第41話 ひょうきん者
相変わらずの憎たらしい口調とは裏腹にシュッとしたスーツを着こなした清水。
「なんでお前、ここにいるんだよ清水。ここは東エリア。お前のエリアの真反対だぞ?」
「うん?俺の仕事」
「仕事?って言ったってそもそも他のエリアに移動するなんて出来ないはずだろ?」
「勿論。許可を得て他のエリアであるここにいるよ」
(他のエリアを跨ぐ仕事って………そもそも俺達『カウサ』に『クリエイト』以外の仕事なんてあるのか?)
「渡。共闘しよう」
「はぁ?共闘?」
「なんだ?共闘の意味知らないのか?」
「そこじゃない、なんでお前と共闘なんだ?」
「お前なんで呼ばれたかわかってる?」
「知るか。取り敢えず交渉相手に選ばれたって思ってはいるが」
「うん。間違いでは無いね。このテロの実行犯のリーダーが桂木草道ってことは?」
「なんでお前が知ってる!?」
「俺の仕事だから♪………じゃあ当然これがあの件絡みだってことは?」
「あの件って」
「流川学による爆破テロ」
(極秘のはずのその一件までなんでこいつは知ってるんだ!?)
「…………。」
「そう睨むなよ。俺の仕事上いやでも色々と情報が手に入っちまうんだよ」
「…………桂木の狙いはなんだ?」
「なんだと思う?」
「言葉遊びをしてる余裕は無い」
「奴の動機を知らない状態で行っても、被害を拡げるだけだぞ」
「お前はわかるってのか?」
「さぁね、奴の動機がどうであれ僕はやるべきことをやるだけさ」
「……………。」
「その辺りよく考えて行動しないとね」
「お前の目的はなんだ?」
「こっちの目的?」
「仮に共闘するとしてなにも明かさない相手に背中預けられるか」
「確かにそうだね」
急に顔を近づける清水顔を左耳の側に寄せる。
「テロリストの完全制圧」
「!?」
「これが僕の目的さ」
「完全制圧ってお前」
「でも1人じゃ厳しいじゃん?ここの病院の患者人質に取られて外からの応援は期待出来ないし」
「………だからお互いよく知る君が交渉相手に選ばれたって知った時はほっとしたよ。厳しい仕事がまだマシになったって」
「俺はお前の事よく知らない」
「あれ?そう。それは寂しいな」
(自分でそう魅せてるクセによく言う)
「ってことで、よろしく頼むよ渡新。」
「なあ清水」
離れて行く清水を呼び止める新。
「越知部泰彦って知ってるか?」
「………誰だいその人?」
「いや、お前みたいに情報通だったから知ってるかなって」
「う〜ん。知らないね」
「そうか、悪かったな呼び止めて」
「いやいや、じゃあ交渉頼むよ渡新。」
警戒しながら上へ上へと進む新。
ジィー
「感度はどうだい?」
清水から渡されたイヤホンから声が聞こえる。
「良好だ。」
「OKだ。主犯の位置を特定した。そっちに送るよ」
端末のバイブが鳴ると、画面にこの病院の見取り図が表示された。
(このフロアは、まさか)
「了解した。情報に感謝する」
「じゃあ、よろしくね」
目的のフロアに辿り着くまでに、床に転がるテロリストと思われる人々があちらこちらで倒れていた。
(まさか、これを清水1人でテロリストに悟られずに?何者なんだアイツは………そんなことより。)
腹を括ったように大きな深呼吸をする新。
「動くな!!」
目的の部屋に辿り着くと拳銃を手に人質をとる桂木草道とこめかみに拳銃を向けられた真由が新と対峙するようにそこにいた。
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