EPISODE 35:拠点
「うわぁ……凄いおっきい」
近くに来て見ると、一段とその巨大さを感じる。
青空を背景にそそり立つのは、赤黒く染まる魔の塔――“
遊達一行は、ついに決戦の地へと踏み入れる。
約一ヶ月ほど前までは地区一番の繁華街だった。だが、今では見る影もない
「ふひひっ。パーティを組んで街を歩いていると、まるでロールプレイングゲームをやっているような気分になりますな、遊氏」
「う、うん。そうだね、多分」
しかし、ボディガード役のキュームが逐一
「ゲームといえば、遊氏は普段は何系をプレイするっスか? マルチプレイで絵の具をシューティングしたり動物モフモフなオープンワールドで自給自足したり、まさか恋愛シミュレーションでキャッキャウフフの純愛ライフとか? 実は自分、ギャルゲーでオススメのタイトルが山のようにあってですな」
「僕はその、そういうのは……」
「自分は腐女子ですが守備範囲は広い方で。意外に思われます? エッチな女の子がニャンニャンなゲームだってやるっスからね。というか、この戦いが終わったらプレイしたいゲームリストにもたっぷり入ってますんで。あ、今のって、かなり死亡フラグ臭する台詞っスよね。戦場から帰ったら
「さっきからゴチャゴチャうるせぇランな」
身を潜めながら塔に接近中だというのにキュームはお構いなし。長々ダラダラ聞いてもいない講釈を垂れ続けている。怪人をよく思っていないグランは神経がプッツン寸前なのだろう。可憐な顔が
「あの、キュームさん。もう少し静かにしてほしいんですけど」
「うぇっ、まさかの苦言っ。もしかして自分のこと嫌いになったんスか!? そんな、遊氏にまで見捨てられたら生きていけない。もう死ぬしか……」
「ああもうっ。いい加減にするラン!」
すぱこーん。グランの一撃が
光輝くハリセンが、キュームの頭を鋭くはたく。タンコブが出来ている。かなり痛そうだ。それもそのはずこのハリセン、バリアーを折り畳んで作った物。そこそこの威力にも納得だ。実に器用な妖精だこと。
「何するっスか、この
「だ~れが蚊とんぼラン、この陰キャ
「は? 妖精には関係ないと思うんスが? 愛する遊氏と楽しく雑談、趣味のお話することの何が悪い!?」
「全部に決まってるラン! 異星の未成年相手に馴れ馴れしくネトネトギトギト絡むのが許されるとでも!? 大体、普段は陰気な空気の権化なくせに、好きな話には急に
「あーっ、言ったっスね、絶対言っちゃいけないライン踏み越えたっスね! 今、全宇宙の陰キャ腐女子を敵に回したっスからね!」
「スッススッスうるさい、後輩キャラのつもりランか!? いくら新参者でも、怪人には容赦しないランからな!」
売り言葉に買い言葉、程度の低い口論はヒートアップしていく。
日頃の
どうしたものか、と遊は手をこまねいていたのだが。
「あっ」
気が付けば、シャドー眼前、即ピンチ。
黒貴遊、辞世の句。
「遊、バトル開始ラン!」
「ここは自分に任せるのですぞ!」
否、まだ辞世の句を詠む段階ではない。
いがみ合いの
「お前がずっとしゃべっていたせいで、敵が集まったランよ」
「グラン氏だって大声出してたけど、棚上げしないでほしいですなぁ?」
「あ? なんだコラやんのかラン」
前言撤回、二人の険悪さは変わっていない。
一行の周囲にぞろぞろと、シャドー軍団が集まってくる。騒ぎを聞きつけやってきたのだ。そして案の定、本能的に男児を襲おうと沸き立っている。目がないのにジロジロ
「きひひっ。自分のアピールチャンスに
「うーん、否めないマッチポンプ感ラン」
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