3.ユキとクロ (2/6 14:34更新)
今日もログイン。
「はわぅっ、おひゃようございまひゅっ!」
目を開けるとすぐ近くでこちらを覗いていた女の子と目が合う。そしてぱぁっと花が咲くような笑顔になって、挨拶が噛み噛みで恥ずかしそうに真っ赤になった。
何この子。可愛すぎん?
となりにはチラチラとこちらを見つつ、目が合うとそっぽを向く男の子。
…そうだ、昨日保護した子達いたんだったわ。
「あぁ、おはよう。体調はどうだ?」
「おかげさまで、すごくよくなりましゅた!ぁぅ…」
そういえば噛み噛みではあるものの、この子の声をしっかり聞くのは初めてだな。無口な子だと思ってたんだけど、単に気力が無かったんだな。
「一応昨日俺が保護したんだけど、君たちはどうしたい?昨日この世界にきたばかりで、君たちを養って行けるか分からない。」
「え、えと、わたしはおにいちゃんとそばにいたい、でしゅ…」
「い、妹がこういうから世話になってやる」
お、おにいちゃん…だと…!?はっ、1人っ子だからこういうのに弱い…じゃなくて、兄妹だったのな。ってまだ自己紹介してないじゃん。
「そうだった、俺はもふた。君たち、名前は?」
「わたしはユキです!」
「…クロ」
「そっか。ユキ、クロ、よろしくな。」
「…俺たちのこと聞かないのか?」
「別にいいさ。お前たちはユキとクロ、俺が保護した子。それだけだ」
「ふぅん…獣人の俺たち見ても変な目で見ないんだな」
「言ったろ?俺はこの世界で育ったわけじゃない。偏見はないよ」
「…そうか。」
どうして子ども2人でスラムにいるのかとかそういうのは自分たちで言いたくなったら言えばいいさ。今は俺が守ってあげる存在。それだけだ。ま、まぁ、健康的になったら耳を触ってみたいっていう気持ちもあるけど。
下へ降り、女将さん手作りの朝食を取る。
とりあえずこの子達の格好を何とかしたいな。ボロボロの布を纏ってるみたいなもんだし。
「あ、女将さん、水とタオルって貸して頂けませんか?」
「あぁ、あの子たちを拭いてやるのね。あいよ。」
「ありがとうございます」
タオルと水の入った桶を受け取り、部屋へ戻り、タオルを濡らして、2人の髪を拭いてやる。
「〜♪」
嫌がるかなと思ったけど、案外2人とも気持ちよさそうに目を細めて受け入れてくれた。
流石にまだ耳をモフろうとは思わなかったけど。
そして綺麗になった髪を見て驚いた。ユキは名前のごとく白くなったのだ。水しかないからくすんだ白にまでにしかならないのが悔しい。
クロの方も名前のまんま、真っ黒の髪だった。見事に真反対の2人だね。
2人とも多分化けるな。すでに美少女、美男子の雰囲気を感じる。
「さて。買い物に行こうか。」
「うん、おにいちゃんっ!」
「わかった」
「女将さん、安めで服が買えるお店ってどこにありますか?」
「それなら、そこを曲がって真っ直ぐ行った所にある、サチがやってる服屋に行くといい」
「何から何までありがとうございます。」
「なぁに、おばちゃんのお節介さ」
カランカラン。
「おや、時の旅人さんとは珍しい。いらっしゃい。」
「こんにちは。女将さんから服はここがいいよと聞いたので。」
「あら、女将さんが。ほうほう。この子達の服を見繕うのかい?」
「はい。それと…これ、売れないでしょうか?」
そういって差し出すのは、初期のインベントリに入っている防具と、武器だ。
「うーん、うちは装備は扱ってないんだけど…まぁいいか。いいよ、これの料金で買えるくらいの物ってことね」
「はい、そういうことです。お願いします」
そうしてユキには寒色系のワンピース。クロには白のシャツに茶色の短パンを買った。
さてと。次は何をしようか…
「おにいちゃん、スラムに寄っても…いい?お世話になってたおねえちゃんがいて、おにいちゃんに助けてもらったって伝えたいの」
「なるほど。それはしないといけないな。案内はお願いしてもいいかな?」
「うん!」
「なるほど、そういうことでしたか…。急にいなくなって少し心配してましたが、ありがとうございます。」
「いや、ただの偽善で助けただけですよ。」
案内先にいたのは現実で例えるなら中学生くらいの女の子だった。しっかりしていて、よくこの子達のめんどうを見てくれていたみたいだ。
どうしてこんな人がここに居るのか、とちらりとよぎったが、あくまで他人だ。踏み込みすぎはよくない。
「そういうことですので、あなたが気にする事はないですよ。」
「はい。あなたのような優しい方に保護してもらえて良かったね、2人とも」
「うん!」
「ま、まぁ…うん。」
そんな光景を微笑ましく見ていた。
さてと。2人を養うにしてもお金の問題が残っている。
戦闘が出来ないからドロップを狙うのもキツいし…冒険者ギルドで戦闘しない仕事がないか探してみるか。
「俺は仕事探してくるから、2人は部屋に居てもらうけど、いいか?」
「おにいちゃん、行っちゃうの…?」
「こ、こら、俺たちのためにやってくれるんだから」
「そ、そうだね。うん、わたし、待ってる」
「あぁ、危険なことをしてくる訳じゃないし、戻ってくるよ。」
「行ってらっしゃい!」
1度宿へ戻り、2人を預ける事にした。女将さんは「任せな!」と笑顔で引き受けてくれた。頼もしいな。
その後はギルドへ。
「カヤさん。こんにちは。昨日はありがとうございました。」
「あ、もふたさん。いえいえ。おふたりは?」
「女将さんに面倒を見てもらっています。あの、お金を稼がないとなので…」
「あー…それでここに。なるほど。ではもふたさんでも出来そうな仕事を探しますね」
「はい、お願いします」
ざわ…おい、カヤさんがあんな…ざわ…まえの…ざわ…
外野がうるさいな…この前子どもを連れてきたから目立ったのかな。
「おまたせしました。申し訳ありませんが、雑用の仕事くらいしか…」
「いえ、仕事があるだけで十分です。見せてもらっても?」
「はい。」
あるのは…ゴミ掃除、ペット探し、店の手伝い…ふむ。
街の把握のために街を動き回るゴミ掃除やペット探しもしたいし、交流のために店の手伝いでもいいな。
しかし最初は…
「では、このゴミ掃除で。」
「わかりました。討伐クエストではないため冒険者ランクは上がらないため受ける人がいなくて…助かります。」
「いえ、自分に出来るのが雑用だけですから。では西の方でやってきますね」
報酬は拾ったゴミの量しだい。
あまり報酬が高くないため、なるべくたくさん拾わないといけないな。
ーーーーーーー
読んでいただきありがとうございます。
のんびり書いていこうかなーっておもってましたが、反応が貰えて嬉しくてつい書き進めてしまいました。
もふもふは次でしたいな…?
というわけで、次回、もふもふとの遭遇!(確定事項)
【更新内容】
「こういうシーンを追加した方がいいですよ」という意見を貰いまして、ちょっとした移動の描写と、女将さんに2人を預けるシーンを追加しました。
ご意見ありがとうございます…!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます