最強集結編—聖堂騎士団4
ひとまずマインが足を運んだのは多くの騎士を汗水垂らしながら看病している中年女性の——隊長のもとだった。
「ん? なんだいその人らは?」
「どうやらこの草原に迷い込んでしまったようです」
「迷い込んだだって? そんな訳あるかい。目的もなくこんな所に——」
これ以上面倒な方向へ話を持っていきたくはない。そう思ってか、エンドが口を挟む。
「オレ達は旅人だ。今は世界中を2人でまわってる。それと、迷い込んだのは事実だが
ことごとく上から目線だったが、騎士達に気にした様子はない。いや、正確には女騎士達には——だ。
マインの二歩後ろを歩いていた男騎士どもは相当頭にきたらしく、エンドを睨め付けている。まあ、当の彼はどこ吹く風だが。
「なるほど。……おまえ達の事情はわかった。しかし心苦しいが我らも崖っぷち。残念ながら役には立てんぞ?」
むしろ好都合。ここで無駄な食事を振る舞われたり、護衛などといって付け回されても厄介だ。
目的を達成してすぐに立ち去ろうとエンドが口を開く。
「オレは情報が欲しいだけだ。ここら一帯の事を教えてくれればそれでいい」
「ここら一帯? そんなことを聞きたいってのかい? そんなのでいいのなら幾らでも教えてやるさ。マインが」
「わ、私ですか!?」
彼女は少々驚いたふうに瞳をまんまるくした。
だがそれも一瞬で、すぐに気を取り直す。
「どうせ暇だろう? アタシは適当に看病してるからおまえも休憩がてら仕事してな」
「休憩なのに仕事ってどういう意味ですか……」
話はまとまったようだ。マインは中年の女性に軽く頭を下げると振り返り言う。
「では日を避けられる場所に移りましょう。仲間に土属性の魔法を使える者がいますのである程度は快適ですよ」
それから少し動くと「日を避けられる場所」だと思われる簡易的な家が見えた。家とはいっても屋根とそれを支える土の柱があるだけで、壁なんてものはない。だがこの温度だ。壁なんて作ろうものなら蒸し焼き状態になるのがオチだろう。
屋根の下に入り、土の椅子に座る。マインはふぅと一つ息を吐くと姿勢を整えて問うた。
「それで……ここら一帯の情報、でしたか?」
「ああ。先にも告げたがオレ達は旅人。それも危険な状況をこよなく愛す酔狂な旅人だ」
そのまま適当な設定を考えながら続けた。
「今までは行く先の下調べなどしなくても問題なかった。しかし異質な草原に連れの者が怖がってな。安心させるための材料として情報提供を望んでいるわけだ」
「そういうことですか。もちろん出来るだけご協力はさせていただきます」
————コイツとんでもない嘘つきね。
と、リィルが内心でドン引きする。
そんな心の内を知る由もないマインは曖昧に首を傾げた。
「協力を、とは言いましたが私も人並み程度の情報しか持ち合わせていません。ここら地域に詳しい者ならいるのですが……今は眠っています」
彼女の表情に影が差された。
やはり何か不測の事態に見舞われているのだろう。だとしてもそれはエンドに関係のないこと。このまま無視して貰えるものを貰うのが賢明な判断だ。
そのはず——だったんだが……
「そういえば皆さん元気がないですね。何かあったんですか?」
「——おい」
ずっと黙り込んでいたリィルが突如発言したのだ。
この時までエンドは、彼女が自身にすべてを任せていると思っていた。だから多少とはいえ柄にもなく驚いてしまったのだ。
ついつい咎めるような声を送ったが、リィルは止まらずに続ける。
「もしよければ教えてください。こう見えても私達、それなりに実力はありますし魔法も使えるので」
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