第43話 嘘つき

「イヤー」


目の前の光景に取り乱す真由。


「………清水お前」


「ご苦労様。渡」


出口の向こう側で拳銃を構えて立つ清水。


「ごめん真由ちゃん」


そっと真由を床に座らせ、清水の胸ぐらを掴む新


「なんで殺した?」


恐ろしい剣幕で清水に詰め寄る。


「僕の仕事さっき説明したでしょ?」


「説得は上手くいきそうだったし、人質も解放出来そうだった!なのになんでだ!?なんであの男を」


「テロリストは生かしておく必要は無いからね」


「必要な情報だって手に入ったんじゃないのか?」


「大丈夫。君達の会話を聞いてて僕等の知りたい情報を桂木は持ってないと判断したから」


(僕等?)


「それに、それにこの娘は。一般人の前で」


「【この世界】に一般人はいないよ」


「なっ!?」


「なにかしらの理由でいるんだろ?本人に自覚があるか、無いかの問題だよ」


「…………」


(真由ちゃんの罪?山内への罪悪感以外になにかあるのか?)


「とにかく。君のお陰で僕は僕の仕事が出来たよ、ありがとう渡」


「クッ」


一瞬手首にきた痺れに腕を抑える新。その一瞬で清水の姿は見えなくなった。


「真由ちゃん。大丈夫?」


「…………。」


「真由ちゃん?」


「…………すみません新さん。大丈夫…です」


「なら良かった」


「ありがとうございました。助けて頂いて」


「ほら、肩貸して」


「はい………。」


「…………。」


現場の調査の為に続々と病院内に入る司令部の調査員達。その人混みを掻き分けて病院の出口を目指す2人。外に出るとあれだけ群がっていた人の群れはいなくなっていた。


静かになった現場で安堵の表情で待つ2人。


「真由!」


「お姉ちゃん!」


確かな足取りで真緒に歩み寄る2人。


「大丈夫?怪我は?」


「新さんが助けてくれたから、大丈夫だよ」


「渡。ありがとう」


「約束だからな」


「うん。」


「渡くん。よくやってくれたわ。ありがとう。」


「いえ幕僚長。あのいくつか聞いても大丈夫ですか?」


「そうよね。勿論と言いたいところだけど、まずは休みなさい。明日報告書を書いてもらう時に答えましょう。」


「わかりました。」


「貴女も妹さんが心配でしょう山内さん。今日はこのまま妹さんの側にいてあげてください。明日から続きを再開します。」


「ありがとう御座います。幕僚長」


前代未聞のテロ事件。それは新にシコリを残す後味が悪い出来事となった。


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