第21話 複雑なマインド

「貴方は越知部泰彦………」


「変わらず警戒心強いね山内くん」


「なんの用?」


「いやぁ、久しぶりに元気にやってるか気になっての。どうかね?」


「いつも通りよ」


「それは良かったよ」


「………。」


「………。」


長い沈黙を打ち破ったのは………。


「あのさ、貴方って個人の情報も知り尽しているの?」


「勿論。この『パラテネ』に関することならなんでも知っておるよ」


「それって教えて貰える?」


「情報にもよるし、タダで情報を得れると思ったら大間違いじゃよ?山内くん」


「………。」


「でも、珍しいね。君が個人に興味を抱くなんて、てっきり妹さんにしか興味無いと思ってたがの。妹さんは元気?」


「………お陰様で」


「まぁ、それはよい。それで得たい情報はなんじゃい?」


「渡新の過去」


「これまた意外じゃ」


「…………。」


「そう睨まんでくれ、そうだな…………その情報なら君のこれまでの貢献に免じて教えよう」


「ありがとう。」


「それで、渡新の何が知りたいのじゃ?」


「何故彼はここに来ることになったの?」


「彼は人を殺した」


「それは知ってる。その過程」


「過程………」


「彼は人を殺した事実を淡々と受け止めているけど、私には彼がそんなことをする人間には見えない。でも私はそれを知った時彼を罵り罵倒してそして………」


「そして?」


「拒絶してしまった。その行動が正しかったのか、私は知りたい。いやもうわかってる。感情的になってやって後悔してる。」


「…………。」


「もう一度彼と話してしっかり聞きたい。けど私から拒絶してしまったからもう聞けない」


「なるほどの〜」


「だから教えて、彼ともう一度ちゃんと向き合う為に」


「…………。そうか、確かに山内くんらしくない」


「…………。」


「君達『カウサ』の居住エリア」


「えっ」


「4つあるは知っておるかな」


「えぇ」


「どうしてだと思う?」


「さぁ………それに彼の過去とどんな関係があるの?」


「我が国の『カルケル』が4つに分かれているのはな、[過去の刑罰の重さ]で分けられとる」


「どういうこと?」


「東から南、西、そして北、君達がおる東から日が落ちるように、どんどん罪が重いヤツとして居住しておる。つまり東に住んでる君達の罪は昔の犯罪の中でも刑罰の軽い部類に入っておる」


「そう………なんですね、ならば尚更彼の過程が知りたいです。人を殺めた彼が何故一番罪が軽いとされるこのエリアにいるのか………」


「いいじゃろ、話そう。彼の罪を…………」





「お姉ちゃん、お姉ちゃん?」


「えっ、何、真由?」


「なに?じゃないよ。ボーっとして」


「なんでもないよ」


「ふ〜ん。ねぇお姉ちゃん。最近仲良くなった人と喧嘩したの?」


「ふぇ、なんで?」


「だって、あんなに嬉しそうに話してたのに、最近その人との話し全然しないじゃん」


「そんなことは………ない」


「私、その人の話しをしてる時のお姉ちゃん好きなんだけどな~」


「えっ」


「自分の本音をさらけ出せる人なんじゃないの?」


「…………。」


「お姉ちゃんがそんなに感情的になって喧嘩したり、相手を心配したりするの珍しいもん」


「それはあいつが………」


「昔のお姉ちゃんが失ったモノをその人なら取り戻すキッカケをくれるんじゃない?」


「でも、もう引き返せない。私が突き放したから」


「お姉ちゃん・・・・」


「今更、あんなこと言って私からなんて声をかけたらいいのよ」


「お姉ちゃん。大丈夫だよ」


「真由?」


「きっとその人。お姉ちゃんから歩み寄ってくれるのを待ってると思うよ?」


「私から?」


「確かに拒絶したのはお姉ちゃんからなのかもしれない。でもだからこそ相手を許さなきゃ前に進めないよ。きっと」


「・・・・。」


「その場合。時計の針を進めることが出来るのは、拒絶された側じゃなくて、拒絶した方だと思うよ」


「お姉ちゃんの想いその人にならきっと届くよ。だから頑張って」


「真由・・・・。」




(励まされたものの、どうすれば)


帰り道、そのことを思案し続ける真緒。自宅の前に立ちふと隣を見る。


(ここで扉でも開いてくれたら・・・・)


自宅の扉を開ける。


(嘘!?)


それと同時に隣の扉も開いた。







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