EPISODE 12:暴走
――ガンガン、スガンッ!
人間が食らえば即死、打ち所が良くても重傷は免れないだろう。隷属の鍵で封印して従者にしているとはいえ、真っ向勝負は絶対回避の危険極まりない戦闘能力である。昨日の一件がほぼ無傷で済んだのは、もはや奇跡としか言いようがない。
「うわぁ、すっごくかっこいい……!」
だが、それはそれとして、遊は思ったままに素直な感想を
炎を纏い舞踊るように相手を粉砕するバトルスタイル。一般男児の遊目線では憧れれのヒーローに匹敵する勇姿、
「うふふ。遊ちゃんに褒められるなんて、ママとーっても嬉しいわ」
「でも、おだてたら何でも出てきちゃうわよ?」
そこは性欲最優先の怪人、見事に別方向で捉えてしまう。
変身を解除して人間態に戻ると、汗ばんだ肉体を
ただの戦闘訓練をご褒美タイム、すなわちエッチな流れに持ち込もうとしているらしい。封印された身分なのに中々
「ち、近いです、ピットさん」
「駄目なの?」
「べ、別に駄目じゃないですけど、その、胸が思いっきり当たっているし」
「だってわざとだもん。ほら遊ちゃん、ママのおっぱい好きにしてもいいのよ?」
「そんなっ、僕もう赤ちゃんじゃないから……」
エプロンを脱ぎ捨てシャツもはだけて
相手は侵略者の蛇怪人、でも見た目は普通の人間で妙齢の女性。
正直に言えば見たいし触りたい、ついでに揉みたいし吸い付きたい。でも見ちゃいけないし触っちゃいけないし、揉んだり吸ったりなんて言語道断。
理性と欲望がない交ぜの葛藤から、遊は思わず両手で目を覆い隠す。自身を無条件で受け入れてくれる誘惑から目を逸らそうと、焼け石に水だとしても視界から巨乳を追い出そうとそっぽを向く。
――カシャンッ。
心地良い金属音がして、隷属の鍵が地面で跳ねた。
「……えっ」
一迅の風が吹くと、遊の両腕はガシリと掴まれていた。凄い力だ、振り解こうとしてもびくともしない。
嫌な予感がしてゆっくりと顔を上げる。恐る恐る、涙目で小刻みに震えながら。
「ふふふ……ありがとう、遊ちゃん」
そこには、肩で息して舌舐めずりするピットの顔。頬と耳は湯上がりのように紅潮し、細い目の奥では
どさり。
気付けば押し倒されて馬乗りだ。幼い体にむっちりボディの成人女性もとい星人女性が騎乗位体勢。圧倒的力関係、
「ちょっ、鍵を手放したら駄目ラン! コントロールを外れて暴走するに決まっているラン!」
焦って両目をグルグル回しながらグランが言う。
「それ先に言ってよ!?」
「説明を聞かない奴が言うなラン! とにかく、もう一度鍵を握らないと――ぎゃぶふぉっ!?」
鍵を拾おうとしたグランだったが、ピットの一撃で吹っ飛ばされてしまう。
ぼてっ、ぼてっ、ぼてん。
綺麗に胴体着陸の三段跳びだ。芸術点の高い吹っ飛び方だが、より驚くべきはグランを殴った道具である。
ピットの手に握られているのはガラガラ――赤ちゃんをあやすのに用いる音の鳴る玩具だ。一体どこから取り出したのか、それをフルスイングして邪魔者を排除したのである。
「
「や、やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだっ!」
「大丈夫、本当に食べちゃう訳じゃないからね、ほぉら安心して?」
「安心出来る要素ゼロだけど!?」
「ずっとお風呂に入っていないのね。あぁ、濃厚な男の子臭がたまらない……んん、濡れちゃう」
「何が!?」
上から抑えつけられて身動きが取れない中、ピットの鼻先が遠慮なく密着してくる。すんすん、と鼻息を立てて体臭を堪能されてしまい、恐怖と恥ずかしさが混合した濁流が押し寄せパニック寸前。呼吸も段々浅くなっていく。
「きめ細かい白い肌、細い首筋がぴくぴく跳ねてて可愛いんだから❤」
ぺろり。
ピットの細長い舌が
ちゅる、じゅるるるっ。
「ひぃっ!?」
「んふっ、ほほはひもひいいほへ?(ふふっ、ここが気持ちいいのね?)」
「はうっ……そこ、中は駄目……っ」
耳の周りを舐め回されたかと思うと、今度は耳の奥へと舌先が侵入してくる。唾液の粘つく音と吹き込む吐息のウィスパーボイスが響く度、不本意ながら体をビクつかせてしまう。背筋がゾワゾワ思考がトロトロ。これまでの短い人生、一度も味わったことのない不思議な感覚だ。このまま身を任せていたら、どこか知らぬところまで堕ちていってしまいそうになる。元に戻れないほど
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