第27話 ショックでかい

 場所を変えると言われて連れてこられたのは駅前のファーストフードだ。ここには苦い思い出が有る。有咲とここに再び来ることになんて運命のいたずらとしか思えない。

「知ってること洗いざらい話して?でないと帰らせないからね。」

 ファーストフードはいつから取調室になったのだろうか。

「だからね、あの人が異動してきたのは本当に今年の4月のことで、それまでは存在も知らなくてねぇ。」

 仕方なく、コーヒーを飲みながら今まで有ったことを友人に白状した。

 予定外の残業を押し付けられたこと。その原因はそもそも加東に気が有るお局の嫌がらせだったこと。残業になったとき、加東が車で何度か自宅近くまで送ってくれたことが有ったので、お礼に食事をご馳走したこと。その後は二度ほど食事に行ったがそれだけだと。

「ふ〜ん・・・、で、結婚してることを公表して無いわけ?そのお局さまも狙ってるってことはそうなのよね?」

「少なくともわたしは知らなかったかな。面と向かって独身ですか?って聞く人も居ないでしょ。なかなか強烈な奥さんだったから、知られたくないのかもしれないけど。有咲だって知らなかったわけでしょ?」

「あったりまえじゃない!騙されてたわよ!」

「加東さん、有咲には奥さんが押しかけてきたこと内緒にしてねってわたしに言ってたよ。あんだけ大騒ぎになったのに、バレてないと思ってるところがスゴイ。」

 あの男の、ニタニタ笑っていた顔が脳裏に浮かぶ。

 爽やか系統だと思っていたけれど、爽やかなんじゃなくて鈍いだけなのだろうか。

「・・・とにかく、あたしはもうあんな男二度と御免だわ。連絡先も削除して絶対に会わない。でも、奈々は職場で会っちゃうんだよね。」

「そうだよ。気不味いったらないよ。しかも、向こうはなんとも思ってないみたいなんだもん。・・・すっごい無神経。びっくりだよ。」

「うんそういうとこ、確かにあった。おおらかなんだ〜とか思ってた。」

「節穴!!有咲の目は節穴!!」

「何よ!万年処女が!!」

「ちょっと、声がでかいわよ!!」

「・・・うー、ごめん。やっぱちょっとショックで興奮がおさまらない。」

 有咲は気丈に振る舞っているけれど、ショックを受けたのは当然だ。頭を抱えてテーブルに突っ伏す姿には、さすがの奈々も同情を覚えた。




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