第3話 違和感ある友情
まだ奈々が短期大学に通っていた頃、福祉関係のセミナーで知り合った。福祉やら介護やらについて学ばねばならない奈々は、そういったセミナーや講演会によく出かけていたのである。
短大の学科は国文学なのに福祉関係について学ばねばならなかったのは、言うまでもなく母親の障害のせいだが、その当時はいまほど諦観出来ていなかったので、まだまだ迷いが有った。
もしかしたら、障害が無くなる方法が有るかも知れない。リハビリ次第で母親は自立出来るようになるのかも知れない。障害のある母親ともうまくやりながら、自分の人生を生きていけるようになるのかもしれない。そんな風に色々と考えたり迷ったりしていた奈々は、学校ではやはり浮いていたのか、親しい友人が極めて少なかった。
だから寂しかったのだろう。
偶然席で隣に座ったその男、
スーツを来てネクタイを巻く男は見慣れていたけれど、余りにもきさくに話しかけてくるので、つい話し込んでしまったのだ。セミナーの内容、受講した理由など、事細かに話しているうちに、なんだか元々親しかった人間であるかのように思えた。気付けば連絡先を交換して、次回のセミナーで会う約束になっていたのだ。
「え〜、やめときなよ、そんなオッサンなんかさ〜。奈々まだ若いんだから、同年代と付き合おうよ。ね、明後日の合コン一緒に行こう?」
同じ短大に通う八ツ
有咲は中学、高校と同じで、短大も一緒だった。ただ、親しくなったのは短大に入ってから。同じ学校にいることは互いに知っていたけれど、親しくなかった。有咲は活動的な女子で、いつも部活やクラブに夢中で、根暗だと呼ばれていた奈々とは一線を画す存在だった。短大で一緒になった時、向こうが奈々の事を知っていた事実に驚いたくらいだ。
「数合わせならもっと明るい子連れて行ったら?わたし連れて行っても何もいいことないよ?」
「そんなことないよ。奈々、美人じゃん。あたしのほうが引き立て役だよ。」
建前でお世辞を言っているのが丸わかりだ。有咲はそれほど美女ではないが、明るいしなんと言っても若い娘らしい華が有る。同じ年なのに、陰気で生活に疲れた感漂う奈々とは雲泥の差だ。だから、合コンで会う異性にも声をかけてもらえたことなど一度もないのだ。比較すれば、有咲は引く手あまたである。そもそも、年がら年中そうやって合コンの話がくるのは、やはり有咲が人気が有るからだ。
「明後日は、行かなくちゃいけないところがあるから、ごめん。」
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