SIDE EPISODE 2:詰問
隷属の鍵、その鳥籠型キーホルダーから通じる先に拡がる異空間。そこには封印されし怪人達がくつろげる部屋が存在する。
現在の住人は二名。一足先に封印された者の部屋には赤い
残る無地の扉は二枚。果たしてどんな怪人が入居するのか、それはまだ誰も知らない。
「それで、どうして封印される気になったのかしら?」
怪人達の共同空間――中央に位置するラウンジにて。
ピットは険しい面持ちでずいずいずい、新たな入居者ことセルピアに詰め寄っていた。遊の前では絶対見せない顔である。その手には
ピットはいつでも殴りかかれるように現在絶賛スタンバイ中。ニトログリセリンもびっくりの一触即発状態だ。
「さっきも言った通りだから」
一方のセルピアは
因みに回復薬の名前は“スグナオルンデスX”、解毒剤は“スグナオルンデス
「嘘ね。私の毒が怖いだけじゃ理由にならない。あなたなら力尽くで解毒剤を奪うくらい出来たはずでしょ。あっさり封印を望むなんて不自然極まりないのよ」
先程の戦い、その幕引きがどうしても引っ掛かってしまう。
セルピアは優秀な頭脳を受け継ぐ名家の生まれ。母親は怪人能力開発の分野でトップクラスの科学者で、その後継者として期待される将来有望な娘。しかも親の七光りに甘んじることなく努力し続けており、
それなのに母なる星と“アモレ”を裏切るなんてあり得ない。頭の悪い万年平兵士が一発逆転で反旗を
「確かに、不自然かもね」
詰問されるのが嫌だったようで、セルピアは面倒臭そうに溜息を一つ吐き出す。
「私がエリートだから、裏切るなんておかしいと?」
「その通りよ」
「思慮が浅い」
「いちいち
「エリートだって悩みがある、そういうこと」
セルピアは
「英才教育だけの毎日。遊びの時間もない。結構キツイよ」
「だからって、今までの努力全部かなぐり捨ててまでこちら側につくなんて、あなたも相当思慮が浅いような気もするけど?」
「それに、アモレ側よりこっちの方が男児にありつける」
「あら、それなら私と同じじゃない」
「一緒にしないで」
「でも、昇進すれば男の子も食べ放題でしょ?」
「待ちきれない」
「せっかちねぇ」
組織に殉じていつかありつけるご褒美を待つよりも、自分の意志でつかみ取る道を選択した。出来の悪いピットでもそれなりに納得がいく理由だった。
出来損ないとエリート。理解し合えないと思いきや、行動の根底にある欲望は同じらしい。直情的に選択したか、合理的に選択したか。違いはあれど両者共に怪人、結局性欲優先のケダモノ。封印されて仲間になろうが、本能的に男児を性的に食べたい変態種族なのは純然たる事実。変えようのない現実である。
互いの目的を知り、これにていがみ合いも万事解決、
「でも、遊ちゃんは私のものですからね」
するはずもなく。
「先に見つけたんだから私が美味しく頂く。至極当然の流れよね?」
「違う、アレは私の玩具」
「私がねっとねとに愛でる予定なの。勝手に決めないでほしいわ」
「それはこっちの
テーブルを挟んでバチバチと、一人の男の子を巡って争いの火花が散っている。
神秘の力で封印しても、その心までは縛れない。貞操の危機をもたらす魔物は、水面下で常にその時を待っているのだ。
一升瓶の割れる音が、キャットファイトのゴング代わりとなった。
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