36.開店!

 今日もログイン。


 昨日知り合いに開店のお知らせを済ませた。

 まあ効果値を極め抜いた生産職が作った商品に劣るだろうからただのコレクションになりがちかもしれないけどな。

 売れれば儲けもの、といった考えでおこう。

 また、庭で暮らしているアウネには騒がしくなるということで、玄関から遠い家の裏側の方の庭に移動してもらった。静かなのが好きなのに店なんて開いて申し訳なく思ったが、気にしてないようでよかった。


「おにいちゃん、今日お店開くんでしょ?私も手伝う!」

「アニキ。俺も手伝う」

「ん。もふにぃのために働く」

「まぁ、いい経験になりそうですわ」

「嬉しいけど、手伝ってもらうほど混むとは思えないけどな」


 苦笑しながら答えるが、手伝ってくれようとする子どもたちの姿勢に頬が緩むのを感じた。


 開店の30分ほど前には、トーヤさん、ソーヤさん、マリンさん、ルビィさんが集まった。


「「「「おはようございます」」」」

「みなさん、おはようございます。」


 昨日子どもたちとも顔合わせしてあり、打ち解けている。

 今日は初日なので俺も様子見で店にいる。


「おはようございます、もふたさん」


 いの一番にやって来たのはカヤさんだった。


「あ、カヤさん。いらっしゃいませ。ギルドの方は?」

「ふふ。もふたさんのお店ですからね。他の人に押し付け…コホン。任せてきたので大丈夫ですよ」


 今押し付けてって…えぇ…。押し付けられた人、ご愁傷さまです。


「へぇ、聞いてはいたけどやっぱり色々ジャンルの違うものが売られてると新鮮ですね。オススメとかありますか?」

「趣味で作ってたものを並べてるだけですからね…実用性があるかは分からないのでオススメとかは…。あ、でもお菓子なんかはどうでしょう」

「お菓子?って何でしょう?」


 あ、そうだった。お菓子はこの世界に一般的ではないんだったな。


「えと、ご飯じゃない、簡単につまめる食べ物、ですかね?」

「では、それ買います」


 いくつかお菓子を買って、さすがに仕事が気になるのか帰って行った。


「おはよう、もふたくん。きたよ」

「きたわよ〜」

「あ、めーぷるさんにミィさん。おはようございます、いらっしゃいませ」


 次にやってきたのはめーぷるさんとミィさん。

 やはり売ってるものが個人的な物で珍しいのか、色々物色していた。


「うえ、料理のバフ値上がってるじゃん。どうやってんの…?」

「ほんとだ〜。まだこんなバフ値、他に見てないね〜。リアルスキルが関係してたりするのかしら〜」


「あ、このコップかわいいかも」

「そう〜?ただの木でできたコップじゃん〜」


「あ、ポーション種類豊富」

「ほんとね〜。え、出血回復ポーション…?誰も作り方知らない…ん?エクスポーション…?聞いた事ない…って効果すごっ!え?ええ?」


 こんな感じでいちいちリアクションが面白くて笑ってしまった。


「また来るね、もふたくん」

「また来るね〜」


 余裕があったのはここまでで、その後はフレンドのユーゴさんや、買い物の時によく話す人達や、気分で受けた簡単なクエストの依頼者、あとはカヤさんの知り合いとかたくさんの人が来た。


「ひ、人すごい来たわね…」

「もしかしてもふたさんって人気者…?」

「みんないい人で俺たちは楽だけどな!」

「こら、だからって気を抜いていいわけじゃないぞ」

「いやー、俺もあんなにたくさん人が来るとは…」


 ラッシュが終わり、余裕ができた時にそんな話をする。


「っと、みなさん順番にご飯食べましょう。交代でキッチンの方へ回ってください。ご飯を用意します」

「よっしゃ!待ってたぜ!」

「えへへー、もふたさんのごはん美味しいから楽しみにしてたー!」

「ま、まぁ楽しみにしてたのは同意する」

「そうね。とっても美味しいもの。」

「ユキ、クロ、ニナ、シャルもありがとな。ご飯にしていいぞ」

「「「「はーい」」」」


 それぞれで休憩をとり、午後。


「おおお、すげえこのバフ値!」

「む…ゲーム内なら太らない、甘いもの食べ放題…じゅるり…」

「へぇ、素人感丸出しだけどこれはこれで味のある作品じゃないか」

「見たことないポーション売ってる!すげぇ!」


 プレイヤーがどんどんやってくる。

 なんでだ、と思っていると、めーぷるさんから連絡が。

 どうやら午前中ふらっとやってきて買い物をしたプレイヤーが掲示板で拡散したようだ。

 注意しておくね、と言っていたが、その人のおかげで繁盛しているから、気にしてないのに。むしろ感謝である。


 そんなこんなであっという間に過ぎていき、品切れになったので予定よりも早く店を閉めることに。


「みなさん、お疲れ様でした。あんなに人が来るとは思いませんでした」

「いやいや。報酬もきちんと貰ってますし、気にしてませんよ。」


 ソーヤさんが代表としてそう答える。


「しばらくしたら落ち着くと思うので…多分。おそらく。きっと?」

「いや自信なしかよー」

「無責任だねー」


 みんなして笑う。


 なんか、こういうの、楽しいな。


 人と一緒に何かをして、ボケて、笑って。

 パーティをほぼ組まないから、こういうノリが新鮮で楽しいと。そう感じた。


 この人たちを雇ってよかったな。




 ーーーーーーーーーー

 お読みいただきありがとうございます。

 もふたくん、周りにボケられるような人があんまいないけど、こういうノリもちゃんと好きです。

 あと、最近息してなかった(というか出すの忘れていた)アウネを玄関から遠い静かなところに移動してもらいました。

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