第16話 忘れかけた現実

『支那連邦』との『クリエイト』に招集された新、山内、コンの3人。その招集は普段とは違う様子を見せていた。


「今回の『クリエイト』は米国との合同での参加となります」


レナからの発表に戸惑う3人。


「米国ってアメリカだよな?」


「これは日米安全保障条約に基づいた事案となります」


「どういうことですか?」


「事の発端は『支那連邦』による『ダイワン』の強引な併合からなります。政治的に支那併合派と呼ばれる政治家を徐々に増やしていた『支那連邦』は先月の総統総選挙にて支那併合派の総統が誕生しました。しかし議会比率はダイワン独立派が過半数を維持している為ねじれ状態に突入。その状態の『ダイワン』に対して『支那連邦』は支那併合派の総統を利用し総統と単独で併合についての条約を締結。それに反発した議会側が総統の問責決議案を可決し対抗その議会の対応に『支那連邦』は支那併合派の救済を理由に暫定政府を設立。そこへ『ダイワン』側が『クリエイト』を提示し今回と至ります」


「でもなんでアメリカが?」


「『アメリカ連合国(米国)』は現在。『ダイワン』を自国保護領として『ダイワン』と協定を結んでいます。つまり『ダイワン』は米国領でもある訳です」


「つまり今回の件に米国は自国領への侵攻という認識のもと介入したと」


「その通りです。そして今回日米安全保障条約の元我が国が介入するのは、米国による要請とある案件があるからです」


「ある案件?」


「南洋諸島。です」


「南洋諸島って、確か俺がここに来た時にやってた『クリエイト』で日本領になったのでは」


「『支那連邦』は南洋諸島を『ダイワン』の領土として扱うとあの『クリエイト』後、国連総会で表明しています。つまり『支那連邦』にとってあそこは『ダイワン』という認識なんです」


「それって『クリエイト』のルール違反では」


「残念ながらその総会で日本は各国と足並みを揃える為にその声明を認めてしまいました。国際的な認識では南洋諸島は今『ダイワン』ということになっているんです」


「そんな………」


「それじゃ、なんの為に『クリエイト』を」


「あまりこのような表現はしたくありませんがこれが政治というものです。日本は立場上優位にあるとしても旧5大国の動向を無視出来ないのも事実です」


突きつけられた現実に言葉を失う3人。


「今回の『クリエイト』は我が国支援という立場になりますが、我が国とって重要な意味を持ちます」


「どうしてですか?」


「この『クリエイト』に勝利すれば、米国から『南洋諸島』が我が国の領土であるという確約を得られ、米国の支持の元に国際社会に改めて日本の領土として認めてもらうことが出来ます」


「今度こそってことか」


「なので、よろしくお願いします」




『クリエイト』の開催場所へ移動する3人。


「まさかこんな形で海外に初めて行くことになるとはな………」


「そうですよね」


「山内は?」


「私は久しぶりかな、日本って『クリエイト』を基本受ける側だから基本的に国内で行われるし」


「『クリエイト』の開催場所は防御側。つまりは『クリエイト』を提案された側の国で基本的に行われるんです」


「だから今まで国内でしか『クリエイト』をしてなかったのか」


「お前達着いたぞ、米国との集合場所だ。お前達がどうなろうと勝手だが負けだけは勘弁しろよ」


「…………」


輸送用のヘリから降りる3人。


「なんだよあいつ、一言余計だろ」


「最近忘れそうでしたけど、僕達って罪人なんですよね………」


「そうよ。だからああして言われるのは寧ろ当たり前なのよ」


「クソ、いくら時が経とうと納得いかねーな」


「君達が日本からの増援かい?」


降りて早々茶色の短髪の青年と金色の長髪の女性が話しかけてくる。


「では、貴方達が」


「『レオン·ケネス』だよろしく。こちらは『アリシア·ノートン』よろしくな」


「貴様に紹介されなくても、自分で名乗る勝手に紹介するな」


「そう怒るなアリシア。ゴメンなこいつ怒りんボで」


「だからいちいち私について言う必要は無い」


(大丈夫なのか?この2人)


(国家の未来に関わる『クリエイト』に参加するんです。大丈夫ですよ、きっと)


「なんだ貴様ら、悪いが私は貴様らなどあてにしてないから心配するな」


「なんだと」


「ちょっと渡。申し遅れました。山内真緒です」


「金藤小次郎です」


「………渡新」


「マオにコジロウにハジメね。よろしく!悪いねアリシアどぎつくて。普段からこんな感じだからあまり気にしないで」


「すみません。こちらも喧嘩っ早く」


「おい山内。」


「わかってくれて助かるよマオ。で1つ聞いていい?」


「なんでしょう?」


「君達って『犯罪者』って本当?」


ピリつく空気を察しレオンは続けた。


「噂は本当になんだ!ジャパンの『クリエイト』参戦者は全員『カウサ』って」


「それが何か?」


「舐めてんじゃねーよ」


あまりの豹変っぷりに動揺する3人。


「国家の威信が関わる重大事案である『クリエイト』に『カウサ』派遣するって、お前達舐めてんのか?」


「…………そちらの事情は存じ上げませんが、我が国の『クリエイト』参加者は全員『カウサ』です。以後御承知ください」


「国家の未来を『犯罪者』に託すって、ジャパンはホントイかれてるよ」


「テメェさっきから黙って聞いてれば言いたい放題言いやがって、お前も『カウサ』じゃないのかよ」


「あぁっ」


新の正面に立つレオン。


「アメリカ連合国対クリエイト特殊作戦部隊『ディスト』所属レオン·ケネス陸軍大尉だ覚えとけクソ野郎」


「なっ!」


「因みにアリシアも『ディスト』の海軍少尉だ。」


「軍人………。」


「確かに俺達の国でも『カウサ』は利用するけど仮にも同盟国と合同で対処しようってのに『犯罪者』送ってくるって、平和ボケも大概にしやがれ」


「そこまでにしろレオン。仮にもこれから行動を共にするんだ。これ以上軋轢を作るな」


「キッカケはお前だろって………あぁごめんね。つい本音が出ちゃったけど。今回はよろしくね。待機先はデーター送っておくから時間になったら『クリエイト』開催場所までよろしくね」


何事も無かったかのように立ち去る2人。3人は暫く立ち尽くすしかなかった。

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