最強集結編—呪具製作2
あの蒸し暑い鍛冶場から立ち去ったエンドは書館へと一直線に進んでいる。先にリィルの元へ向かった時に書館の場所は把握しているし、問題はない。しかし念には念を、だ。
通りすがりの民間人に尋ねてみることにした。
「そこのオマエ、時間をもらうぞ」
「へっ?」
襟を掴むと細々としている男はキョトンと怯えだす。真っ当な反応だが今それをやられると時間がもったいなく感じた。
とはいえ大した事を聞くわけでもないし、手早く済ませよう。
「一番多くの本が置いてある書館を教えろ。ついでに他の書館もな」
「は、はいぃぃ! 神殿にあるのが一番大きいです! その他には——」
この国にはいくつかの書館がある。今この人間が言った神殿は国トップしか通えないような機密情報満載の書館だった。つまりエンドは通えない。侵入は可能だろうがそもそも彼の目的は聖神国の機密情報などではなかった。
ただこの世界について記されていれば何でもいい。
「大図書館が中央部にあります!でもコチラは身分が証明できるものとそれなりの地位が必要になります」
大図書館とやらも無理だ。なにせ今のエンドは身分証明なんてできない。
「次は民間図書館ですね。僕達が行くような場所ですから出入りは自由です。ただ子供向けの御伽噺や英雄譚が多いので……」
「いや、それでいい。感謝するぞ名も知らぬ人間」
「えっ、ちょっ……」
掴んでいた襟を離す。
身分証明が必要なのは大図書館のみ。そしてそれがあるのは中央部だという。ならばエンドが確認した書館は今の人間が言った民間図書館なのだろう。
わかったのならこれ以上ここにいる必要もない、と背を向けて歩き出すと数分もすれば書館が見えてくる。
戸惑う事なく入口をくぐり、びっしりと並べられている本を眺めた。確かに御伽噺や英雄譚ばかりだったが、奥に進み隅の方へ視線をずらすと小難しいタイトルの分厚い辞典なども多く置いてある。
今回はこの世界の情報を収集するのが最優先だ。マインとの一件で如何に自分達が不自然な存在なのかは理解できた。そもそも意思がある人を頼る事自体間違いだったのだ。そりゃあ訝しげにもなる。
なんだかんだ本を読むのが一番安全な近道なのだろう。
「ん?」
————これは……?
ふと目に入り込んだのはこれまた鈍器のような本だった。別にそんな本自体は数多あるが、今回目を引いたのはタイトルだ。
『偉大なる勇者の剣』
勇者なる生物がこの世界にいる事実。もっとも世界が違えば存在理由も違うはず。アダマスにおいての「勇者」とは何か、それを探るのは決して時間を浪費する行為ではない。
エンドは本を開いてペラペラとめくっていく。
内容は勇者と敬称される異世界人とそれに使える世界の騎士、つまり聖堂騎士団の話しだ。この本で着目されているのは今までの歴史で最も優秀だった聖堂騎士のこと——本書でいう偉大なる勇者の剣のことだった。
————偉大なる勇者の剣とは聖堂騎士の事だったか。
少しだけ聖神国の、世界の歴史がわかった。
以前にマインが『
この世界の歴史では勇者と
要するに勇者に仕え、世界を守護する聖堂騎士団の本拠といえるこの国——聖神国はマインの言葉の通り世界で最も高い権力、そして武力を所持する国である。
————もう少し探ってみるか。
エンドは新たな本を探し始めた。
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