EPISODE 5:本性
「ぼ、僕をどうするつもりだったの!?」
「決まっているじゃない。骨の
母性をたっぷり含んだ言葉は変わらずだが、それは愛情ではなく性欲由来の歪な発露。
「私達はね、可愛い男の子が大好きなの。見ているだけじゃ我慢出来ないくらい、愛して愛して愛し尽くしたいほどに。だからね、遊ちゃんが欲しいの。身も心も、全部私の物にしたいの。ね、いいでしょ妖精さん?」
暗黒が滲み出る微笑みを絶やさずに、女性はグランをじっとり見据えている。
自身の欲望を叶えるためならどんな犠牲も
「お断りラン。っていうかさっさと出てけ、この変態侵略者!」
「あら、そう。じゃあ実力行使しないとね」
抱えていた遊をそっと床に降ろすと、女性の顔に仮面のような物体がオーバーラップする。と同時に胸の紋章が真紅に発光、全身より未知の力が
「まずい、こいつ変身する気ラン!」
グランの警告を聞くや否や、遊は飛び込み前転の要領で逃げ出す。直後、衝撃波が放たれて、女性の姿は全く別のものに変わっていた。
長かった髪の毛は
まさに怪人と呼ぶべき異形の姿。仮面を被る不気味な蛇女がそこにいた。
「私は四○二九エリア担当兵士、スネークメイデンのピット。遊ちゃんは力尽くで手に入れるんだからっ!」
蛇女――ピットは欲望の
「うひゃあっ!?」
蛇の一匹が右腕に巻き付く。ひんやりざらついた体表が素肌に触れて、悪寒が背筋を這い上がっていった。
「うわっ、このっ、殺す気ラン!?」
一方のグランはというと、何匹もの蛇に襲われ噛まれそうになっている。可愛い男の子には優しく、邪魔な妖精に対しては
「たす、助けてグラン!」
「ああもう、分かっているランよ!」
反撃の
絡みつく蛇が離れた隙に、遊はグランの元へと
「うぅ、気持ち悪かったよぉ」
四つん這いの半泣きで顔をくしゃりと歪めている。蛇が纏わり付く独特の感触のせいで腰が抜けかけ状態。ぞわぞわした嫌な肌触りが未だに残っている。これならおっぱいを吸っていた方が良かったと意味不明な後悔をしてしまう。
「まったく、そんな調子で本当に怪人と戦えるランか?」
「が、頑張るつもりだもん」
「じゃあ早くあの蛇女をサクッと封印してくるラン」
「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理」
ぶんぶんぶん、全力で首を横に振る。
やる気はあるが無理なものは無理だ。鍵を差し込む位置は紋章、つまり胸の中心部分。赤い光で目立っており、間違いようがない。だが、封印のためには至近距離まで近づく必要がある。無策で突っ込めば確実に蛇の
「こんなこけおどし、私には通用しないわよ!」
男児を
「“
怪人は各々属性を有している。ピットの場合は炎、仮面の色が示す通りの業火を放つことが出来るのだ。
頭部の蛇が
「また集中攻撃ラン!?」
当然ながら、その殆どがグランに向けて発射されている。降り注ぐ火の雨を前に、俊敏でキレのある動きでシュババと避けるも
「こうなったら、コレでどうラン!」
両手を
「バリアが出せるなら最初から使えばいいじゃん」
「切り札をホイホイ使いたくないラン」
「えー、先に出しておけば燃えずに済んだのに」
「燃え……――え?」
だが、出し惜しみしたせいで火の粉を被り、薄い羽に引火していた。グラン絶賛炎上中である。
「ああああああああああああああああああああああああっ!」
絶叫しながら小さな火炎車が床をローリング。暴れまくってどうにか鎮火、黒コゲになりかけたグランは見事なパンチパーマ。羽が半分焼けたせいでバランス悪そうに浮いている。
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