第43話 崇拝
(はい、お兄様のために育てたお胸でございます。あたしの血肉は全てお兄様の所有物ですので、このお胸でさえもお兄様のものでございます)
「杏里、お願いだからこれ以上は……」
「えー、あたしみたいな美少女に構われてんだから、ぼっちらしく興奮しちゃいなよ」
(十数年お兄様を見守ってきたあたしは他の女よりもお兄様のことを知っております。お兄様は押しに弱い。今なんてこのように軽く迫られただけでたじろいおられます)
「お前、本当に大丈夫なのか?」
「平気だって。あ、でもさっきから体が熱いかも」
「ほら、やっぱり熱があるじゃないか。早く戻ろう」
「心配してもらえるのは少しだけ嬉しいけど、残念ながら病気じゃないんだよね」
妹は軽く胸元を開ける形で制服を崩し、オレの目の前に胸を突き出してくる。
「あ、に、き、久々に小学生の頃に戻って、一緒に過ごしてみたいな」
改めて見ると、オレを嫌っている素振りは完全にブラフであり、テーマパークでの出来事を機に本性を見え隠れさせるようになっている。
妹の本質は小学生以前と全く変わっておらず、オレに甘えたがりな所は全く変わっていないようだ。今まではそれが表面化していなかったのに、ライバルに取り囲まれた結果焦燥に駆られたせいで攻めっ気を出さざるを得なくなったのだろう。
小学生以前と違うのは、飛躍的な進化を遂げた体における優秀なプロポーション。彼女の体は美少女の例に漏れず、小さい頃からの可憐な姿を維持したまま、より美しさを際立たせる形で成長している。
そんな彼女がこんな行動に出れば、いくら兄妹と言えども勘違いしてしまう人は多いはずだ。
現にオレもドキドキしてしまっている。
「杏里、とりあえず落ち着こうか」
「えー、せっかく兄貴にサービスしてあげようと思ったのにぃ~」
(下着はお兄様が好きだと言っていた、黒を基調にした大人っぽいものに変えております。もちろんブラもショーツもセットですよ。あたしの全てを見てください)
杏里が着崩した後に見える肌には、彼女の言っていた大人っぽいブラジャーがつけられているのがしっかりと確認できる。
「杏里、ちょっと待ってくれ」
(あたしのおっぱい、お兄様に見られてる……)
「どうしたの?」
(えへへ、お兄様、もっともおっと見てください。あたしの成長した姿を! この日の為に色々勉強してきたんですよ?)
杏里が更に胸を突き出し、オレの眼前にその大きな胸が近づいてくる。あの双丘に目を奪われない奴なんて、男としてどうかと思う。
「杏里、その辺にしておいたほうがいいぞ。それじゃなくてもオレはお前に……」
「たまには兄貴にも女を味合わせようとしているだけよ」
(お兄様、杏里はいつでも準備万端です。今すぐお兄様のお嫁さんになって、毎日子作りに励みたいと思っています)
「余計なお世話だ」
「賢者ぶらなくてもいいわ。兄貴が目を逸らせないことはもはや猿でも分かる公然の事実なんだから」
(あたしから目を逸らせないお兄様、可愛い)
制服を剥いて所々をエロくした杏里の服装は、水着や全裸といった露出特化なものと比べても劣らない魅力を放っている。むしろこっちの方が慎ましやかにしようとしている分、隠れたエロを強調し、オレの想像を掻き立てる。
特に強調されている胸元は、思春期男子高校生にとって非常に危険な状況を作り出している。
「兄貴ぃ、あたしだってめっちゃ悩んだのよ。キモい兄貴にいきなり襲われた時を想定したら鳥肌が立ったし」
(無論、お兄様に襲われてしまうことは織り込み済みです。勢いでゴールまで進んでも、あたしは一向に構いません)
「おい」
「可愛いあたしを見ていたら、兄貴が獣になるのは分かり切っているもの。だからあたしなりに対策を考えたの」
(こうしていればお兄様は絶対に襲ってくるはずです。その時、あたしのことを抵抗せずに受け入れてくれるでしょう)
「それはなんだ?」
「兄貴の性欲をこうして定期的に発散させてあげれば、あんたは醜態を晒さなくて済むでしょ」
(お兄様をあたしに釘付けにして、他の女たちへの関心を無くさせるのが目的なのです)
杏里の独占欲の強さは半端じゃない。オレは今まで何度もこの妹に振り回されてきた。
今回だって、自分の気持ちをうまく隠せなくなった結果の行動だと思う。
オレは妹の胸から視線を外し、ゆっくりと立ち上がる。
「どこ行くの?」
「教室に戻ろっかなって」
これ以上妹の相手をしていたら、理性を制御しきれなくなりそうだ。妹のプロポーションはそう思わされるくらいに反則的で、かつ魅惑的であり、正直なところこのままずっと見続けていたい欲求はある。
だが、ここで変なことをすれば、今まで築き上げてきた関係が崩れるかもしれない。
妹との関係は良好であり続けたい。だからこそ、オレはこの状況を回避しなければならない。
「ねぇ、兄貴。どうして逃げるの? そんなに嫌だったの?」
「別に逃げたわけじゃないって。ただ、妹とはいえ、女性の体に下心を持って触れるのは憚られる」
「大丈夫よ。それに兄貴に触られるのなら全然問題ないし」
(えへっ、お兄様にいっぱい揉んでもらえるかなぁ?)
妹はオレに触ってもらうことに異様なまでの期待を持っており、それこそ毎日自分からオレに触れに来る。
(えぇー、なんでダメなのぉ。あたしの体はもう準備OKなのにぃ)
「杏里、お前がどう思っていても、オレはやっぱり妹の体においそれと触れることはできない」
「兄貴の意気地なし!」
(お兄様……あたしはいつでもウェルカム状態なのに)
妹を性的に触るなんて禁忌を自分のこれまで培ってきた曲がりなりにも普通の人生を引き換えにしてまで犯したくはない。このように、どちらかというと妹のためというより自己保身のためであり、追い詰められた人間らしい俗っぽさが表れている。
「……兄貴の童貞」
(はぁ……はぁ……お兄様はお預けが趣味のようです。あたしが崇拝しているあの方の趣向に応えるのも、恋人兼信者としては当然のことにございます)
相変わらず無敵な妹はオレの対応を都合良く解釈し、自分にとってプラスに捉えている。
まあ、悪い方向に考えて想定外の事態を引き起こす引き金にならないことの方がありがたいのだが……。
「杏里、オレはまだ……」
「はあ、兄貴の賢者っぷりには呆れてものも言えないわ」
(お兄様の考えは全て神のお言葉に等しい……貴方様の意向に全て従わせていただきます)
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