19.いざ、取調室へ
パーキンスは私を嘗め回すようにじろりと見て言った。
「ドライデン、お嬢ちゃんを取調室へ招待してやれ。それが終わったら二丁目のスーザンばあさんの所に行って孫のドイルを引っ張って来い。ドイルの奴近所のアンナに夜這いをかけたつもりが間違ってアンナのばあさんのサリーばあさんの部屋に押し入ったようだ。ドイルのヤロー、息子が収まりがつかなくなっちまってサリーばあさんを犯しちまったようだ。今から行ってしょっぴいて来い」
「イエッサー、ボス」
ドライデンが二つあるドアの右側のドアを開けて私を中に入れた。
その部屋は無機質なほどに簡素で小さな窓が一つに換気扇とエアコンが据え付けられていて壁の色はアイボリーだった。
部屋の真ん中に置かれているのは錬鉄製のデスクが一つとパイプ椅子が2脚だけだ。
錬鉄製のデスクの上にはデスクライトとデルのラップトップが開いた状態で置かれていた。
あのデスクライトを容疑者の顔に近付けて「お前がやったんだろ!」と自供を強引に引き出すんだろう。
入り口側の天井の片隅の一つに容疑者の正面からの動画が撮影出来るように監視カメラが据え付けられていた。
監視カメラのレンズが向けられている私が据わる方のパイプ椅子をドライデンが引いてくれた。
顔は醜男だが、この男は紳士な男だ。
私の中でドライデンの株はまたしても上がり好感度アップ。
私が椅子に掛けるとドライデンは取調室の入り口の所で立っているパーキンスの脇を擦り抜けながら言った。
「じゃあ、ボス、行って来ます」
パーキンスはドライデンを横目で見やりながら言った。
「ドライデン、そう言えば、お前の車クーラーガスがなんとかだとか言ってただろう」
「はい、ボス。クーラーガスが切れ掛かっているようで効きが悪いんです」
「そうか。この暑さじゃなんだ。ドイルをしょっぴいてからディーラーに行ってメンテナンスしてもらって来い。それに二人同時に取り調べは出来んからな」
「解りました、ボス。そうさせてもらいます。じゃあ、行って来ます」
「ああ、ゆっくりでいいぞ、ドライデン。気を付けて行って来い」
ドライデンが保安官事務所を出るのを見届けるとパーキンスは取調室のドアを閉めてこちらに向き直って胸の前で手をパンと打って行った。
「お嬢ちゃん、どえらい事をやってくれたな」
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