第39話 気心知れた者達

「なんかこの3人ってのも新鮮だな」


『クリエイト』開始に向けて準備を進める3人。


「確かにそうですね。野崎さん」


「しかし意外だな、山内が外れるなんて」


「…………。」


「確かにそうですよね、山内さん東エリアじゃ一番実力ありそうなのに」


「噂では怪我したって聞いたが、本当か渡?」


「えっ、はい。なんでまだ本調子じゃないから今回は招集を見送られたのかもしれないですね」


「そうか、まあでもそのお陰で俺達は『クリエイト』に参加出来る訳でもあるから感謝しとかなきゃな」


「素直に喜べるものでもありませんが、外れる可能性が高い自分としては野崎さんの言い分も理解出来ます。」


「どうした渡?浮かない顔して」


「えっ、そんなことないですよ」


「悩み事ならどれだけお役に立てるかわかりませんが、力になりますよ」


「ありがとうコン。大丈夫だ」


「………まあ問題無いならいいが、幸いよく知る間柄だ渡が前衛、金藤が後衛、俺がその間のバランスを取るって方針でいいか?」


「そうですね!異議なしです」


「それでいいと思うぜ」


「では『クリエイト』の内容を確認する。相手は『高麗公国』キッカケは過去の日本の侵略に対する賠償請求だ」


「………ことある事にその問題出てくるけど、なんで『クリエイト』出来るんだ?」


「『高麗公国』の見解としては、訴えているのは被害者一個人であって国としての訴えは10年前の『クリエイト』で帰結している。とのことだがなにぶん【本来の世界】は人権問題にこと煩いらしくてな。一個人の尊重を重要視する世論を無視出来ないらしい」


「それをコントロールするのが国じゃないのかよ」


「まぁ『高麗公国』本音はさておき、『高麗公国』ってのは混迷を極めた国だからな元々南北に別れていた国が1つになってその際にも色々な国の思惑が入り乱れている。恐らく国としては決着としたことも他国の思惑で蒸し返され『クリエイト』の口実に利用されているんだろう」


「そういえば『クリエイト』の相手『高麗公国』が異常に多いですよね………」


「昔色々と揉めた国同士が1つになった国だからな、日本へ『クリエイト』を仕掛けるのにキッカケを作りやすい国だと思われているかもしれんな」


「そんな………」


「まあ、今の現状を快く思ってない国がいるんだろうよ、特に昔覇権争いをしていた国々とかは」


「それって…………」


「あくまで個人の見解だ。そう気にするな」


「…………」


「気を取り直して行くぞ」



『日本国』VS『高麗公国』のクリエイト開始。


「こちらイースト3。敵機発見。11時の方向に2機。距離9000」


「イースト2了解。先行する」


「了解だイースト2。イースト3もう1機体の索敵を急いでくれ」


「了解。………『P-SYSTEM』起動」


パラレルシステム起動します。


(…………敵高麗公国、機体数3、フィールド高野、状況…………!?)


「イースト3より各機。残りの1機は例の装備を使用している可能性あります」


「!?イースト2。一旦進行停止だ。イースト3飽和攻撃で炙り出せ」


「了解」「了解」


イースト3のミサイルポッドから放たれた無数のミサイルがイースト2が先行しようとした先に放たれる。


「!?隊長ミサイルがここら一帯を標的に落ちてきます」


「馬鹿な!?『イシュタル』の最大索敵範囲である3000mに敵はいないぞ!どうやって我々の位置を………おい奴に機体を起動させるように言ってこい」


「りょ了解………ウワー」


ミサイルの雨が『高麗公国』の『イシュタル』を襲う。


「おいあの機体を守れ!」


「無理です………近づけません。あ〜隊長!」


(『イプチャ·バーム』を装備した機体が落とされた…………マズい)


「!?急速に接近してくる敵機が1機」


「くそ、警戒しろ来るぞ」


「あぁ、隊長、隊長ーーー!」


爆散の煙と共に『イシュタル』が接近する。


「………ったくよ、なんでこんなことの為に俺はよーーー」


「こちらイースト2、最後の1機を発見した」


「こちらイースト1。先制攻撃を許可する。こちらもすぐ合流し追撃する」


「こちらイースト3。両機気をつけてください。その機体なにかおかしいです。」


先に辿り着いたイースト2はただならぬ異変を感じとる。


(この嫌な感じ………まさか)


「イースト2どうした!?立ち止まってやらないなら俺が先に仕掛けるぞ」


「イースト1!よせ下手に近づくな!!」


目にも止まらぬ速さでイースト1に突撃する『高麗公国』の『イシュタル』。


「なんだこの機動」


『20㍉歩型連装砲』で牽制をし急遽距離をとろうと試みるイースト1。しかしその距離は瞬く間に詰められる。


「イースト1!」


「グウうう………」


すぐに防戦を強いられるイースト1。狙いの定まっていない乱射に困惑する。


「なんなんだコイツ、ウッ」


「イースト1!!」


割って入るイースト2。力無く膝をつくイースト1。


「大丈夫かイースト1」


「なんとか……な」


(防ぎ切れなかった弾丸が機体のそこらに当たって………戦闘は不可能だな)


「イースト3。指揮権を貴様に託すイースト2をフォローしてやれ」


「!?イースト1」


「大丈夫だ。だが機体が戦闘に耐えられない。このまま戦域離脱に専念する」


「………了解。」


『ナックルガード』で防ぎ回避に専念するイースト2。


(機動力に振ってる俺の『イシュタル』でも振り切れない、それにこの狙いの見えない銃撃はやっぱり…………)


「イースト3。飽和攻撃を要請する」


「えっ、でもそれでは貴方を巻き込みかねません」


「いいから!頼む」


「…………わかりました。」


(発射確認。着弾まで5,4………)


周りを爆風が包む


「…………大丈夫ですか?イースト2」


「サンキュー大丈夫だ」


「お前達………俺を忘れてないだろうな」


「!?イースト1すみません。」


「問題は無かったがもう少し戦域離脱してからにして欲しかったよ」


「………敵は?」


「マーカーは生きています」


「!?あの爆撃を2度も生き延びるか」


「大丈夫だ」


「イースト2?」


「もともとそのつもりだ。イースト3位置は?」


「距離500正面から来ます。」


「了解した。」


右腕を突き出し手を広げ、左腕を直角にし脇を締め拳を握るイースト2の『イシュタル』。


(俺はお前だ。お前は………俺だ)


視界に『高麗公国』の『イシュタル』を確認し前に進むイースト2。相手が機銃をこちらに向けたのを確認し左腕を前にかざす。弾丸を一身に背負う左腕。


(もってくれ、左腕)


0距離でそのまま突っ込むイースト2。


ガキーン!!!


強い衝撃が機体を通して身体に伝わる。しかし怯むことなく仰け反った身体の力を右拳に込める。


「うおーーーーー」


右拳は………機体の中央を貫いた。


「やりましたイースト2!敵マーカー消滅」


『クリエイト』終了勝者『日本』。


(………左腕が!よくやった相棒)


「………新さん?」


コックピットを降り、敵のコックピットを開ける新。


「これは………やっぱり」


力なく横たわる着座シートの後ろから見覚えのあるノズルが2つ………


(奴らが仕組んだ?『高麗公国』に拠点があるってことか?)


「司令部よりイースト小隊。司令部よりイースト小隊」


焦りの声が入り混じった司令部からの通信が耳に入る。


「こちらイースト2。どうしましたか?」


「機体は我々で回収します。すぐに東エリアへ戻ってください」


「?なにがあったんですか?」


「東エリアの病院でテロ事件発生です!」


「そんな!?」「なんだって!?」


『高麗公国』との『クリエイト』の裏で前代未聞の事件が発生していた。













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