23.ハイド氏なパーキンス

マホガニーのデスクに足を投げ出しているパーキンスはドライデンが兄ちゃんをしょっぴいてきたのをステッドソン帽のつばの影から刺すような眼光で見ていた。


「うっせーよ、ジジイ」


ドライデンに悪態をつく兄ちゃん。


「うっせーのはおめえだよ、このクソガキ」


ドライデンが掴んでいる腰紐を放し兄ちゃんの背後からケツに一発かました。


ボテッ。


手錠を後ろで嵌められている兄ちゃんは前のめりに突っ伏した。


「て、てめえ、このクソジジイ。弁護士に言ってやるからな。暴力を振るわれたって」


「クソガキ、てめえの金で弁護士を雇えた暁に言ってみろ。どうせ、てめえらニガーは金がねえから公選弁護人を付けてもらえるのが関の山だ」


パーキンスはデスクのマールボロを一本抜き取りジッポで火を点けながらその始終を見守っていた。


そして、小気味よい音を鳴らして蓋を閉めるとドライデンに言い放った。


「ドライデン、まだ其奴はガキだ。それくらいにしておいてやれ。ドライデン、お前ももうちょっと大人になれ。ニガーは不味いぞ。アフリカンアメリカンと呼んでやれ。最近は警官の黒人への過剰暴力が問題になっとるからな。大人気ないぞ。行動は慎まんとな」


「は、はい、ボス」


どうやらドライデンとパーキンスの上下関係は徹底されているようだ。


それがパーキンスの高価なデスク一式とドライデンの安物のデスク一式に表れている。


言葉遣いも私には陽気な田舎のあんちゃんといった体だがパーキンスにはしゃっちこばって改まった感じだ。


パーキンスはドライデンに対しては厳格で威厳を保っている。


「済みません。俺もソウルやブルーズが好きなんで黒人には敬意を持っていんですが、このクソガキが生意気なもんでついニガーって出てしまったんです」


ドライデンが行き過ぎた行動を窘められ反省した面持ちで言った。


「まあ、解ればいい。ドライデン、其奴を取調室に入れて家に一度帰って来い。お前、今日は夜勤だろ。ひとっ風呂浴びてから戻って来い。車はどうなった?」


「はい、やはりクーラーガスが切れ掛かっていたみたいで補充してもらって来ました。今は車中は北極並みに冷えています」


「そうか、そりゃ良かった。じゃあ家に帰ってさっぱりして戻って来い」


「了解です、ボス。よし、クソガキ、取調室に入れ」


ドライデンが俯せに倒れている兄ちゃんの首根っこを掴んで起き上がらせると取調室にそのまま連れて行く。


私は取調室のドアフレームに寄り掛かって、そのやり取りを眺めていた。


ドライデンが兄ちゃんの首根っこを掴んだまま近付いて来たので私は通れるようにちょっと横に避けた。


私の横を通過する時ドライデンが目配せした。


私はウインクを返した。


「ほら、座れ」


ドライデンが顎でパイプ椅子をしゃくってみせる。


「手錠が後ろで掛けられてたら座れねえだろ」


「あっ、そっか。じゃ外してやっから後ろ向け」


ドライデンが合点がいったように素直に応じる。


兄ちゃんが後ろを向き手錠を外してもらうとパイプ椅子に座ろうとした。


ドライデンがパイプ椅子を後ろに引いた。


ゴン。


今度は仰向けにでんぐり返った兄ちゃんは後頭部を強か床に打ち付けた。


「アハハハハ」


私とドライデン、それにパーキンスも声を上げて笑った。


「うっうー、いってえー」


兄ちゃんは翻筋斗打って痛がっている。


「おい、クソガキ、大人を舐めてっといてえ目に遭うつーのが分かっただろ、キャハハハハ」


パーキンスが紫煙を燻らせながら言った。


「おい、ドライデン、もうその辺にしといてやれ。8時まで時間が無いぞ。さあ、帰った帰った」


「解りました、ボス」


ドライデンが私の横を通る時に「じゃあ、あんた、また後でな」と言って保安官事務所を後にした。


私は「ええ、また後でね」とウインクを投げて返してやった。


嬉しそうに保安官事務所を出ていくドライデンを尻目にパーキンスが灰皿で煙草を揉み消し言った。


「よし、もう一踏ん張りといこうか」


すっくとデスクチェアから立ち上がり首をコキコキと鳴らして右、左と指の関節もポキポキと鳴らした。


私は、その行為を見てパーキンスからやる気と生気を見て取った。


さぞかし私のフェラで英気を養ったのであろう。


パーキンスは煙草と灰皿を取調室に持参しラップトップの前に座った。


兄ちゃんが後頭部を摩りながらパイプ椅子に座り怪訝そうにパーキンスに言った


「何でそのアマがいんだよ」


私は兄ちゃんの横にスタスタと歩み寄った。


「な、何だよ」


兄ちゃんが訝った。


私はニタニタ笑いを見せながら兄ちゃんを見下ろす。


バシッ。


私は平手で思いっきりビンタをくれてやった。


「うっうー、いってえー。何すんだよ、このアマ。父ちゃんにもぶたれた事ないのにー」


「うっせーんだよ、このタコ、四の五の抜かしたらケツから手ェー突っ込んで奥歯ガタガタいわしたんぞー。私はいたいところにいるんだよ、分ったか、この黒んぼ。あら、嫌だわ。私もアマなんて蔑まされて保安官助手みたいに激昂しちゃったわ、オホホホホ」


クソガキの悪態に己をまたしても見失ってしまった。。


「まあ、お嬢ちゃん、落ち着いてくれよ。まあ、一服でもして」


パーキンスが私を宥めマールボロのボックスを差し出した。


私が一本抜き取り銜えるとパーキンスが火を点けてくれた。


フー。


4年振りの煙草は美味しかった。


私は右手の肘に左手を宛てがい立ちんぼの売春婦スタイルで煙草をふかした。


フー。


兄ちゃんの顔に煙を吹き掛ける。


さっきビンタした頬が掌の形に赤くなっている。


「や、止めろよー」


兄ちゃんが私を邪険に追い払う。


「まあ、お嬢ちゃん、俺の手並みでもじっくり見物しててくれよ」


私はパーキンスの後ろに周り兄ちゃんの取り調べをじっくり見物する事にした。


「おい、ドイル、お前、車の窃盗で今保護観察の身だろ。で、お前、近所のアンナに夜這いかけてばあさんの方をやっちまったってのはマジか。あのアンナって娘もブスだが、それに輪を掛けてばあさんの方はブスだろう。お前の息子は節操が無いな。あー、あれか。穴が在ったら入れたいっていうあれか。お前も相当なブサイクだから女には飢えてたんだろ。だから、ばあさんでも、まっいっか!ってなノリでチンポコぶち込んじまったんだろ。な、そうなんだろう」


パーキンスの言った事は的を射ている。


脂ぎったチリチリの縮れ毛にお前は魚眼レンズか!と突っ込みたくなるような離れた目。


おまけに外斜視。


歯は『ゲゲゲの鬼太郎』のねずみ男のように反っ歯で黄ばんでいる。


兄ちゃんは目を伏せ何も答えない。


パーキンスは穏やかに言う。


「はぁ~、お決まりのだんまりって奴だなー。お前、この前、車パクった時もそうだったもんなー。『弁護士が来るまで何も言わない』なんて抜かしてたもんなー。で、今回も弁護士を呼ぶ訳?」


ふてぶてしく腕を組みパイプ椅子に踏ん反り返っている兄ちゃん。


尚もパーキンスが穏やかな口調で言う。


「ばあさんの膣内からお前の精液が検出されたら何も反論は出来んだろう。ばあさんが閉経してるからって中出しは不味いだろう。今度は保護観察じゃ済まんぞ。実刑5年から7年ってところが妥当だろうな」


兄ちゃんは挙動が怪しくなった。


「弁護士に電話させてくれよ。弁護士が来るまで俺は何も喋らない」


パーキンスが煙草を一本抜いて錬鉄製のデスクの上でトントンとして徐に銜えた。


「ドイル、まぁ~、お前もそんなに気張らずに一服でもしろや」


パイプ椅子から立ち上がり兄ちゃんの横でマールボロのボックスを差し出す。


兄ちゃんが震える手で煙草を一本抜いて銜えた。


パーキンスが仏像のような穏やかな笑みを浮かべ左手で火を点けてやろうとした時だった。


右手で兄ちゃんの縮れた髪をむんずと掴み天を仰がせ鬼畜の表情で言い放った。


「おい、ニガーのクソガキ、俺が大人しくしてやってたら図に乗りやがって。てめえがヤッたんだろうが」


銜えていた煙草をポロリと床に落とす兄ちゃん。


パーキンスがジッポのライターをデスクの上に置き肩から吊るしていたガンホルダーからフォーティーフォーマグナムを抜き兄ちゃんの口の中に銃口を突っ込んだ。


えー、えー、えー、マ ジ で す かー!!!


さっき、あなたドライデンにニガーが何だとか警官の過剰暴力が何だとか大人になれとか仰っていたじゃないですかー!


ハ、ハイド氏だ。


私はパーキンスの内に秘めたハイド氏が表面化するのを目の当たりにした。


「ングォォォォ」


パーキンスの銃はフォーティーフォーマグナムだがポコチンの大きさはフォーティーフォーマグナムと呼ぶには、ちょっと物足りなかった。


咽ぶ兄ちゃんをニタニタ笑いで見下ろしながら銃口をグイグイと喉奥へ突っ込むパーキンス。


「どうだ、解るか?これがイラマチオされてる女の気分だ。おい、てめえ、あのカメラが回っていると思っているだろう。ありゃダミーだ。それっぽく見せてるだけだ。解ったか、クソガキ。自供を迫られて恫喝されたなんて抜かしたら、このフォーティーフォーマグナムが火を吹くからな」


えー、えー、えー、、マ ジ で す かー!!!


さっきは回してないとか言ってた癖にダミーだったんすかー!


パーキンスを周到だと思っていたが周到を通り越して悪賢いと賛辞を贈りたくなるのは私だけであろうか?


パーキンスが銃を口から抜いた。


「ゲホッゲホッゲホッ」


咽び返る兄ちゃんを余所目にパーキンスはベルトのバックルを外しジッパーダウンするとブラックデニムとボクサーブリーフを下ろして冷酷に言った。


「しゃぶれ。しゃぶるんだ」


こ、この一幕は『スリーパーズ』で少年刑務所の看守役のケヴィン ベーコンがブラッド レンフロにフェラを強要していたシーンと同じではないか!


パーキンスはデスクの上の銃を掴み兄ちゃんの頭に突きつけている。


えー、えー、えー、マージーでーすーかー!!!!!


さっきは「俺ももう57だ。あっちの方も一回イッたら後が続かん。昔の若い頃みたいに連続射精は難しいもんさ」なんて言ってたのに本日4回目のフェラじゃないっすかー!!!!!


多分、さっきは謙遜していたんだろう。


この男は絶倫だ。


ジェイムズ パーキンス保安官、57歳、昼夜ポコチンという名のガンを撃ちまくるガンマンである。


ポコチンの大きさはグロックの22口径といったところだが…


兄ちゃんが言われた通りにパーキンスのポコチンを口に含む。


左手で銃を頭に突きつけ右手で髪を掴んで腰を振り続けるパーキンス。


「アー、アー、ウー」


パーキンスは今度は口内射精ではなくイク寸前にポコチンを抜き顔射した。


不眠不休の末に究極のラヴドールを開発し、その実演販売で絶頂に達した発明家のようにパーキンスは果てた。


白濁の液が黒い肌に飛んで兄ちゃんの顔は白黒反転したブチ犬みたいになっていた。


放心状態のパーキンスと兄ちゃん。


暫しの沈黙を挟んで兄ちゃんが愛する母親を失った息子のように咽び泣き出した。


パーキンスが兄ちゃんの咽び泣きに我を取り戻しジキル氏に戻った。


フォーティーフォーマグナムをガンホルダーに仕舞いボクサーブリーフとブラックデニムをずり上げベルトを締めたパーキンスが兄ちゃんに言った。


「お前がやったんだな。な、正直に俺に言ってくれ。たった今、俺とお前は触れ合い心が一つになったんだ。俺は気持ち良くなりたい。お前は献身的に俺に奉仕して気持ち良くさせる。二人の心が一つになって俺はオーガズムに達したんだ。お前は光の速度で射精する俺を見て尊崇の念を抱いている。俺は、お前には更生の余地が残っていると思っている。希望の光が見えるんだよ。お前が罪を素直に認めれば減刑の嘆願書を俺がかいてやる。な、悪いようにはせん。俺を信じろ。お前がやったんだな」


鉄道公安官が観念した老スリ師の肩を叩くようにパーキンスはポンと兄ちゃんの肩に手を載せた。


兄ちゃんは号泣しながら言った。


「お、俺がやりました」


私はパーキンスの絶倫さと回復力に絶句した。


今、パーキンスが言った言葉。


何か聞き覚えがあるような…


あっ、あれだ。


線香のCMソングだ。


青雲


それは君が見た光


僕が見た希望


青雲


それは触れ合いの心


幸せの青い雲


青雲


そして、パーキンスの光の速度と自分で言わしめる射精まで要した時間も青雲のCMソングと同じ30秒だった。


私は、あまりにも早すぎる早漏加減にも絶句した。


そりゃそうだろう。


だって、パーキンスは光の速度で腰振ってたもの。


彼には幸せの青い雲が見えているだろう。


私は、ふと思った。


雲って普通白いよね!と…


青い雲って一体?

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