最強集結編—機巧城3


 少々リィルと口論に近いことをしてしまったが、結果的には納得してくれたようだ。あるいはそれは諦めに近かったかもしれない。

 どちらにしろ今の結果になったのは時間をかけない方が良かったためだろう。


「ここからはどう進むのよ?」

「本来なら機巧城これごとヤツを滅する。が、今回その手は使わずにいく」


 ————先の機械にしても、この城にしても未知な部分が多いからな。


 要は警戒。そして彼自身が後でじっくり調べるための調整だった。

 完全に自律する機械に、空飛ぶ機械の城。エンドの興味を引き出すのには十分すぎる要素だ。


 だから、


「しらみ潰しに行く仕方ない」


 通常ならばエンドの現鬼神同類を探し出すのに苦労はしない。しかしなぜだろうか。今回の敵、エクスからはうつつ鬼神同様の威圧感や気配がまったくないのだ。

 片っ端から潰していくのは面倒だが仕方がない。今回に関してはエンドの欲を考慮してのことなのだから。

 しかしまあ、ある程度苦労してでも機械雑兵は兎も角、この浮遊する城だけは確保しておきたかった。


 億劫に感じた——その時。

 すぐ近くの壁に、穴が空いた。まるでブラックホールのようにくっきりと。


「歓迎してくれるらしいぞ」

「……やっぱり現鬼神アンタらって戦闘狂なのかしら?」


 呆れたようにリィルがため息をつく。

 何せわざわざ敵の親玉——エクスは壁だと思われていた扉を開けたのだ。これでは「来て下さい」と言っているようなもの。

 よっぽどエンドと争いたいと見える。


「もしかしたらオレを潰せるとでも考えているのだろう。身の程を弁えん男だ」

「いや私にはどちらが強いとか分かんないけど……本当に大丈夫なんでしょうね?」

「なんだオマエ。オレに敗北の可能性を訴えているのなら時間の無駄だぞ」


 ——だってアンタが負けたら私どうするのよ?

 そう言いそうになって口を噤んだ。

 こういうネガティブな発言はするべきではない。


 ここでリィルが危惧していたのはエンドが負けた場合だった。正直なところ、彼女は自分が死ぬなんて思っていない。だが変わり果てた聖堂騎士を見て、断言できる。


 ————絶対に私も弄られる何かされる……!


 いや、多分、私に指一本触れられないでしょうけど——そう思いつつも嫌なものは嫌だ。出来ることならエンドには勝利してほしい。


「置いていくぞ」

「っ待ちなさいよ!?」


 少し考え過ぎていたか。彼女が視線を上げる頃、エンドは扉の前で立ち止まっていた。




 ◆




 機巧城には幾つかの軍があり、それを率いているのが機械軍の王エクス=ギアルスである。

 彼の恐ろしさはエンドのような質としての強さではなく、圧倒的な数としての強さ。そして生まれつきの天才的な頭脳だ。


「アイ、敵襲だ。すでに城内へは入れてやったが……あとの対処はキサマに任せよう」

[了解しました]


 つまり殺しにかかるのも生かすのもアイ次第。とはいえ、アイは理解している。

 今の言葉は「手短に殺せ」という意味だと。


[固定砲台、展開。その他城内に設置されている全機も出動してください]






 その頃エンド一行は異変に気づいた。いや、気づくに決まっていた。なぜなら、


「ちょっとエンド、これ大丈夫かしら?」

「異常な揺れだな。地と孤立している以上、地震で無いのは明らか。敵も本格的に構え出したな」


 何かあったら助けなさいよ——そう口を開こうとした、刹那。


「——ッ!」


 床、天井、左右の壁。その全てから数え切れないほどの銃口が向けられる。前触れなど当然なく、機械であるから殺気も感じられない。

 唯一感知できる要素があるとすれば音、だろうか。ただそれも細々としており耳に入っても気にしない程度。


「——〈巻き上がる神炎デュフォン・デウロガ〉」


 しかし耐久力は低そうだ。

 実際、三機の人型機械は極小の炎で溶解した。

 ならばそれの数十倍は熱量が跳ね上がっている〈巻き上がる神炎デュフォン・デウロガ〉で一掃できるはず。


「ひゃあ!?」


 エンドを中心に台風のような炎の渦が巻き上がった。向けられていた数多の銃口は当然日に晒された飴のように溶け——配慮のない魔法の行使によってリィルが悲鳴を上げる。


 熱で赤くなる抉れた床にドロドロの火器。パチパチ、と瞬きをしてから、


「ちょぉっとアンタ!? 私まで巻き込まないでよ!?」

「どうせ効かないだろう」

「そう言う問題じゃないから!?」


 それと同時に薄い桜色のバリアが解かれる。


 ————やはり不可思議な盾だ。どの異世界でもこんな魔法は見たことがない……いや待てよ? これはまさか——ッ!?


 たどり着いた一つの可能性をエンドは否定する。否、「それは後だ」という現実逃避をした。


「喚いていないで行くぞ」

「ま、待ちなさいよこの人でなし!」


 本日数回目の殺意を抱きながらリィルは男の背を追いかけた。

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