EPISODE 10:召喚
一夜明けて。
遊とグランは赤黒く染まる土地の一角、とある空き地にやってきた。数本の土管が放置されたままの、ありきたりで既視感しかない区画。きっとどこにでもあるだろう、かつて子供達のたまり場だった憩いの場所だ。
と言っても、ここで遊ぶつもりは
では、どうして空き地なんかに来たのか。それは、
「じゃあ早速、隷属の鍵の使い方講座を始めていくランよ」
「お願いしまーす」
という目的があるからだ。
昨日早速一人目の怪人を封印したのだが、鍵の詳細な使用方法についてはさっぱり知らない。いつまた他の怪人に襲われるかわからないので、先に訓練しておくに越したことはないだろう。善は急げ、備えあれば憂いなし。初心者向け講座の受講が怪人マスターへの第一歩だ。
「グランちゃんのー、ワクワク隷属の鍵レッスンコーナー! ドンドンパフパフ~。
はい、という訳で始まりました、冒険前のチュートリアル。まずは改めて隷属の鍵がどんな物か説明していきますラン。
この鍵は地球の自浄作用によって生み出された神秘のアイテム。怪人達が勝手にぶっ刺した槍のせいで地球は汚染されたけど、代わりにこちらも相手の情報を読み取って対抗策として作ったラン。
鍵は昔ながらのウォード錠タイプで金色、鳥籠型のオシャレなキーホルダー付き。それがお得にも全部で四本、腰からぶら下げられるように専用ホルダーもセットでご提供。要するに、あと三人まで封印出来て、腰からブラブラ怪人を
封印のやり方は昨日も言ったけど、復習は大事だから改めて。手順は至って単純明快、怪人の紋章に向けて鍵先を向けるとあら不思議、ピッタリサイズの鍵穴が出現するから、ブスリと差し込みガチャッと施錠。すると怪人は封印専用の異空間に転送、自力では絶対抜け出さない牢獄行き。と、こんな具合で封印完了ラン。
異空間には食料や治療用の薬、生活必需品に最低限の娯楽は用意してあるから安心安全親切設計。待遇に不満を持って反抗心メラメラ一斉
だけど、ここまで設備がしっかり整っていても弱点が一つ。どんなに長期間封印したとしても、怪人の心までは縛れない点には要注意。鍵一本で洗脳して都合良く使役出来ると思ったら大間違い、相手も生き物である以上目に見えない心にだけは気を付けるラン。
……さて、ここまでが前置き。ここから先がとっても大事。耳の穴かっぽじってよく聞くランよ。
重要なのは、封印した怪人の召喚方法。今後戦いは激しくなるのは確実、生き残るには絶対必須な項目ラン。
まずは何もない場所、目の前の宙に向けて隷属の鍵を掲げる。そうしたら怪人の召喚を頭の中で強く念じ、同時に鍵を開けるよう捻る。すると解錠の手応えが伝わるはず。それこそが、一時的に怪人の封印を解いた合図で……そうそう、手を前に突き出して、大体そんなかんじ。中々筋が良いんじゃ――って、何勝手に呼び出してるランか!?」
「だって説明が長いんだもん」
テレビショッピングの司会者の如くだらだら続く講座に飽きてしまった。使い方を聞いた遊は、早速赤い紋章が光る鍵を用いて封印解除を実践してみる。
虚空で鍵を回すとガチャリと解錠音と手応えがあり、鍵穴を中心に
「あら、遊ちゃん。呼んでくれて嬉しいわ」
現れたのは一人の女性、蛇の力を宿した怪人のピットだ。昨日と変わらずエプロン姿なのだが、それ以上に驚きなのは彼女の肉体。
「どうせ召喚しちゃったんだし、色々聞き出してみるのがいいランよ」
「色々って?」
「怪人達の目的とか、どんな生態をしているかとか。自由に聞けばいいラン」
「どうやって聞くの?」
「鍵を持って命じれば何でも答えてくれるはず。怪人に拒否権はないランからな」
どういう仕組みなのか皆目見当がつかないが、鍵を持っている限りピットは持ち主の言いなりのようだ。名前の通り、怪人だろうと侵略者だろうと強制的に
「えっと、じゃあ、ピットさん達ってどこから来たの?」
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