7.依頼完了と悪目立ち

「ふむ。まぁこんなもんか。助かったよ、もふた。」


 50回のような100回のような、分からないくらいひたすら同じ作業を繰り返すのは大変だった…。生産職の人はこういう作業を途方もない数やってるんだな。すごい根気とやる気だ。


「いえ、仕事ですから。」

「いいかい、調薬に限らず生産は発想が命だ。お前さんはその辺向いとるのかもしれんな。何かあればわしの元へ来なさい」

「なるほど。ありがとうございます」

「これは個人的な報酬じゃ。」


 解毒草、出血草、麻痺草、雑草を渡された。

 …雑草?


「すみません、雑草が混じってるんですが」

「鑑定というものは万能ではない。全てが分かるとは思わん方がよいぞ」


 これ、かなり重要なことじゃないか?要するに知識がない今の状態だと鑑定出来ないもの、もしくは鑑定自体が出来ないものがあるってことだよな。


「勉強になりました。」

「ふん。精進せい」


 ギルドへ戻り、カヤさんに報告。


「はい、確認しました。依頼完了です。薬屋のおばあちゃんは何か言ってませんでした?」

「いえ、特には。何かあったら来いみたいなことや、色々勉強させては貰いましたけど。」

「へぇ…あの偏屈おばあちゃんがそこまで…。もふたさん、気に入られましたね。」

「あー、やはりそうなんですか。なんか色々教えて貰えて助かりましたからね。」

「おい!!!」

「…なんですか」


 なんか急に話しかけられた。そしてカヤさんの顔から表情が消えた。こわっ


「あ、カヤさん。いえ、コイツに用がありまして。」

「それは人の話を遮るほど大切なことでしょうか。」

「あ、いや、えー、あー、その…」

「もふたさん。また後日お話しましょうか。今日は邪魔が入りましたから」

「あ、はい」


 俺の方を見た時はいつもの笑顔になっていたんだが、「邪魔が」のあたりでチラッと絡んできた人を見る目が冷たすぎて、たじろいでしまう。


「では失礼します」


 うわー、変なのに目付けられたな。急いで宿に戻ろ…


 あ、そうだ。さっきフレンドになっためーぷるさんにおばあさんの所で話した重要そうなことを簡単にまとめ、送っておく。


 そそくさと退場する俺だが…案の定さっきのやつの仲間らしき奴に捕まった。


「なぁお前、どうやってカヤさんに取り入ったんだよ」

「は?別に特に変わったことはしてないけど」

「んだと!?しらばっくれる気か!1人だけ抜け駆けしやがって!決闘だ!受けるよな?」


 …絶句した。理由が意味わかんないのに、決闘なんか受けるはずないだろ。そもそも戦闘行為したら即負けだってのに。


 仮想ウインドウに出てきた『決闘を受けますか?』という問いに『いいえ』をタッチし、無視することに決めた。


「あ、おいコラ逃げんじゃねぇ!隠し事なんてずりぃぞ!」

「わうっ」


 さすがにうるさかったのか、フェルが鬱陶しそうに吠えると、背中に風を感じた。

 あれ?フェルさん?


 後ろを見ると絡んできた男が吹き飛び、周りの人の視線は俺の肩…つまりフェルに。

 これ、明らかにダメな目立ち方やん。

 幸い今は驚いて固まっている。というわけで、逃げるが勝ちよ!



『なんかすごい騒がれてたけど、大丈夫?』


 めーぷるさんからそんなチャットが来たのは、女将さんの宿に戻ってからだった。


『あぁ。ちょっと変なのに絡まれたせいでフェルが目立ってな。』

『あー、フェルちゃん、この辺じゃみない魔物だし、強さも相まって目立ったのか。』

『決闘とかされても俺、戦闘行為するだけでHP0になるからそもそも出来ないし。フェルに助けられたわ』

『そうだね。分かったわ。私の方で動いてみる。』

『ん?何かツテあるのか?』

『ふふ、私、こう見えても有名プレイヤーの1人なのよ。任せて』

『分かった。恩に着る』


 はー、疲れた…。

 確かに他の人とは違う遊び方している自覚はあるが、こう…注目されたい訳じゃないから困るな。

 よし、フェルをモフって癒されよう。

 もふもふ〜。わしゃわしゃ〜。

 …そうか。何か足りないと思ったらブラシが欲しいな。ブラッシングも立派な飼い主のやる事じゃないか。今度用意しないと。


「ただいま。」

「おにいちゃん、おかえり!」

「アニキ、おかえり。」


 3人と1匹でご飯を食べ、ログアウトした。




 ……………………………

 ○カヤ視点


 はぁ。せっかくもふたさんとお話していたのに邪魔が入るとは。今までは鬱陶しくはあったけど、実害はないから放置していたけれど、こうなっては許せないわ。


 …あら?なんか外が騒がしいわね。…ふむ。もふたさんが風の精霊王様の直系の精霊を使役しているのね。ふふっ、面白い人ね。

 コレの仲間らしき奴が吹っ飛んでるわ。スカッとした。


 これなら今はもふたさんの心配はいらないわね。今後もふたさんに近付く悪い輩を対処する方法を考えるべきかしら…


 そんなことを考えていた日の夜、面白い提案を、とある女性から受けた。




 ーーーーーーーーーー

 お読みいただきありがとうございます。なんかPV?がやたら増えていてびっくりしました。

 モチベになります、ありがとうございます。

 さて。

 今回短かったので最後にチラッとだけ他キャラ視点で書きましたが、たまーにこんな風に文字量の傘増しをするかもしれないです。

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