第12話 欠点
『竹島』での『クリエイト』が開始される。
「なんだ、この歪な地形は」
そこは岩が剣山のようにつらなりまともに立てる場所が限られていた。
「これで戦闘なんて出来るのか?」
「どんな地形でも戦うことは出来るわよ」
「これは前回の演習か役に立ちそうですね」
「確かにイースト5の言う通りこの荒れた地形は演習の森林の演出のように障害だらけだな。なら演出の時同様に………」
「イースト1。ごめんなさい。出来れば私は今回前衛部隊をお願いしたい」
「なっ!勝手なこと」
「イースト3よせ、イースト2根拠は?」
「私の『イシュタル』は近接戦闘向けへの調整が始まっているの」
「確かにな」
イースト2の『イシュタル』の背面に装備する長刀を目視しし思案するイースト1。
「なあイースト5。イシュタルの調整ってどういうこと?」
「『クリエイト』に参加し経験を積むことで腕時計に使用者の情報が蓄積され使用者に最適な動きをするというのはご存知ですか?」
「なんか聞いたなそんなこと」
「噂ではある一定の条件を満たすと『イシュタル』は使用者専用の動きや性能を発揮すると言われているんです。それが恐らくイースト2の言う調整ってことだと思います」
「成る程な………。イースト1意見の打診いいか?」
「どうした?イースト4」
「なら代わりに俺が後方に回る。イースト5のことが心配だし丁度いい」
(あいつ………メッセージ。「気にするな」………了解。)
「いいのか?戦闘状況によっては後方からの貢献は困難かもしれんぞ」
「そんなの足掻いて稼ぐまでよ」
「ふん。いい心意気だイースト4。そういうの好きだぜ、許可しよう。では俺とイースト2と3で前衛をイースト4と5で後衛を担当する。イースト4、5索敵頼んだぞ」
「了解!!!!」
散開するイースト小隊。
「と言われても索敵ってなにすればいいんだ?俺はそんな装備用意してないぞ」
「そうですよね。では僕の護衛役ってことでお願いします。」
「………まぁ、元はそのつもりでこっち側に志願したってのもあるし、しょうがない。折角のチャンスふいにするなよ」
「はい」
前衛では自然の障害をものともしない激しい戦闘が既に繰り広げられていた。
「イースト3いつも通り挟撃で行くぞ」
「了解……ってあんた!」
「イースト2単独での突撃は危険だ」
「私が引き付けるから2人で攻撃を」
弾幕を長刀を使いながら華麗ニ躱すイースト2
(流石は我が国のエースパイロットの1人。これなら)
「イースト3。イースト2が引き付けている間に各個撃破だ」
「ったくいいとこ取りしゃがって、了解だイースト1」
3機の戦法で1つ1つ確実に撃破していくイースト小隊。
(妙だな情報にあった新兵器を持ったと思われる機体が見当たらない。そしてさっきから1機だけ姿を全く見ない。噂の新兵器とやらは攻撃の兵器では無いのか)
「イースト1。視認出来る残りの1機が撤退する。追撃するか?」
「あぁ頼めるか」
「任せろ」
「イースト1。本当にいいの?」
「どういう意味だイースト2」
「嫌な空気なの」
「…………」
「こちらイースト5。残りの1機の位置を把握しました。」
「よくやった。イースト5、今イースト3が追撃している。イースト3に優先してデーターを転送してくれ」
「了解」
「随分、そっちも余裕そうだな」
「見た目わな、だが嫌な予感がする」
「こちらイースト3残りの2機を発見。どうする?仕掛けるか」
「深追いするなすぐにイースト2と共に合流する」
「こちらイースト4。すぐに増援に迎えるように距離を詰めるぞ」
「あぁ頼む」
「こちらイースト3………全員一時撤退しろ」
「イースト3!?なにがあった」
「対策無しに突っ込むのはヤバい」
「どういうことだ?イースト3」
「早く距離をとれ!ウァーーー」
「イースト3!おいイースト3!!」
巨大な爆発が起き、あまりの爆風に一同は身構える
「なんだ!?この爆発は」
「イースト5より報告。イースト3のシグナル消失」
「なんだと!どういうことだ」
「さっきの爆発と共にイースト3のシグナルは消えました。」
(緑川………)
「イースト1。敵が近づいて来てる」
「!?応戦するぞ。!!」
2人はモニターの点灯しながら表示された画面に驚愕する
『ニュートロン·アクセラレータ』異常数値計測危険
「なに!『ニュートロン·アクセラレータ』の異常だと!!」
「こんなこと始めて」
「俺もだ」(あの後方の『イシュタル』が背部に背負うヤツが例の新兵器なのか?)
「こちらイシュタル1。イシュタル4 と5 撤退だ最初の地点まで戻れ」
「どうしたんだ?」
「いいから急げ、合流してから説明する」
状況を見守る司令部に激震が走る。
「『ニュートロン·アクセラレータ』異常ってどういうことだ」
「俺が知るか」
「今まで『ニュートロン·アクセラレータ』が出来てそんなこと一度も無かったのになんで」
「皆さん落ち着きましょう」
指揮官の一声で静まり返る司令部。
「我々が慌てたところで何も変わりません。あの機体の背面の装備を調べてください」
「了解」
「どう思われますか?幕僚長」
「私の見解としては故障というよりもあのあの機体による環境の強制的な変化ですわ」
「情報部から上がってきた新兵器とはあれなのでしょか?」
「それは私もわかりません。大島三佐、速やかに現状の把握とあの兵器の解明を急がせてください」
一方のイースト小隊は合流をはたし情報交換をしていた。
「というのが俺とイースト2が遭遇した状況だ」
「背面にタービンのような武装………」
「どうした?イースト5」
「ここは地下です。背面に装備ってそもそも空を飛ぶ必要の無いこの環境で何故かなと」
「我々の住む世界の空には限りがあるからな、上空からの戦略にも限界がある。それにタービンは回っていたが一度も浮かぶ挙動が無かった。」
「ということは別の目的………」
「しかし、よく振り切れましたね」
「あぁ確かに追撃も緩かった」
「イースト5。どうしたの?」
「………!?もしかして」
「幕僚長。イースト5からコンタクトです。」
「どうしたの?」
「新兵器を搭載した機体の周囲って何か変化がありませんか?特に空気中です」
「…………どうですか?」
「…………これは!その機体が移動した付近のウラン濃度が異常値を叩きだしています」
「ウラン濃度の異常数値………そうか」
「幕僚長?」
「あの装備はウランの粒子を散布する為にあるのね」
「それになんの意味が?」
「『ニュートロン·アクセラレータ』は『核融合』のエネルギー源である『ウラン』と『シャエフ』の中和で成り立つ装置。空気中のウラン粒子を『ニュートロン·アクセラレータ』が取り込んでしまったのだとしたら」
「『ニュートロン·アクセラレータ』内のバランスが崩れ、『連鎖核融合爆発』が起こる」
「そんなことになったら『竹島』どころの被害じゃすみません。」
「だから『イシュタル』が異常を警告して機能が停止するそして………」
「対策を練っているあちらのなぶり殺しか」
「そういうことです。イースト5こちらの見解はこのようになったわ」
「そういうことですか」
「下手にあの機体の側には近付けない」
「遠距離攻撃出来る装備を持っているのはイースト5だが、撃ちもらした1機は『メディオシールド』の強化改装したような装備を持っていた。イースト5の『30㍉狙撃銃』ではダメージを与えられん」
「でもなんであの機体達はその環境化で行動出来るんだ?」
「………もしかして、あの機体は『ニュートロン·アクセラレータ』を外しているのでは」
「そんなこと可能なのか?そもそも『イシュタル』って『ニュートロン·アクセラレータ』無しで活動出来るのか?」
「確か『イシュタル』には予備バッテリーが装備されているはず。ですよね司令部」
「えぇ、万が一『ニュートロン·アクセラレータ』が正常に機能しなかった場合に備えて装備されています。ですがそもそもの動力源を『ニュートロン·アクセラレータ』に依存しているので、予備バッテリーでの最大稼働時間は3分。しかも機体自体の性能も本来の20%しか出せません」
「そこまでして『イシュタル』を動かすのか?」
「どうだかな、しかしだとしたら敵が一向に攻撃をして来ないのにも納得だ」
「敵も下手に動けないってことですね」
「そうだ。………」
「なら、こちらもそれで行きましょう」
イースト4の迷いの無い発言にその場に全員が唖然とした。
「イースト4。さっきの話しを聞いてたのか?」
「勿論。そしてその任は俺がやる」
「何を勝手なことを言っている。」
「イースト1は部隊を纏める上で必要だ。イースト2もこの部隊の中で1番の戦力だ」
「…………」
「そしてイースト5のこの短時間での分析力を無くすのは惜しい」
「待ってください!これはあくまで仮説であって確定の考察では」
「なに、俺も死にに行く訳じゃない。知ってるだろ?イースト5俺って意外と運がいいんだぜ」
「ですけど」
「司令部。どうですか?」
「………。わかりました。貴方の案採用しましょう」
「ありがとうございます。」
「では作戦を詰めよう………」
「では、作戦を始めよう」
動き出すイースト小隊。
「イースト4。これ持って行きなさい」
「これは?」
「今使用してる長刀を使う以前まで使ってた。剣。あんた標準装備以外持ってないでしょ?」
「あぁ、いいのか?」
「限られた時間での活動だから。少しでもリーチの長い武器を持ってた方がいいでしょ?」
「確かにな」
「安心して、どんな形であれちゃんとその剣回収するから」
「へっ、一言余計だ」
長い沈黙を破り、イースト小隊が動きだす。
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