4.遭遇とゴミ拾いと
街並みを眺めながら西へ向かう。始まりの草原に続く門は東側だから、他のプレイヤーとは真逆へ向かうことになる。
「結構この街広いよな。入り組んでるし、スラムもあるし。」
「そうじゃろう。しかしなるほど。お主からは他の者とは違う空気を感じるわい。戦闘をするでも、生産をするでもなく、ただの雑用とな。かっかっ」
!?
ただの独り言のつもりだったのに聞かれてたとは!?
声の主を探そうとキョロキョロするが…いない…?
「あぁそうじゃったな。普通は見えなんだ。ほれ、これでどうじゃ」
ポン、と軽い音がしてそちらを見ると巨大な白い…毛玉?
ふむ…毛並み、つや、色…ほうほう。絶品ですな、これは。…じゃなくて。声やしゃべり方は爺さんなのに毛玉て。
「かっかっ。お主は運がいいな。儂は風の精霊王フェンリル。自由と面白いモノをこよなく愛す存在じゃ」
「おや、精霊王とな。そしてフェンリルか…毛玉にしか見えんのだが。」
「この姿は仮のものじゃからな。本物を見たくば精霊界へ来るが良い。」
「えー…それ終盤に行くような所だろ…?俺、戦闘出来ないからこの街から出られんのだが。」
「む?本当じゃ、こやつ時の旅人の癖に戦闘出来ん。面白いのう。かっかっかっ。実に愉快」
「…まぁ確かに変だとは思うから否定はしないが笑われると気分は良くないな」
「すまんすまん。いや、実に久々に面白い出会いをしたな。よし、気に入ったぞ。主には風の精霊を付けてやろう。」
「は?いや、精霊って普通見えないんだろ?貰ってもあんたみたいに見えるようにして貰わないと見えないし、そういう強力なやつ俺が貰っても宝の持ち腐れじゃん。」
「だからこそ面白いじゃろ?そうじゃな。コイツでどうだ。儂の直系、フェンリル・ベビーじゃ。それと特別にお主には精霊が見えるようにしてやろう」
『スキル:精霊の目を入手しました』
効果は…ふむ、ただ精霊が見えるようになるだけか。まぁ貰えるもんなら貰っておこう。
それにしても、フェンリル・ベビーだって!?
今目の前のフェンリルと直系なら毛並みとかも一緒じゃん!!!もふもふきちゃ!!!
ふと肩に重みを感じてそちらを見ると、真っ白の狼が。サイズが40センチくらいで超可愛い。
「フェンリル。いや、風の精霊王と呼べばいいか?とにかく、ありがとう。大切にするよ」
「かっかっ。フェンリルでええ。なに、儂が面白くてしただけじゃ。ではいつかまた会えることを楽しみにしてようぞ」
強い風が吹き、反射で目を瞑る。目を開けた時にはもうフェンリルはいなかった。
精霊は…テイムでいいの?見た目動物だからいいのかな
「なぁ、テイムされてくれるってことか?」
「わうっ」
「そっか。じゃあ『テイム』」
フェンリル・ベビーの下に魔法陣が現れ、通過していく。
『フェンリル・ベビーがテイムを受け入れました。名付けをしてください』
「そうか、名付けか…じゃあ、お前の名前はフェル。よろしくな?」
「わうわうっ!」
喜んでくれたようだ。
さてと。ついイベントに時間を取られてしまったが、本来の目的はゴミ拾いだ。
拾ったゴミをギルドで渡された専用のカゴに入れていく。
「わうわうっ!」
「ん?どうした?」
「わうんっ!」
フェルが一際大きく吠えると竜巻上に風が起こり…おお、ゴミが1箇所に集まった。
そういやフェルは風の精霊なんだもんな。こういうことが出来るのか。便利だ。
「すごいな、フェルは。えらいぞ〜!」
わしゃわしゃわしゃ。さっきの精霊の目のオプションなのか分からんが、きちんとさわれるのは助かるな。なでなで〜。もふもふ〜。
お、喉元グリグリされるのがいいのか?うりうり〜。可愛いなぁ…癒される…。
めいっぱいフェルと戯れてからギルドへ。
「あ、もふたさん。終わったんですか?」
「はい。西側は終わったと思うので明日は北側でもしようかと。」
「ありがとうございます…!!では報酬を払いますね。」
やー、お金も稼いだし、フェルも手に入ったし、いい日だったなー。
チリンチリン。
「おや、もふたかい。おかえり。2人が仕事を手伝ってくれてね。助かるよ」
「え、そうなんですか。こちらは格安で泊めさせていただいている身。お礼を言われることは。でも2人は後で褒めておきますね。」
「あぁ、そうしてやんな。」
「戻ったよ〜」
「あ、おにいちゃん!おかえりなさい!」
「お、おかえり」
「ただいま。聞いたよ。女将さんを手伝ったんだって?えらいな。」
2人の頭を撫でる。
「え、えへへ〜。お世話になってるからお礼にお手伝いするの!」
「飯もうまいし、何より寝る場所をくれた。だから、当然。」
「あぁ、いい考え方だよ。貰った恩には恩で返さないとね。」
「ところでアニキ。そこに何かいないか?」
おや、クロが初めて僕のことを呼んだな。アニキ、か。ちょっとむず痒いな。
そして…精霊が見え…いや、聞いてきたという事は感じるのか。
「あぁ、精霊と仲良くなってな。分かるのか?」
「うん、獣人、感がいい。俺とユキは特に」
「そうだったのか。初めて知ったよ」
「アニキ、俺たちのこと悪く思わない。だから、初めて話した」
「…そう。ありがとな。」
そういってもう一度クロとユキの頭を撫でた。
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