2.アマゾンに注文
夫とのずれに私は頭を痛めていた。
そんなある日だった。
私がアマゾンでCDを物色していた時だった。
この時間は至福と呼ぶに相応しい。
こう見えても私は貴重なCDを収集するコレクターだ。
特に廃盤、絶版の入手困難なCDを新品で然も定価でゲット出来た時はこの上ない幸せを感じてしまう。
CDは中古なんて買わない。
何処の薄汚いヤローが触ったCDなんて触りたくないからだ。
私はジーン チャンドラーの世界初CD化日本国内盤のみに収録されている未発表音源が無性に気になった。
それと、テデスキ トラックス バンドの日本国内盤のみに収録されているボーナストラックも無性に気になった。
私は真夏日の炎天下でマックでアイスコーヒのMにしようかLにしようかと3分迷った挙げ句やっぱストロベリーシェイクのLにしようと思ったように意を決した。
出品者は日本の業者だったが注文しようと決めて手続きを終了させようとしていた。
すると背後霊のように私の後ろに潜んでいた夫が私からマウスを奪い取りキーボードを叩いてエディットに【三郎 北島】と書き込みGoをクリックした。
迂闊だった。
夫は忍者のように気配を消して私の背後に潜んでいた。
私はアマゾンで物色する時はこうなる事を見越して夫には細心の注意を払っていたのだが、この日は寝不足で夫への注意を怠っていた。
アマゾンのページがサブちゃんの商品ページに切り替わった。
夫はページ下部へスクロールして行き、ある商品をクリックした。
それは『北島 三郎こんぷりーとBoxセット5枚組』で封入特典にステッカーと〈I Love SABU〉とプリントされたサブちゃん特製Tシャツが封入されているCDだった。
値段を見ると125ドルもした。
私は切れ気味に尋ねた。
「これ、要るの?」
夫はロマンを追い求めるアルピニストのように達見した顔付きで私の顔を凝視してから数秒の沈黙を挟んでこくりと頷いた。
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