第14話 心の在処
『竹島クリエイト』以後も『クリエイト』に参加する機会が増えた新。山内とコンと組む機会も多くなり次第に3人で共に行動する頻度も増えていた。そんなある日
「心配です」
昼食を共に取っていると突然コンが話題を振った。
「心配?」
「野崎さんです、あれ以来『クリエイト』に参加されてないようで」
「………確かに時々義務訓練にも居ないし」
「時々居てもあの人にしては珍しいミスや負け方をしてるわね」
「あれから随分経つがやっぱ身近な人の死ってそんだけ堪えるんだろうか」
「どうなのかしらね」
(俺も死んだことになってるのかな、夏………)
「渡?」
「なんでもない」
「…………。」
「戦友だったんですよねきっとあの『クリエイト』の前の演習での2人はそんな感じ確かにありました」
「コンはどうしたいんだ?」
「僕は、もう一度野崎さんと一緒に戦いたい。あれから何度も『クリエイト』に参加させてもらえてますけど、初めて参加したあの時が一番僕にはしっくり来ました」
「やめておくべきね」
「山内さん」
「同情なんてもっての他だし、ましてやあの人の悲しみを私達が受け止めれる訳でもない。あの人自身が乗り越えるしかないの」
「…………」
(山内の考えが妥当だろう、だけどコンの気持ちが分からないでもない。確かにあの『クリエイト』以来チームとして挑んでいる実感は無い。コンのようにチームプレイを大切にするやつにはそもそも『クリエイト』のような身内ともギクシャクしやすい戦いは酷なことなんだろうな)
「まぁいない人のことを考えても埒が開かない。いつまた『クリエイト』の招集があるかわからないんだ。訓練しておこうぜ」
「私パス。用事あるから」
「僕も今日は帰って休みます」
「そっか。じゃあ、また明日な」
(1人の時間なんだかんだで久しぶりか。どうしたものか)
何気なく立ち寄った公園。その噴水に彼はいた。
「野崎さん?」
「うん?渡かどうした」
「いえ、最近見かけないのでどうされたのかなと思っていたのでこんなところでお会いするとは意外でした」
「確かにこんなところで渡に会うとは思わなかった」
「最近どうです?調子は」
「よくも悪くもだな、貯えのお陰で暫くはのんびり出来るし」
「そうですか………」
「お前はどうなんだ?」
「順調です。『クリエイト』に呼ばれる機会も増えて、コン………金藤もあれ以来『クリエイト』に呼ばれる機会も増えてよく共闘します」
「そうか。あいつの分析力であの『クリエイト』は勝因の1つだからな、順調に成長しているなら良かった」
「ただ。もの足りなさを感じてます」
「もの足りない?」
「正確には本来の『クリエイト』の現状を見せつけられてるといいますか、やはり自分の生活と命がかかっている以上。スタンドプレーが目立ちますね」
「…………。」
「この前なんて、金藤を騙して戦果を挙げようとしたヤツと危うく同士討ちするところでした。当の本人が止めに入って事なきを得ましたが」
「なにが言いたい?」
「もう一度一緒に戦ってくれませんか?野崎さん」
「やはりか、お前に声をかけられた瞬間。そうなるような気がしてたよ」
「なら」
「すまん」
「…………。」
「もう懲り懲りなんだ。信頼していた戦友を失うのは」
「緑川さんのことは………」
「あいつだけじゃない。青山、赤城、木島………これまで俺は多くの戦友と呼べる仲間と共に戦場をかけてきた。ここに来る前からな」
「ここに来る前から?」
「あぁ。ここに来ることになった原因もそこにある。任務中の命令違反による部隊の全滅。」
「なにをしたんですか?」
「負傷した青山………俺の戦友を救助しようと命令に背いて当時受け持った小隊を動かして小隊どころか作戦失敗の原因を作った。部隊は壊滅、助けた戦友も結局死んだ」
「…………」
「幸い大局に影響するような戦闘ではなかったが命令に背き部隊の壊滅の責任を取る形でここに来た。」
「そうだったんですね」
「失意の底にいたそんな時、あいつに会ったんだ」
(おっさん。元は戦闘のプロなんだろ?)
(!?貴様どこでそれを)
(話してほしければ、私にお前の持つ力と技術を教えろ)
(なんの為にだ?)
(この世界で生きて行く為に)
「気がつけば、あいつは俺の背中を託せるまでになり共に『クリエイト』を駆け抜けた」
「それはつまり」
「あぁ新たな戦友を見つけたんだ。しかし、また俺の判断ミスで死なせてしまった」
「野崎さん………俺は今の貴方を見た緑川さんはとても悲しむと思います」
「なに?」
「会って数日だったんで勝手な想像ですが、少なくともあの時の緑川さんは野崎さんの命令に従った事後悔してないと思います」
(誰が私を鍛えたと思ってるんだ?………でももしあんたの命令で死んだとしても、悔いはねぇーよ)
「そんな勝手な見解」
「少なくとも俺は後悔しません!」
「なぜ………そう言い切る。」
「それはきっと貴方が誰よりも相手に寄り添える方だからだと思うから」
(お前が信じてる事って結局誰かの為になる事だろ?そんなお前だからこんな世界でも私はあんたなら信じられる)
「そうして俺をまた苦しめるのか?」
「俺は死なない」
「!?」
「あんたの元でなら俺は死なない。山内も金藤もだから………」
「………無茶苦茶な理論だ」
(進め亮平。)
「…………麻里子」
野崎の頬に一筋の雫が流れる。
「もし自身の言動を破ったらどうする?」
「道連れにしてやるよ」
「死ねば一緒ってか?何処までも無茶苦茶な理論だな!おい」
「それなら苦しくないでしょ?」
「馬鹿。元も子もないだろうが」
腕を取る2人そして………
「野崎さん」
「遅かったですね」
「いいかお前ら、俺の元でやる以上俺から離れられると思うなよ」
「はい!」
「………馬鹿は1人にしてください」
「なんか言ったか?」
「あら?自覚あり?」
「行くぞ!勝って全員でここに戻る」
こうして1人の男の決起は彼等を新たなステージへと導いた。
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