5.始まりの街 孤児院

 今日もログイン。


「おにいちゃん、おはようっ!」

「アニキ、おはよう」

「あぁ。おはよう」


 2人ともまだ細いがだんだん健康的になって来たな。


 最初のごみ拾いから数日が経って、東西南北のゴミ拾いを終わらせた。

 フェルなんだが、ログアウト中の俺が一緒に居られない時間、街の外へ行って狩りをしているようで、素材やらアイテムなどがインベントリに入っている。金銭的に余裕が出来てすごくありがたい。そしてなによりもふもふ。


「今日は一緒におでかけするか?」

「ほんとっ?やったー、おにいちゃんとおでかけー!」

「アニキ、お仕事はいいのか?」

「ああ、精霊フェルが狩りをしてくれてるみたいで、余裕が出来たんだ」


 ありがとな、の意味を込めてフェルを撫でる。


「へー、精霊ってすごいんだな。」

「おにいちゃん、はやくいこ!」

「こらこら、慌てなくても行くから。転んじゃうぞ」

「転ばないも〜ん」


 3人(と1匹)で屋台めぐりをしつつ、街の南方面へ向かう。

 南側は日当たりがよく、孤児院がある。つまり、ユキヤクロと同世代の子どもたちがいるのだ。


「こんにちは、シスターさん。」

「あら、もふたさん。こんにちは。そちらがこの前仰ってたユキちゃんとクロくんですか。」


 シスターは俺と同年代くらいに見える、若い女性だ。


「えぇ。ずっと宿に居させる訳にも行きませんので。」

「そうですね。…ユキちゃん。クロくん。ここは孤児院。あなたたちくらいの子が沢山いるのよ。着いていらっしゃい。」

「うん!」

「あ、アニキ…」

「大丈夫。ただ遊びに来ただけだから」


 そんな捨てられる子犬みたいな顔をするんじゃない。よしよし。


「わははー!我は魔王だー!」

「む!お前が魔王か!僕が勇者だ!」

「私も勇者だー!とーっ!」

「「「うりゃー!とー!」」」


 勇者ごっこかな?微笑ましいな。


「みなさん、今日はお客さんがいらっしゃいましたよ。」

「あー!もふたのにいちゃんだー!」

「「いらっしゃーい!」」

「もふにぃ。ニナに会いに来た?」


 1人、女の子が俺の足元にやって来て抱きつく。


「あはは、今日は俺が保護してるこの子達の遊び相手が欲しくて来たんだ」

「むぅ。」


 ゴミ拾いをしているときにここの子どもたちに出会って、遊び相手をしてたら懐かれたんだよな。きっとユキやクロとも仲良くしてくれるだろう。


「あなた、名前は」

「私はユキっていうんだ!」

「ん。ニナ。もふにぃとはニナが結婚するから」

「えー!ダメだよ!私が結婚するの!」

「違う。ニナ」

「違うもん!」


「ふふ、もふたさんはモテますね。」

「はは。可愛いものですね」

「お茶でもいかがですか?」

「はい、いただきます」


 子どもたちが遊び、それを眺めながらシスターと談笑。あっという間に時間が過ぎ…


「そろそろ昼食ですね。用意しましょう」

「そうですね。お手伝いします」


 こういう時に輝く料理スキル。

 戦闘系のスキルはないが、生活を豊かにするスキルは充実している。


「「「いただきまーす!」」」

「うめー!」

「もふた兄ちゃんのつくる料理うめー!」

「ん。もふにぃのごはんさいこう。さすがニナの未来の夫」

「もーう!ニナちゃん!おにいちゃんはあげないもん!」

「アニキ、やっぱり料理はできる方がいいのかな?」

「得意不得意もあるだろうしなぁ。できる人がやればいいさ」

「あらあら元気ねぇ」


 わいわいがやがや。みんな楽しそうに、おいしそうに食事をしてくれて、作りがいがあるってもんだ。


 食事が終わると子どもたちは眠たくなったのか、寝かしつける。

 そんなこんなで時間が過ぎていく。


「本日はありがとうございました。この子達の遊び相手が出来てよかったです」

「それはこちらも同じですよ。ユキちゃん、クロくん。いつでも来ていいですからね」

「ばいばーい」

「たのしかった」


「たまにここに来て遊ぶか?」

「うん!またくる!」

「でもおかみさんの手伝いもする」

「そうだな。」

「あいつら、俺たち獣人だって分かってても普通に接してくれた」

「あぁ。いいやつらだろ?」

「うん」


 これからは定期的にここに連れてきた方が良いだろうな。

 2人をおんぶして女将さんの宿へ戻った。

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