最強集結編—エクス=ギアルス9
「ひどい……」
リィルが呟く。たった今、二人はデータと言う名の騎士の記憶を覗いた。
内容は凄惨の一言に尽きるがいつまでも立ちっぱなしでは居られない。まだ皆が死んだとは決まっていないのだから希望を捨てるのは間違っているだろう。
パッと腕組みしてるエンドを見る彼女。
「まさか『助けたい』とでも言うつもりか? 先の記憶を見た限り生存率は絶望的だが」
「それでも……少しでも可能性があるのなら、私は……助けるべきだと、思う」
そこで言葉は途切れ、静寂に包まれた。
「…………」
————面倒だな。ここまで静かなのは
まったく仕方のない。
「
「ならば向かうぞ。オマエが
——もう見つけている。
エンドが自虐的に
その流れを呆然と眺めていたリィルが訝しげに息を吐いた。
「アンタ——何を企んでるの?」
今のエンドは自ら率先している様子だ。出会って短い関係だが彼女は知っている。
すなわちこの男は
「完全な善意だとは思わないのか?」
「そんなのアンタにはないでしょ? それとも本当に善意からかしら?」
彼女は腰に手を当てて答えを待つ。
「今回の事件を利用すればオマエとも離れられると考えただけだ。第一オレに善意など存在しない」
「……そんな事だろうと思ったわよ」
エンドとリィルが共に過ごすのは契約があるからだ。そして期間はエンドが自身と同じ
みすみすこの機会を逃す手はないだろう。相手は恐らく彼らと同じ異世界の鬼神なのだから。
————存外、楽しみだ。あの羽虫は貧弱だったが、
「
やはり未知とは心躍る。億を生きようともまだまだこの宇宙は広そうだ。
「それで機巧城ってのは何処にあるのよ?」
「オマエもやる気になったか? 先刻まで喚いていた分際で」
「アンタって
————コイツ絶対にモテないわ。間違いない。私が断言するんだから。
ぐぬぬぬぬ。と無意識に入る力を途中で逃す。そうだとも。怒っても意味などない。相手は無自覚で人を小馬鹿にするクズなのだ。
だから平静を保て。保て私!
頭を抱えるリィルを他所にエンドが外に足を進めた。
「ちょ、待ちなさいよ!」
丁度出入り口の前辺りで立ち止まる彼と横並びになる位置で立ち止まるリィル。
そこで肝心な質問を無視されたことに気づいた。
「で? 結局機巧城って何処にあるのよ」
「上空、真上だ」
「は?」
「二度言わすな。上空、真上だ」
「聞こえなかったって意味じゃないわよ。まったく……嫌な予感がするけど……一応聞いておくわ」
一度だけ深呼吸をしてからリィルが尋ねる。
「その機巧城に向かう手段は?」
「——はっ」
気になるか? そう答える前。リィルの瞳が見開かれる。
まともな反応すらできず感じる浮遊感。何かに引っ張られるような、片腕で抱えられるような感じるはずの無い不思議な感覚。
そして、彼女は電流で痺れたような錯覚を経て、現状を認識した。
「舌噛むなよ」
「まっ——ひゃぁぁぁあ!!」
————この唯我独尊身勝手男ぉぉお!!
大ジャンプをしたエンドにリィルは内心で罵倒をぶつけ続けたという。
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