6.お店のお手伝いクエスト

 今日も今日とてログインをする。


「あ、おにいちゃんだ。おはよう」

「アニキ、おはよう。」

「わうっ」

「あぁ、おはよ。」


 おや、フェルがなんか大きくなって…進化してるな。フェンリル・ベビーだったのが、チャイルド・フェンリルになっている。だいたい前が40センチだったのが60センチになったかな?

 赤ちゃんから子どもになって…お。実体化。つまり、精霊の目を持ってない人にも見てさわれるようになった。これでユキやクロとも仲良く出来るな。


「フェル、進化したんだな。実体化してみてくれるか?」

「わうっ!」

「わぁ…!」

「おお…!」


 フェルが吠えた途端、2人の顔に花が咲く。目がキラキラしている。


「おにいちゃん、この子がせいれいさん?」

「あぁ。進化して、姿を見せれるようになったんだ」

「白の狼型…フェンリル様の直系だ…」

「よーしよしよし〜。」


 大きくなったけど毛並みは相変わらずもふもふでふわふわだし、もふり心地がたまらんな。


 さてと。今日はこの前カヤさんにオススメされた仕事のうちの、お店の手伝いをするつもりだ。


「今日は俺は仕事行ってくるよ。2人はどうする?」

「おかみさんのおてつだい!」

「昨日は遊んだから」

「そか。頑張りすぎないでいいからな」


 女将さんに挨拶をし、冒険者ギルドにいく。


「カヤさん、こんにちは。」

「あ、もふたさん。こんにちは。今日は仕事ですか?」

「はい。この前店の手伝いの仕事があったのでそれやろうかと。」

「なるほど。まだ募集してますので、ぜひお願いします」


 鍛冶屋、道具屋、薬屋の手伝いか。

 ついでに技術も教えてもらえたりしないだろうか。

 まずは鍛冶屋。お店の前に剣が2つ交差するマークの看板がある。


「こんにちは。冒険者ギルドでお手伝いが欲しいと聞いてきました。」

「おう、お前さんも手伝ってくれるのか。こっち来てくれ。」

「はい」

「お前さんの他にも同じ依頼を受けてくれた人がいてな。」

「あ、はじめまして!時の旅人の めーぷる です!」

「あ、どうも。時の旅人の もふた です。」

「ふわぁ、真っ白い狼!かっわいぃ〜」

「ふふ。自慢の相棒です」

「あれ、魔物連れてるってことはテイマーですか?」

「いや、モフらーっていう職業ですよ」

「え゛っ、一切戦闘が出来ないネタ枠の!?」

「あはは。それですね」

「それでやってる人初めてみた…へぇ…」

「まぁその辺でいいだろ。始めるぞ。」

「「はい」」


 商品を並べたり、時の旅人プレイヤーが標準で出来る 鑑定 で劣化してる商品を分けたりする作業。


「めーぷるさんは生産職なんですか?」

「はい。私は知り合いと複数人でやってまして。アクセサリーと服の生産をやろうかなと」

「へぇ。じゃあお世話になるかもしれませんね」

「あ、そうだ!フレンドなりません?」

「いいですよ。えっとフレンド申請…これか」

「来ました来ました。ではなにか用事ある時は個人チャットくださいね」

「了解。あ、店主さん。僕は生産職に興味があって…。鍛冶の仕方って教えてもらえたりしませんか?」

「あぁ…悪いな。弟子はちょっと取れん」

「そうでしたか。失礼しました」


 残念だが無理なら仕方ない。


「よし。こんなもんだろ。お前たち、助かったよ。依頼完了の手続きをするぞ」

「「ありがとうございました」」


「次は…道具屋か」

「ですね。」


 道具屋のシンボルは袋の口を緩く紐で縛ってあるものが描かれた看板だった。


「「こんにちは」」

「おや、いらっしゃい。」

「ギルドの依頼で、お手伝いに来ました」

「なるほどねぇ。じゃあこれを手伝ってちょうだい」


 作業は鍛冶屋と同じく、陳列と傷んでいるものを分けることだった。


「うん、こんなものだね。ありがとう。」

「「ありがとうございました」」


「最後は薬屋だね」

「え?そんなのありますか?私が受けた依頼は鍛冶屋、道具屋のふたつですけど」

「え?でも俺にはあるけど…じゃあ1人限定の依頼かな」

「それか好感度だったり、必要スキルとかでしょうか。」

「うーん。分かんないけど、じゃあここでお別れになるね」

「そうですね。変わったことがあれば後で教えてくれません?」

「いいですよ。ではまた。」

「はい、また。」


 そうして1人になって薬屋の元へ。

 薬屋…つまりポーションを売っているお店だ。メスフラスコのような、下が丸く膨らんでいる試験管のような形のものに液体が入っているマークが書かれた看板のお店に入る。


「こんにちは。ギルドからの依頼でお手伝いにきました」

「んえ?ギルド…いや、カヤちゃんか。よろしい。こっちへ来なさい。」


 そう言って俺を出迎えたのは優しげな顔をしたおばあちゃんだった。


「調薬のスキルは持っとるかね?」

「はい」

「ふむ。錬金術はどうかね?」

「あります」

「なるほど。良いじゃろう。ではお前さんにはポーションの作り方を教える。だからポーションを作ってくれ。設備と材料はあるから心配する必要はないよ」

「わかりました、ありがとうございます」


 ここに来てポーション作りを教わることが出来るのか。


「この草…薬草を煮る。煮えたら、お湯を捨て、こっちの魔力水に入れ、魔力を込めながら混ぜる。これだけじゃ」

「わかりました。」


 もしかして、薬草を煮るにしても、温度を変えたり、アクをよく取るなどしてひと手間加えると品質が変わったりするのでは無いだろうか。


 薬草を煮る。丁度いい温度の調整は流石に知らないが、煮ている間にアクを取っていく。お湯を捨て、薬草を細かく切ってから魔力水入れ、魔力…MPを込めながら混ぜていく。


『回復ポーション+3』


 お、予想通り回復量が微増したポーションが出来上がった。


「ふっ。わしが教えた作業工程から、細かい手間で品質が上がることを勘づくとはなかなか見込みのあるやつじゃ。ではお主にはアドバイスをくれてやろう。ほぼ同じ材料でもひと工夫するだけでまったく違うものが出来ることがある。それを頭にメモしておくんじゃな。」

「あ、ありがとうございます」

「それと、その品質は店で売れんわい。それはお前さんにやるから、次からは手間をかけない工程で、普通のポーションを作るんじゃぞ」

「わかりました」


 えーっと、確か…あった、掲示板の非公開モードでメモとして残しておこう。

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