最強集結編—悪虐の始皇帝VS混沌なる天魔3
ルシファーは怒っていた。傲慢な始皇帝に、理不尽な魔法に、そして——いささか下に見ていた相手に殺されかけた自分自身に。
これほど不甲斐ないことはないだろう。もしも神達が観戦していたのならどれほど我らに落胆しているだろうか。
これは最上位天使としてあるまじき失態である。
————神力を借りてこの体たらく。わたしの油断か、それとも……
この男が化物なだけか。
内心で舌打ちしながらルシファーは己が与えられた最高の得物を使用する決意を固める。瞬間。手に一本の槍が顕現した。
それこそは鍛治神が鍛え、五属性の精霊王が宿り、神界にあまねく聖なる気を十分に吸収した神器の一種、三叉槍だ。稲妻のようにうねる三つの刃が光を帯びている。
天魔は、羽を広げ飛翔しながらそのひと槍をエンドに向けて投擲した。
穿つは心臓、投げるは必中必殺の神器。確かな殺意が込められて、黄金の槍が空を切り裂き先を進む。
しかし彼は心のどこかでわかっていた。あの男がこの程度で死ぬはずなどないと。
「良い槍だ」
実際、その男は始皇帝たる威厳を崩さず不敵に笑う。
「だが——オマエには過ぎた代物だな」
焼き堕としてくれる——それが当然であるかのような物言いだった。それから片手の平を前方へ押しやるように向けて、
「〈
次の瞬間——煌めく炎球がルシファーの三叉槍を迎え撃つ。しかし、
————やはりあなたにはわたしの能力を読み解く手段がないようですね。
一匹の天魔は込み上がる笑みを先の屈辱で押さえつけた。
神造兵装・三叉槍。三叉槍とは槍の種類であり名ではない。そのあまりの凶悪さから無名である不憫な武器である。一方で能力だけを見れば果報なものだ。
魔法無効化、自動追尾、精霊王の五つの魔法、刃先から滴る光の毒……おまけにどこからでも主人の手に戻ってくるというブーメラン機能。細かいのを調べればもっと出てくるだろう。
結果〈
「〈
これには百の異世界を掌握したエンドも驚嘆せざるを得なかった。なにしろ己が今まで出会ってきた強者の誰もがそのような力を秘めていなかったから。最も、条件付きでの無効化能力なら彼も既知している。
だが、神すら燃やすこの魔法をただ触れたのみでの無効化など聞いたこともない。
————オレも似たようなことはできるが……少し別物だな。それに
ふと、黒い欲が脳裏をよぎった。
「あの神物……奪い取ろうか」
いや、その前に今は、止まらぬ三叉槍の対処が優先か。そう判断して、あの神器に対抗しうる一振りを呼び起こす。
そうして、その一刀は自らエンドの手に収まるように異空間から独りでに現れ出た。
「オマエと戦を楽しむのも随分と久しいな」
剣先から柄頭までの全てが漆黒である剣を握ると、返事をするように剣身に刻まれている
それを見て取るとルシファーが目を剥いた。見間違うはずもない。
あれは……
「神々の言語——神器だとでもいうのですか……」
百文字以上の
————槍の勢いが落ちたな。それに刃先の光も消えた。……同格の武器相手では効力を失うのか?
「は、弾かれた!? あり得ません、だってそれは……鍛治神が作り上げた名槍……」
「なんだオマエ、神だ神だ吠えてたくせにこの剣を知らんのか」
悪虐の男はルシファーに迫りながら言問う。
「幻想剣イリュシオン・ベータ——かつて一万の神々を鏖殺した始皇帝の宝剣だ。この逸話、平和ボケしている神どもへの冥土の土産にするがいい」
「なにを言って——ッ!?」
今になって全速力をだしたエンドに、ルシファーの反応が一拍遅れた。むろんそんな隙は逃さない。黒塗りの刃で、情け無用の袈裟斬りをお見舞いする。
「ぐッ——!」
純白のキトンが斬り裂かれ、鮮血が飛び散った。
だが、ルシファーとて幾度もの修羅場を掻い潜ってきた猛者。すぐに再起するため、三叉槍を遠隔操作で動かしエンドに襲い掛かる。
「魔法が効かぬというのは厄介だな——小蝿!」
魔法で防ぐことは不可能。ならば、と刹那の世界で選択する。
イリュシオン・ベータで三叉槍を受け止めて、詠唱。もちろん操るのは先刻天魔を半殺しにした神をも傷つける灼熱の魔法。
——〈
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