第9話 どうやって知る?

 食事を終え、缶コーヒーを買ってきた有咲が隣ではなく向かい側に座った。

「カフェオレでよかったかな?」

 ちゃんと奈々の分まで買ってきてくれている。ありがたく、奈々はそれを頂いた。後でお代を渡そう。

「そのひととは、どのくらいの付き合いなの?」

「どのくらいって、期間?」

「ん、まあ、それもだけど。もう、ヤッちゃった?」

 ぶはっとカフェオレを吹きそうになる。既のところで自制したけれど。

「その様子ではヤッてないかぁ〜。」

 ブラックの缶コーヒーを開けながら、有咲が笑った。

「・・・ってません。付き合った期間は・・・うんと、あれ、どこからが付き合ってるっていうんだろ。特に告白とか無かったからなぁ。ここからって起点がないや。」

「じゃ、知り合ってからは?」

「半年くらいかな。」

「どんなひと?年齢とか職業は?」

「えっと、三十九歳って言ってたかな。職業は公務員で、バツイチとも」

 今度は、有咲の方がぶはっとコーヒーを吐きそうになった。

「はぁぁああ!?39!?しかもバツイチですって?まさか子供がいるとか言うんじゃないでしょうね!?」

「すっご。有咲なんでわかんの。エスパーかな?」

「無し。絶対無し。やめときな。絶対やめたほうがいい、そんな男。厄介で面倒くさい訳アリ物件間違いなしでしょう!」

 力説する友人に、奈々は小さく言い返した。

「・・・わたしだって、訳アリ物件だもん。」

「何言ってんの!奈々は何も問題ないわよ!ごく普通の優良物件よ!若いし、女子大生だし、普通に可愛いし、性格も真面目じゃん!そんな男とは比較にもならないっ」

 身を乗り出して大声で述べるので、近くを通る別の学生がこちらを見る。目立って恥ずかしいので、奈々は慌てて有咲をどうどうと両手で押さえた。

「あ・・・ごめん。むきになっちゃって。」

「いや、まあ、ありがとう??」

「とにかくさ、絶対なんかあるよそいつ。バツが付くってことはそれなりの理由があるでしょ。なんで前の奥さんと別れたのか聞いた?」

「そんな、プライベートなこと詮索できないよ。」

「向こうはズカズカと奈々のプライベートに立ち入ってきてるのに??母親に会わせろとか、どう考えたって立ち入りまくりでしょ!?」

 そこまで言われてみると、有咲の言うことはもっともな気がしてきた。

 仮にもプロポーズされているのだ。

 有咲の言葉に、奈々はようやく気付く。

 もっと川幡のことについて知らなくてはいけない。彼以外から彼の情報を得なくては、彼の言うことに嘘がないかどうかも整合性が取れないだろう。

 だがどうやって?

 奈々は彼の携帯番号しか知らないのだ。一体どうやって彼の情報を仕入れればいいのだろう?




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