最強集結編—邂逅
強烈な浮遊感と目まぐるしく移り変わる景色に男の顔が歪んだ。嫌悪を表すその表情は見るものが見れば恐怖に背筋を凍らせるだろう。
彼こそはエンド=E=サリバン。身勝手な神々の決定を拒否することもできずにアダマスへ強制転移させられた“最強”の一人である。
「あの薄汚い神どもめ——まさか
山の頂上付近に降り立ったエンドが不愉快げに呟く。
眼光に宿るは憎悪と殺意。そして残りわずかに残った冷静な心だけだった。
————この山に見覚えはないな。となると……あの神どもの言葉通り
思い返したのは刹那に迫る転移時間の間に脳内を駆け巡った忌々しい神託だ。
曰く、別世界に存在する“最強”同士で殺し合えと。
曰く、“真の最強”たる勝者には神の名の下に望みを叶えると。
曰く、存分に
神託を使い一方的にそう投げかけた神々は最後に一言残した。
『本物の最強はただ一人——殺しあえ、異世界の
ギリッと歯を噛み締めて
「
傲慢にも神を見下す不遜な男は今ここに神殺しの誓いを立てた。その誓いは悪虐の始皇帝の名にかけて立てられたものであり、破られることは決してない。
「……誰だ?」
その時、空を飛翔する生物がエンドの視界を横切った。速度は音速を優に超えており、ただ横切っただけで山に生える木々が薙ぎ倒されている。
今の一瞬で見えた特徴に彼は見覚えがあった。ただしそれは本来交わることのない特徴であり、自分の目が信じられぬほどの衝撃を受けたのは禁じ得ない。
不敬なことに皇帝の
やがて“それ”はエンドの前に来て、
「やはりあの神託は本物でしたか。いやはや、あなたとの出逢い、ここに感謝の意を示します」
上空に留まるその男は腰まで下ろした銀髪を靡かせながら大袈裟にお辞儀を見せた。
「オレとの出逢いに感謝だと?」
「ええ、そうですとも。わたしが神々を楽しませる余興の一助となれるのですから」
————つまり、オレと
白と黒の翼を持つ恭しい態度の美青年を観察しながらエンドは思考する。
頭上に浮く光輪。二対四枚の美しき純白の羽。またそれと交互に付けられている同じく二対四枚の刺々しい漆黒の翼。計八枚の白黒の翼があの速さの秘訣であるのは明白だった。
問題は種族だ。到底信じられないが、空に浮くこの男は恐らく最も交わることのない種族の混血である。
つまり……
「天使と悪魔の子か。珍妙な生物もいるものだな」
「ここは褒め言葉として承りましょうか。では早速——ぐッ!?」
律儀に言葉を待つ義理はない。そう言いたげな一撃は黒き風となって頭上から光輪を押し潰さん放たれた。
山の麓へ堕ちる寸前——銀髪の男は片手を向けるエンドに気付き、美しき容貌を微かに震わせる。
————この
木を巻き込みながら堕ちた天魔は
「卑怯などと宣うなよ。オレに攻撃の意思はない」
「人を堕としておいて言う言葉ではありませんね」
「オレは本来あるべき形にしただけだ、傀儡め。オマエ如きがオレより上で事を構えるなどあってはならぬ」
始皇帝の面影をだして、男は天魔に告げる。
「本来ならばここで死罪にしてやるところだが……喜べ。貴様にはオレの
少しの間だけ唖然として、銀髪の男は侮辱されたことに気づいた。
フツフツと湧き上がる憤りを感じて拳を強く握りしめる。
「少し下手にでてみれば……神の代行者たるわたしを低知能な
大きく翼をはためかせ、周囲の
「あなたこそ神の代行者であるわたしの
「たかだか神の代行者がオレをモルモットにか。つまらん冗談だ。今なら豚のケツを舐めるだけで許してやるぞ?」
“最強”の称号を手にした強者が睨みあう。その殺意はぶつかるだけで他の生物の魂を底から震わせた。
悪虐の始皇帝・エンド=E・サリバン
VS
混沌なる天魔・ルシファー。
——ここに開戦。
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