2.出会い、保護。もふもふ…には気が引ける

 ワイワイガヤガヤと騒がしい声が聞こえる…

 目を開けると人、人、人…

 始まりの街の噴水が初期地点と情報があった。

 チュートリアルなんかは特にないようだな。手探りでやっていけと。

 とりあえず最初にすることは…もふもふ探しだな。テイムするにも対象がいなきゃどうしようもない。

 始まりの平原にはウルフがいるらしいが…まずやられるだろうな。

 街中にテイム出来るやつでもいないだろうか。適当にブラブラするか。


 大通りを歩いてても見つかるはずないだろうな。裏路地を進む。

 うーむ、スラム、か?こういうのもあるのか…。みすぼらしい大人から子どもまでが座り込んでいる。


「…めろ!」


 かすかに声が聞こえた。

 戦闘力は皆無だが、一応様子は見ておこう。

 物陰から見ると、子ども2人が大人に抵抗しているのが見えた。

 これは…放置すると気分が悪いな。


「なにしてんだ」

「…ちっ」


 見られたくないのか、俺が姿を見せると大人の方は去っていった。


「…大丈夫か?」


 膝をつき、子どもの目線に合わせ、出来るだけ優しい声で話しかける。あ、優しそうな微笑みも忘れないようにしないと。


「ぁぅ、ぁりが…ぅ…」

「お前もさっきの仲間か!!」


 片方は女の子か。すごく小さな声だった。

 もう1人は男の子。女の子を庇うように俺に噛み付いてくる。

 2人ともケモ耳が着いている。が、ガリガリで元気がなさそうだから流石にモフれん。気が引ける。


「違うさ。ただの通りすがりの時の旅人だよ。」


 時の旅人とは、プレイヤーのことだ。

 NPCは現地人と呼ぶ。


「もう大丈夫だよ。」

「そう、か…」


 なんとなく分かってはいたのか、そういって男の子は座り込んでしまった。気力だけで立っていたようだ。

 …はぁ。ここまで関わっちゃこのまま はいさよなら なんか出来ないよなぁ。


「とりあえずなにか食え。大通りに行くぞ」


 2人一緒におんぶをして大通りに戻る。

 大通りでは屋台が至る所にある。


「串焼きを3つくれないか?」

「お、にぃちゃんまいどぉ!背負ってる2人に食わせるのか?ちょい待ってな、小分けにしてやる」

「あ、それは助かる。ありがとう」

「いいのさ。人助けしてる人には優しくした方が気分いいだろ?ほれよ、3つで250Gだ」

「あれ?1つ100Gじゃないのか?」

「いいさ、まけてやるよ。」

「これは…親切にどうも。」


 所持金はスタート時に1000G手に入ることになっている。


「ほら、ゆっくり食えよ」

「ぁ、…がとぅ…」

「…。」


 女の子はちょっとずつ、男の子は何も言わずに食べ始めた。


「こらこら、食べ物は逃げないから。ゆっくり食べなさい。」


 そういって自分用に買った串焼きをぱくり。


「ん、んまっ」

「おうともよ!始まりの草原にいるラビットの肉だ!タレは秘伝だがな!」


 食べ終わって満足したのか、子ども2人はコクコクと船を漕ぎ始めた。

 これは信用してくれているのだろうか。

 モフらーのNPCとの好感度が高い効果かな。

 さっきは夢中だったが、どうすりゃいいんだ?


「あの、この子達スラムで拾ったんですけど、どうしたらいいです?」

「ん?保護してぇんなら冒険者ギルドだな。身分証の発行とかもやってる」

「なるほど。色々ありがとうございます。僕は時の旅人のもふたです。美味しかったのでまた来ますね」

「お、にぃちゃんは時の旅人だったか。おらぁ現地人のドンベーだ!またきてくれ!」


 ドンベーさんに礼を言って冒険者ギルドへ。


「いらっしゃいませ。ご要件は?」


 受付は美人のお姉さんが対応してくれる。


「はい、俺は時の旅人なんですが、この子達を保護したので身分証を用意したくて。」

「なるほど。あなたの身分証は用意しなくてよろしいので?」

「あ、俺の分も用意しないとか。では俺のもお願いします」

「承りました。この水晶に手をかざしてください…はい、ありがとうございます。そちらの子達も手をかざして…ありがとうございます。では、用意しますので少々お待ちください。」


 流石に子どもがいると目を引くのか周りの視線でなんか落ち着かない…。早くしておくれ。


「こちらが身分証となります。」

「ありがとうございます」


 受け取ったカードは白いカードに名前、職業が書いてあるだけのカードだった。


「保護したと言っておりましたが、まだ泊まる場所決まってないのではないでしょうか?」

「あ、そうなんです。どこか泊まれるいい場所はありませんかね」

「そうですね。では私が個人的におすすめしている宿を紹介しますね」

「それは助かります。ありがとうございます」

「いえいえ。子どもに優しくしている人に悪い人はいませんから。あ、私はカヤです。あなたはなんだかこれからたくさん会うことになりそうですので遅れましたがご挨拶を。」


 そういって彼女は微笑んだ。び、美人だから見惚れてしまいそうになった。

 逃げるようにして教えてもらった宿へ行く。


「いらっしゃい!」


 ふくよかなおばさんって感じの人が受付をしていた。


「こんにちは。1部屋借りられますか?」

「おや?ここはメインは食事処だが…誰かから聞いたのかい?」

「はい、冒険者ギルドのカヤさんから。」

「ほほう、カヤちゃんかい。珍しいね。いいよ、カヤちゃんからの紹介なら1日50Gでいいよ」

「え、やすっ!いいんですか?」

「私がいいって言ってるのさ!遠慮しなさんな」

「ありがとうございます。」


 部屋の鍵を受け取り、2人を連れて部屋に上がる。

 ベッドと机の質素な部屋ではあるが、寝る(ログアウト)するには十分だ。


「眠いだろうけど聞いてね。さっき言ったように、僕は時の旅人で、たくさん寝ないといけないんだ。だからしばらく目を覚まさないけど、気にしないでね。」

「わか……した…。」

「わかった…」

「じゃあ2人とも、おやすみ。」


 そして今日はログアウトした。




 ーーーーーーー

 読んでいただき、ありがとうございます。

 最初のもふもふはワンコ系がいいかなーって思ったけど、せっかくのファンタジー。ケモ耳ロリショタを保護する展開にしました。

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