?」


「まぁ、アイツら戦績いいし、結果を悪化させなきゃそれでもいいんじゃね?」


「案外痴話喧嘩なんじゃないか?」


「それありるかもな!お前どうだ?山内狙ってみたら、この前可愛いって言ってたろ?」


「馬鹿。誰が『カウサ』の女を嫁にするかよ」


「確かにな」


「どうですか?政府より通達のあった案件の進捗は?」


「はっ、幕僚長。そうですね選定概ね固まっておりますが、最終決定には議論が必要かと」


「そうですか、ここまで決まっている内容を私のパソコンに送ってください」


「了解」


執務室に戻るレナ。


「杉本くんに、山内さん………2人は納得の人選ね。あとは………この5人ですか。今回の案件は我が国の『パラテネ』を代表する実力は勿論。人格も求められますからね。あとは…………この2人と組ませる人材は…………確かに確信が持てませんね」


「失礼します。」


「大島三佐。お疲れ様です。どうしました?」


「政府より。あの案件の進捗状況についての催促が来ています。」


「丁度。考えていた所です。どうです?貴方の意見は?」


「…………まあ無難ですね。この2人はあとは…………決め手に欠けますね。あと3日で決めるには確かに難しいですね。そもそもこの案件すらもアイツらに命運を託さねばならないというのが、自分は………」


「まぁ、これはどちらかといえば我が国の『パラテネ』の運用方法が問題なのでしょうね。我が国で『イシュタル』を操作出来るのは、『カウサ』の人達だけですから。先の『クリエイト』での報告では、米国では『パラテネ』に米軍が関与していることがわかっていますし、国によって『パラテネ』を[刑務所]としてみるか[軍隊]とみるかの違いがあるのでしょうね」


「………そういえばどうみます?先の『クリエイト』の報告」


「………。ある程度1つの可能性として考えてはいました。」


「やはりかの国は」


「かの国だけでは無いでしょう。恐らくかつて拒否権を持っていた国々は考えているかと」


「これは今後の『クリエイト』は運用方法の検討も考えないといけないかもしれませんね」


「出来ればそちらに舵は切りたくは無いです」


「そうですか………。」


「今は目の前の案件について熟考しましょう」


「了解しました。幕僚長」




「ねえ、金藤くんって、どうしてここに連れて来られたの」


ある日の義務訓練の帰り、真緒はふとコンに尋ねた。


「えっ」


「いや、ごめんなさい。すごくプライバシーに関わる事だから、話したく無かったら大丈夫。」


「大丈夫ですよ。僕はイジメグループのパシりに遣われて、窃盗を見つかり捕まりました。」


「それって、貴方だけが捕まったの?」


「わかりません」


「…………。」


「窃盗をしたのは事実ですからね。当然といえば当然です。」


「そこに不満は無いの?」


「捕まった時はありました。なんで僕がなんで僕だけがって。でも生き残るのに必死ですぐに忘れてましたね。」


「そう」


「山内さんは聞いてもいいですか?」


「自分の信じた正義に裏切られたってところかな?」


「自分の信じた正義ですか?」


「ごめんね。変なこと聞いて。」


「山内さん!」


「なに?」


「あの………もしかしたら、新さんも山内さん仰る[信じた正義]が原因だと思うんです。新さんここに来てすぐに僕と出会って教えてくれたんです。僕も最初は驚きました。でも新さんと一緒にこれまで過ごして、とてもそんなことを自らの意思でするような人だとは思えないんです。」


「………私にどうしろって?」


「一度。ちゃんと話してみてください。僕は命を助けてくれた2人が仲違いするのは嫌なんです!お願いします。」


「それは無理よ」


「山内さん………」


「じゃあ、また明日」


足早に帰路につく真緒。その道中で意外な人物と遭遇する。


「久しぶりだね。お嬢さん」


「貴方は」


それは真緒を『パラテネ』に連れてきた男だった。





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