第31話 面倒な関係
有咲は先日、一緒にランチした時の出来事を事細かに話した。嘘偽り無く、正直に語ったため少々長くなってしまったけれど。
「・・・あたしはたまたまその時席を外していて、タイミング悪く、奈々だけがそこにいたから、相手の奥さんの非難を浴びることになってしまって。ごめんなさい。その後、もう一度奈々と話をしようと思ったんだけど、会えなくて。」
奈々の母親は目を丸くして娘の友人の話に聞き入っていたが、やがて、それはもう、おっとりと微笑んだ。
「まあ、そうなの。それは・・・なんというか。それで、わざわざ訪ねてくださったわけですか?まあまあ、それそれはありがとう。大丈夫よ、多分、奈々は大して怒ってなんかいないから。あなたも大変だったのね。」
娘が濡れ衣で迷惑をかけられたというのに、母親の千鶴子はのんびり笑っている。まあ、お詫びに来た友人をわざわざ叱りつけたりもしないだろうが、嬉しそうなのは不思議だった。
「はあ、まあ。・・・なんか、お母様、ちょっと楽しそうな風に見えるんですが。あたしの気のせいかも知れないけど、どうしてですか?」
感じた印象のままに尋ねると、千鶴子は笑う。
「ふふふ、・・・だってね、あの子は全然そういう話をしないのよ。職場でどうのとか、お友達とどうだとか、ましてや、彼氏彼女の話みたいな、そういう浮ついた話なんて一つもなくて、心配だったの。短大生だったころに一度だけ男性をうちに連れてきたことが有ったけど、それきりだったし。わたしの身体がこんなでしょう。だから、そのことばかりを気にしていて、自分のこと言わないから。今、あなたから、そんな若い娘さんらしい話を聞くことが出来てほっとしているの。」
友人の彼氏が実は既婚者で不倫していて、友人の代わりにその不倫相手の配偶者にと間違われ非難された、というのが若い娘らしいエピソードなのか?
いささか疑問が残る内容だと思うのだが、奈々の母親はよっぽど娘から日頃の話を聞けていなかったということだろうか。友人の母親の感性がよくわからない。
とりあえず、それは置いておき、有咲は自分が懸念している事を話さなくては、と思った。
何故か、奈々に絡むと事がマズイことに発展しそうで心配になる。二人は親友と言うにはちょっと距離があるのだが、なんだかんだ心配してしまう。それが有咲と奈々の関係だ。
「あたしはもう、別れちゃえば関係ない、で済んだんですけど。奈々は、同じ職場じゃないですか。なんか、面倒なことになったら申し訳ないなって思いまして。」
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