EPISODE 38:探索
――ドガァァァァアアアアアアンッ!
特大火球は組み体操な巨人に激突して大爆発。灼熱の業火が外装を担うシャドーを瞬時に焼き尽くし、逃げる暇すら与えず中心部のリーダー格まで一気に延焼させる。
その場に残るのは残骸のみ。全ては灰へと還元されるのだった。
「あっづ!? 熱い、これ燃えてるランよオイ!?」
何やら飛び火して燃え盛る妖精がいた気もするが、恐らく大丈夫なので放置する。
これにて、見張り役も兼ねた警備兵は全員倒したことになる。とはいえ、またいつ新たな敵が湧いてくるとも知れない。大地が赤黒い限り、シャドーは無尽蔵に生えてくるのだ。慎重
「
「なればよかったのに」
「しばくぞラン」
※
「中は結構広いんだね」
“
「最上階に私達の元上司……エリア統括を任された幹部がいるわ」
「じゃあ、そこにえる姉さんも」
「恐らくね」
これより先は未知の領域。圧倒的アウェー、敵のホームだ。元“アモレ”党員に道案内をしてもらうほかない。
ピットを先頭に、遊と黒コゲパンチパーマのグランが後ろをついていく。
四方八方どこを見渡しても赤黒い景色ばかり。廊下を歩いているだけで頭痛がしてくる。
塔内に人の気配はない。他の怪人は担当エリアに散らばっているので不在、というのがピットの見立てだが、何故か警備員のシャドーもおらず不気味なほどの静けさだ。先程の戦闘で全員出払ってしまったのだろうか。
「ねぇ、他の三人も呼び出してあげられないかしら?」
「何を急に。出来る訳ないに決まってるラン」
「だって、二人と一匹だけだと不安じゃない。幹部怪人は凄く強いんだもの。ねぇ、遊ちゃん?」
「それは……確かに」
「言いくるめられるなランよオイ」
「まぁまぁ、地球の妖精さんはとってもケチなのね」
「やかましいラン」
もっとも、静寂に反して一行は
敵の本拠地、最終決戦を前にしてもいがみ合いっぱなし。肝が据わっているのか、それとも鈍感なだけなのか。緊張感がないのも頼もしさの表れだと思いたい。
十字路で右に曲がると開けた場所に出る。
広大なスペースに、整然と並ぶテーブルと椅子。怪人達の食堂だろう。
「キッチンは向こうで、当番の子がまかない料理を作っていたわ。地球に来てからは誰も使っていないけどね」
棚には食器、冷蔵庫には食料。どちらも何の変哲もない。特に食材は地球の物と瓜二つ。目新しさが全くなく、それが逆に驚きだった。
怪人態になったり異常なショタコンだったり、妙なところはあるも、基本的に人間と大差ないのだろう。不思議と親近感が湧いてくる。
続いてやってきたのは浴場。豪勢にレリーフ加工が施されたタイルがびっしり。古代ギリシャを
「よかったら遊ちゃんも入っていかない?」
「いきなり誘ってンじゃねーラン」
すぱこーん。グランのハリセンが閃いた。
思い返してみると、ずっと風呂に入っていない。いつからご
いや、駄目だ。ここは敵地、しかも女風呂。いくら小学生とはいえ、入浴はいけない。えるを取り戻してから思う存分入ればいいはずだ。
浴場を後にすると、今度は書棚がずらりと並ぶ一角にやってきた。
「ここは図書館ね。私達兵士向けの娯楽コーナーよ」
「ふーん。変態怪人集団にしては高尚な趣味をしているランな」
「これって、全部惑星メイデンの本なの?」
「
「そんな暇ないラン」
「一冊くらいならいいんじゃない?」
と、ピットが取り出す一冊は、ザ・エロ本。線の細い少年を襲う女怪人、というわいせつ物陳列罪な絵が表紙を彩っている。おねショタ専門の漫画雑誌らしい。『コミック
「遊は見ちゃ駄目ラン! っていうかお前ら、本当にショタコンまみれの社会不適合者ばかりランな!」
「ここの本は全部そっち方面だけど」
「度し難いラン」
ここにいては目に毒と考えたのだろう。グランは遊の手を引き、更に奥へと進むのだが、
「あ、そっちはお楽しみコーナーだからやめた方がいいわよ?」
「何がお楽しみラン、いい加減に――うわぁぁぁおぅっ!?」
飛び込んでくるのはいかがわしい道具達。エロ本なんて目じゃない、変態度三割増しな大人の玩具が所狭しと並んでいる。目に毒を通り越して放射性廃棄物。小学生にはまだ早い。不幸中の幸いにも、妖精のボディフル活用で視界が塞がれたのでセーフ。遊は殆ど見ずに済んでいた。
「やっぱり、怪人らしく一から十まで酷い場所ラン」
「まぁまぁ。僕は気にしていないから」
「遊ちゃんったら、なんて器の大きさなの! ママ、もっと好きになっちゃう!」
悪趣味極まる部屋を通り過ぎてしばらくすると、眼前に
ここが塔の中心部なのだろう。開けた空間を貫く階段は、渦巻きながら遙か上の階層へと伸びている。この先に、登りきった先に倒すべき幹部が、そして囚われ姫のえるが待っているのだ。
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