SIDE EPISODE 3:挑発
ショッピングモールで繰り広げられた、意地と誇りと性欲
いがみ合った元同僚同士でも、封印されれば皆仲間。地球の神秘を手にした遊の指揮下に置かれている。平和が一番、これ以上余計な血を流す必要はないのだ。
ピットもセルピアもハウリも、地球のエナジードリンクこと“スグナオルンデスX”ですっかり回復、傷一つない綺麗な体で心機一転。今後は世のため人のため地球のため、粉骨砕身全身全霊頑張ろう……――と、ならないのが怪人である。
「散々遊ちゃんを煽っておいて何もしないとか、もしかしてあなた、口だけ達者の見かけ倒しなのかしら?」
「ち、違うしっ。あーしはどんなプレイでいじめ倒そうか
「ふーん、あっそう。じゃあお顔真っ赤でもじもじしてたのはなんで? 攻守逆転で責められるのには弱かったりして?」
「はぁ!? あーしが弱いとかありえねーし、アレはそう……きっと何かの間違いだよ、うん」
「何の間違いよ?」
「ンなの、聞かれてもわかんないってゆーか、知らねーってゆーか」
「あなたがわからなかったら他の誰もわかりっこないじゃない」
「あーもう、いちいちうっさいなぁ」
現在、ピットはハウリに絶賛詰問中。二人はそれぞれ床に正座と
「まどろっこしいから単刀直入に聞くわね。あなたも遊ちゃんに恋しちゃったんじゃない? って話よ」
「は、はぃいっ!? そ、そそそそんなこと……はぁン!?」
自分達の主人にして『いつか襲いたい男の子堂々の第一位』である黒貴遊についての話である。
ピットはワインをぐびぐびラッパ飲み、ぐいぐいしつこく質問し続ける。
最古参の彼女からすれば新たなライバル登場だ。真意を聞き出し今後の対策に活かしたい気持ちもある。そのせいで、悪酔いで絡む面倒臭い上司の図になっているのだ。因みに、“アモレ”の階級と照らし合わせると二人は対等、どちらも平兵士である。ピットの方が年増でハウリの方がちょっぴり若い程度しか違いはない。
「恋しちゃったのは私達もおんなじ、隠さなくたっていいのに」
「私は違うから」
読書中のセルピアがぴしゃり。お前と一緒にするな、と言いたげに
彼女の場合、そこに愛とか恋とか甘い感情は一切存在しない。単純に遊の肉体を玩具にして、無尽蔵に湧き上がる性欲を盛大に発散したいだけなのだ。一目惚れした馬鹿と同類扱いされたくない自負がある。
「あの子は放っておくとして。……とにかく、遊ちゃん目当てで“アモレ”を裏切るのは恥ずかしいことじゃないのよ?」
「だーかーらー、あーしはそんなのじゃないってば!」
「じゃあ、なんで恋する乙女みたいに慌ててたのかしらね。あわわわわ~って、面白……可愛らしかったわよ?」
「う、うっさいなぁ。ってゆーか、他人の恋バナを詮索とか、ホントマジで年増みたいじゃンかよ」
「それならあなたはお子ちゃまよ。おしゃぶりいる?」
年下相手でも大人げない、それがピットクオリティ。
ハウリとしては反論したいのは山々だが、さして頭が良い訳でもなく
何故、押し倒された時にやり返せなかったのか。
何故、動揺した挙げ句に変身が解除されてしまったのか。
何故、胸の奥がキュンキュン締め付けられるように痛むのか。
生まれて初めての感覚に戸惑い迷って混乱の極み。この気持ちをどう処理すれば良いのか、水先案内人が行方不明になっていた。
「あ、あーしはこれでも、“アモレ”に入る前は族長だったんだからな! 舎弟もとい舎妹だっていっぱいいたし、そんなあーしを子供扱いとかマジありえないんですけど!?」
「うんうん、わかるわかる。初めて恋した時って素直になれないのよね。ママにも経験あるわぁ」
「頭を
「……うるさい」
血で血を洗う激闘を繰り広げたとしても、封印の異空間では恨みっこなしの無礼講。それは先述の通りである。
だが、それはそれとして
この後三怪人入り乱れのステゴロ殴り合いに発展、無駄に回復薬が消費されるハメになるのは言うまでもない。地球も困惑呆れ顔である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます