第37話 クロッカス
「僕達の知らないところでこんなことになっていたんですね」
『リリヴェレイト』からの宣誓布告の翌日。外出自粛要請は解除され、その件がパラテネ全域に知らされた。
「そうみたいだな」
「噂ではテロリストと『クリエイト』が行われたそうです」
「そう…なんだな」
「誰と誰が対戦したんでしょうか?『カウサ』は外に出てないはずなので『イシュタル』を動かせる人はいないはずなのに」
「!?それは〜自粛要請が出る前から外にいて巻き込まれた人がいたんじゃないか?」
「それは一理ありそうですね」
「…………。」
邪馬兎武瑠の声明の後にレナに呼び出させた2人。大島同伴でとある部屋にやって来た。
(………ここがパラテネトップの部屋か、いつも説教される執務室とは雰囲気が全然違う。なんか執務室より優雅だ)
「どうしましたか?渡くん。辺りを見渡して」
「始めて入る部屋なのでちょっと興味が」
「そうでしょうね。ここに入れるのはパラテネの職員でも一部の限られた人達のみ、ましてや本来『カウサ』である貴方達が入ることは許されない場所です」
普段の物腰の柔らかい様子とは打って変わり神妙な面持ちのレナ。部屋に緊張感が漂う。
「まずは渡くん。改めて今回はありがとう御座いました。」
「いえ、お役に立てて良かったです。」
「偶然とはいえ、貴方達が外にいたことで反乱を想定よりも短時間に隠密に終えることが出来ました」
「それは良かったです」
「ですが…………」
「!?」
「そもそも何故。外に?」
「それは………」
「すみません幕僚長。先程ご説明したように、彼は私の私事に巻き込まれた為………」
「私は彼に聞いています。山内さん?」
「…………すみません」
「…………確かに彼女の私事に巻き込まれたのは事実かもしれません。ですがそれはあくまで彼女から見た視点でありその見解は誤りです」
「…………というと?」
「町の異常な気配の原因が気になっていた自分が彼女の私事を利用して外に出たに過ぎません」
「渡…………」
「……………。」
「……………。」
「………ふぅ、まぁいいでしょう。自粛要請なので元々強制ではありませんし。ですが出来れば要請でも今後は従って欲しいものです」
「以後気をつけます」
「よろしい。ではこの件はここまでで本題と行きましょう」
「本題………ですか?」
「はい。先ずは今回の一件は極秘扱いです。くれぐれも流言しないように」
「!?」
「こちらからも大まかにはパラテネ全域に情報公開しますが、貴方達が関わった事と詳細は極秘事項です。」
「…………それは『カウサ』に知られるとマズいからですか?」
「!?」
「渡。調子に乗るなよ」
「大島三佐。」
手で大島を制止するレナ。
「何故そう思いますか?」
「あくまでこれは他の人の見解なんですが、外出しないよう要請したのはパラテネに不都合な事が起きているからではないかと話していました」
「そうですね、反パラテネ武装組織『リリヴェレイト』。そう彼は名乗りました。【反パラテネ】と言うのですから、【パラテネ】という施設・・・・・それだけじゃなく。【この世界の体制】自体に反旗を翻した人達の可能性があります。」
「『カウサ』の人達の中に眠る不満が『リリヴェレイト』に共鳴し、更なる反乱を生み出す危険性を危惧しているのですね?」
「そうです山内さん。知っての通り我々国防軍に『イシュタル』を起動させることの出来る人間はいません。もし再びそのような人達が出てきた場合今回のように対処出来るかはわかりません。ですのでその事前の予防策としてこのことの詳細を知る人間はこれ以上増えて欲しくありません。」
「・・・・・。」
「それと『リリヴェレイト』という組織の得体の知れない実態も一つの要因です。」
「得たいが知れない?」
「いつ発足しどんな活動をしてきたのか、誰がリーダーをしているのか。1年以内の実態を探ってすら現時点ではなにも掴めていません。」
「あのヤマトって奴がリーダーじゃないんですか?」
「そうとは限らない」
「大島三佐。」
「奴は幕僚長との交渉を日本の【パラテネ】以外の場所から行っていたと推測される。我々のデータベースに奴の記録はあるがここには存在しない。しかし『カウサ』が司令部の許可無しに『カルケル』に出ると・・・・・」
「時計から心臓に電気ショックが流れ、時計が爆発する」
「そうだ。しかし奴はそれを可能とした。これは裏で何者かが手を引いて日本の『カルケル』から脱出している可能性が高い」
「国外の勢力かはたまた国防軍の誰かが・・・・・」
「貴様。」
「三佐。彼のいうことは最もです。この事件を機に急遽実施した身辺調査の結果が完全に洗い出されていない以上。今は身内も・・・・疑うべきです。」
「幕僚長・・・・・。」
「では少なくともここにいる私達は身の潔白は証明されていると、認識してもよろしいですか?」
「はい。なのでこれから『リリヴェレイト』についての案件は現時点では貴方達にしか依頼しません。個人的にはもう少し人員を増やしたいですが。現時点で信用出来る『カウサ』は貴方達しかいませんので」
「わかりました。山内真緒この件は他者に口外しないとここに誓います」
「勿論。俺もです。」
「ありがとう御座います。では2人とも改めてこれからよろしくお願い致します。」
頷く2人。
「それと山内さん。貴女にはあの件を実行していただきます。」
「・・・・・。」
(あの件?)
トントントン
「丁度いいタイミングですね・・・・・入ってください」
「失礼します。幕僚長。」
「・・・・・ゲンさん?」
扉の奥には『イシュタル』の整備班の責任者が立っていた。
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