38.一日を振り返る私
“ホワット ユー シー イズ ホワット ユア ゴナ ゲット”を聴きながらジャックがシーバスリーガルを私のグラスに並並と注ぎ自分のグラスにも半分くらいまで注いだ。
曲が終わると次の曲が流れて来た。
「ロゼッタ ジョンソンの“マイン ワズ リアル”ね。プロデュースは、あのサム ディーズ。彼の“マイ ワールド”なんてグッときちゃうわよね」
「キャシー、やっぱ、あんた解ってんな」
ジャックがシーバスリーガルを啜りながら染み染みと言う。
私もバーボングラスに手を伸ばしちびちび啜った。
「フワァーーー」
私はグラスをデスクに置いて組んだ手のひらを天に向けて背伸びした。
急に睡魔が襲って来た。
壁の鳩時計は、もうすぐ3時になろうとしていた。
通りで眠たい筈だわ。
フィオナ邸での深酒に始まり寝下呂で目を覚ますという朝の始まり。
今頃、愛車ライフはレッカーでスクラップ工場に運ばれ天に召されているだろう。
フィオナとジェイクの傍若無人な振る舞いに逆上し一時の怒りに身を任せ愛車は廃車と化した。
私はライフに憐憫の情を寄せた。
もうちょっと大事に乗ってやれば寿命は延びたかも知れない。
いや、待て、奴はアクセルをベタ踏みしても30マイル(48km)しか出なかったじゃないか。
そう思うと気が楽になった。
それから連行されてパーキンスにフェラ奉仕。
久久の他人棒は美味しかった。
自己の保身に走る腐れた政治家どもみたいに成り下がったのには気分を害するが背に腹は代えられない。
そう考えると、あのフェラは至極当然の成り行きでありパーキンスを自陣に引き入れられたのは劉備が諸葛亮 孔明を軍師に迎えたのと同等、いや、それ以上の効力を発揮するのだ。
私は裁判で飲酒運転と器物損壊の罪状については渋渋認めなければならないだろう。
だがパーキンスの改竄によって市の迷惑防止条例違反は免れるだろう。
この罪からは無罪放免となり、脱糞女、うんこ女、極太特大クソ女なんていう異名で世間から囃される事は無いのだ。
そして、私の後に連行されてきた兄ちゃん。
パーキンスに銃口を突き付けられてイラマチオさせられてたんですけど、WWW…
超めっちゃウケるんですけど、WWW…
私も調子に乗って兄ちゃんにバナナをイラマチオさせてしまった。
来々軒の親父のかつ丼美味しかったなぁ~。
パーキンスとの息の合った軽快なフットワーク。
まるで『フットルース』でご機嫌なステップを刻んでるケヴィン ベーコンみたいだったな~。
今頃親父は黒人のネーチャンを2人呼んで3Pでも楽しんでいるだろう。
そして、パシリに行った兄ちゃん。
芳香剤掻っ払って来いって言ったのに【青雲】掻っ払って来やがった。
まあ、パーキンスに殺られて当然だな。
あのパーキンスをちょくったんだからしょうがないだろう。
今頃は湿地の下で微生物どもに分解されている事だろう。
まあ、兄ちゃん、成仏してくれや。
おててのしわとしわを合わせてしあわせ、南無ー。
兄ちゃんのお陰で死体遺棄幇助という罪まで私の背中に乗っかってしまった。
飲酒運転と器物損壊くらいじゃブタ箱送りは免れるが、此奴はちと厄介だ。
余程腕の立つ弁護人に依頼しなければなるまい。
まあ、これはなるようになるだろう。
私は困ったときのおまじない「ケセラセラ」と心で唱える。
まぁ~、バレなきゃいいんですけど…WWW、ウキャキャキャキャ。
そして、初めての保安官代理という体験。
でまかせとは次から次に出る物だと己の脳の回転に舌を巻く。
パーキンスの父上が健在かどうかは不明だが、精力絶倫の彼の父上の事だから、きっと今も健在でインターネットポルノをおかずにポコチンをシコシコしている事だろう。
空気嚥下症はほんとの話だが…
今頃、ジョアンの旦那はポコチンを噛み千切られブタのようにヒーヒー悲鳴を上げている事だろう。
いい気味だ。
如何なる理由があるにしろ女に手を上げる男は痛い目に遭わないと解らないのだ、ヒッヒッヒッヒッヒ。
私は素晴らしい助言をジョアンに進言したと己を誉めそやす。
そして、FBIの連中がやって来た。
人は甘やかされて育てられると、こうなるんだという典型的模範例、甘えん坊で甘ったれの甘ちゃん中の甘党の利かん坊なジェフリー マードック捜査官とその一味。
甘えん坊で甘ったれの甘ちゃん中の甘党の利かん坊なマードックと、その性処理係トロイは今頃モーテル【ペイバック】でお楽しみ中だろう。
【ペイバック】でトロイの好きな体位、立ちバックでハメ狂っているのは確実だ。
空襲後の焼け野原のようにハゲ散らかっている男、ジェフリー マードック。
そう、ハゲには絶倫が多い。
午前9時まで部下からの一報は入らない。
思う存分トロイとの6回戦、7開戦に突入するがいいい。
マードックはペーペーで下っ端の4回戦ボーイは疾っくの昔に卒業してるだろうから…
ああー、なんて風紀紊乱な私。
でも、これでいいのだ。
ジャックにパーキンス、来々軒の親父、ジョアン、それに、マードックにトロイ。
みんな風紀紊乱だ。
私は安息の地を求めて流浪の旅を続けていたが、やっと性地エルサレムに辿り付いたのだ。
私は保守的な社会から解放された野生馬のように活き活きとしているのだ。
フライング バリット ブラザーズの“ワイルド ホーセズ”が脳内でリフレインする。
嗚呼、グラム パーソンズのヴォーカル、めっちゃ染みるんですけどー!!!
私はグラスのシーバスリーガルを一気に飲み干し、また大きな欠伸をした。
「おい、キャシー、あんた、そろそろ眠くなってきたんじゃねえのか。今日は、、あんた散散な一日だったもんな」
私はにこりと笑って返す。
「まー、そう捨てた物じゃなかったわよ。意外と楽しかったし満更でもなかったわ」
「朝になったら弁護人に連絡するといい。ちょっと拘置室のベッドで仮眠しろよ。檻は閉めねえからよ」
そう言ってジャックが拘置室のベッドを顎でしゃくって示した。
「あれっ?おっかしーなー、ブランケットが一枚無くなってる。今日の朝まではあったと思うんだけどなー」
私は機転を利かせた。
「ジャック、あなたが仮眠で帰っていた時にパーキンスがクリーニング屋の親父に取りに来てもらってクリーニングに出してたわよ。何でも2日前くらいに無銭飲食したホームレスのじいさんが寝てて失禁したとか言ってたわ」
「ふーん、そっか。そんな事あったんだな。まあ、あんたは奇麗なベッドで寝ろよ。俺は捜査の書類纏めなきゃなんねーのがあっからよ」
「そう、じゃ有り難いお言葉に甘えて、ちょっと眠らせてもらうわ」
私は拘置室のベッドに横たわりブランケットを顎が隠れるくらいまで掛けた。
クーラーの送風音とジャックがペンを走らせる音だけが保安官事務所の中で聞こえる。
私は甘えた声で言った。
「ジャック、子守歌歌って」
ジャックが唇の両の口角を指で摩りながら聞いた。
「んー、もう、しっかたねえなー。何が聴きたい、キャシー」
「サム クックの“ア チェンジ イズ ゴナ カム”オーティスのカヴァーヴァージョンでお願い」
「チッ、しっかたねえなー。それ聴いたら寝ろよ、キャシー」
ジャックが嗄れた声で“ア チェンジ イズ ゴナ カム”を口遊んでくれた。
私はジャックの温かみのある歌声を聴きながら何時しか深い眠りに落ちて行った…
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