最強集結編—エクス=ギアルス5
データは戦慄していた。初めて見たマインの実力に、そして聖神国の国宝である光の魔剣の美しさに。
————第三界の魔法を重ねがけ……すごい。本当に……。僕とは何もかもが違う。
オマケに光の魔剣の威力である。軽く払っただけで光が火花のように飛び散り飛行している敵を一掃してしまった。
これなら絶望的な状況も……。あるいは彼女一人だけでも助かるかもしれない。
「今すぐあの機械に向かいなさい——!」
そう言うと、幾つもの光が分散して地面に散らばっている鳥の機械とぶつかった。何十もの光柱が現れ、地面ごと物質を消滅させる。
その光景を見たデータはマインに逃走を図る気はないことを悟った。
逃げて、などとは言わない。彼女がそう決めたのなら自分はあくまでも応援するまでだ。
————絶対に勝ってください、カーマイン副隊長。
◆
マインが機械鳥の消滅に成功した後、もちろん彼女は油断などしたりはしない。
「次——」
一番厄介だった飛行している機械を潰したのだから後はすばしっこい蜘蛛だけだ。もしも機械に人間と同じような学ぶ力があるのなら先と同様の攻撃手段は対策される可能性があるが……。
————いいえ、相手が地に足をつけているのなら付与魔法を行使している私が有利。
光の魔剣に任せるのではなく単純な近接戦闘を選択すべきだ。
「排除、排除——」
「潰セ、潰セ——」
ずっと同じ言葉ばかり。壊れた機械みたい。
なんて、遅くなる視界を他所にどうでも良い事を考えながらマインは残像を残して剣をひと薙ぎ。
現に機械蜘蛛もそうだ。
「ギィ!?」
「ギガァギギィ——!」
雷と風、火の魔法付与を最大限利用したマインの出せる最高速度。これに光の魔剣の力も使えば話は変わるが、彼女は魔剣まで使うつもりはないらしい。
「破損率七十%ヲ突破。自爆シマス、自爆シマス」
機械蜘蛛が鳥と同じように無機質な声で言う。光の魔剣の時よりもダメージは低いはずだがどうやら蜘蛛の方がずっとボロボロだ。恐らく機体によって防御力がかなり違う。
ならば、
————先ほどよりも光は弱める……!
規模が不明のまま自爆させるわけにはいかない。不幸中の幸いだが耐久力は今の敵の方がずっと低いのだ。
マインは魔剣を横に払って幾つもの光を飛ばす。
すると光は文字通り光速で蜘蛛に向かい以前よりも小規模な爆発を起こして機械の欠片を一つも残さずに消滅させた。
「死者は出ましたが……幸い敵の戦力は知れましたし問題は——あれは?」
彼女が飛ばした光は彼女自身が把握していた全ての機械へ散った。漏らしがなければこれで終わり。
が、事態は簡単に終息しないようだ。
マインの視線の先。隅々まで撃ち落としたはずの空に、それは居た。
「全機消滅か。予想通りではあるが……」
淡々とひとり呟く男は下を見回しながら落胆する。
「ここにワタシと同類が居たと思ったのだがな」
その言葉を耳に入れて、マインは瞳を細めた。怒りが込み上がってくるのを自覚したのだ。つまり、仲間を殺したのはこの冷淡な男なのだと。
————絶対に許しません。
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