11.お家のお披露目とクロのやりたいこと

 本日もログイン。


「おはよう、ユキ、クロ、フェル。」

「あ、おにいちゃんのおはよう!」

「おはよう、アニキ」

「わふっ!」

「今日は2人に見せたいものがあるんだ。ご飯を食べ終わったらお出かけするよ」

「やった!おでかけ!」

「楽しみ」


 今日でここに泊まるのは最後だな。でも今までたくさんお世話になってたし、ご飯も美味しかったから泊まるのが目的ではなく、食事を目的に来よう。


「おはようもふた。ついにここも寂しくなるねぇ」


 女将さんには昨日伝えている。


「これからは宿泊客ではなく料理の客として来ますよ。そっちがメインでしょう?」

「そうだった、はっは。客もこの2人が元気に働いてるのを微笑ましく見てたのもあるから、そのお客さんは寂しがるかもしれない」

「あー、それは確かに…。あんまり気が向きませんが、2人がいいならたまにお仕事の手伝いをして貰ったりとかしますかね。」

「それは名案だね。是非ともお願いしたいよ」


 そんなこんなで朝を過ごし、新しい拠点へ。


「さぁ2人とも、ここが僕たちの家だよ」

「わぁ、家に住めるの?」

「広い…」


 2人とも目を輝かせ、耳をピクピクさせている。ふふ、興奮してるな。この姿が見れただけでこの家を買った価値があるってもんだ。


「さ、中に入ろう。」

「「うん!!」」


「ひろーい!」

「すごい、寝る部屋以外にも部屋がある」

「そうだろうそうだろう。」

「…アニキ。ちょっと、いい?」

「ん?どうした?」

「俺、冒険者になりたい。狩りをして、レベルを上げて、稼ぐ」

「む…。そうか。俺としてはお前の意志を尊重したい。だが、冒険者は命懸けだ。簡単には許可出来ない」

「う、うん…」


 現地人がリスポーンするかも分からないしな。いや、リスポーンするとしてもクロが死ぬ姿なんか考えたくないし、見たくない。

 だが、もしも襲撃があった時に俺が戦闘で2人を守れない以上、戦力があった方がいいのもある。フェル1匹で3人を守るにも無理があるだろう。


「そう落ち込むなよ。きちんと何がしたいか、ということを考えているのはいい事だ。俺は嬉しいぞ」

「そ、そう?怒ってないのか?」

「怒ってないさ。じゃあそうだな…ギルドへ行こうか。ユキはどうする?」

「うーん…私は冒険者には興味無いけど、1人でいるのつまんないから行く!」

「そっか、じゃあ一緒に行こう」



 ギルドへ行き、カヤさんと奥の部屋へ。


「もふたさん。それでクロくんが冒険者になりたいという話ですか」

「はい、冒険者を沢山見てきたカヤさんにも聞いて、意見が欲しくて。」

「なるほど。分かりました、お聞かせください」

「お願いします。さて、じゃあ冒険者になるための条件だな。まず1つ。これはなるためでは無いが、心構えだ。お金稼ぎではなく、命を優先すること。」

「命?」

「あぁ。お前の命はもちろん、冒険者になると、人との出会いもあるだろう。そういう人達が危険な時、目の前の任務よりも優先して欲しい。もちろん、お前自身に危険が無ければだが」

「確かに。人の命、だいじ」

「…なるほど。もふたさん、いい事言いますね。」

「時の旅人は死んでも復活します。ですが現地人はしないのではないでしょうか。なので、この心構えは1番大切なことだと思います」

「はい。あ、話を折ってしまいましたね。続けてください」

「では、2つ目。きちんと実力を付けること。確かギルドには訓練場がありますよね?」

「はい、ありますよ」

「そこで訓練して欲しいのですが、お手隙の実力がある人に指南して貰えないでしょうか。」

「なるほど、訓練ですね。良いでしょう、幸いにも人には余裕があります」

「ありがとうございます。では3つめ。俺には実力なんて分からない。だから、冒険者になる実力があるとカヤさんに認めてもらうこと。すみません、お願い出来ますか?」

「はい、よろこんで。」

「うん、わかった、アニキ。俺、がんばる」

「あぁ。色々と言ったが、俺はクロを応援している。頑張れよ」


 わしゃわしゃとハリが出てきた黒い髪の上から頭を撫でる。

 照れくさそうな顔と嬉しい顔を合わせたような顔をして受け入れているクロと、笑顔で撫でている俺と、膝の上ですやすや眠っているユキとフェルを微笑ましそうに見ているカヤさんと目が会い恥ずかしくなってそっぽを向いてしまう。


「さて。では、本日はクロくんの実力を知りたいのと、得意な武器を見つけませんか?お時間はありますか?」

「あ、そうですね。時間は大丈夫です、お願いします」

「お願いします」

「では訓練場へ行きましょうか。」



「訓練場って人がたくさんいると思ってましたが、ほぼいないんですね」

「残念ながら。時の旅人のみなさんは訓練などせずにギルド登録したらすぐに門へ向かってしまうので」

「なるほど」


 運動しやすいようにスカートからホットパンツに着替えたカヤさん。

 意識してバッチリ見える太ももから目を離して周りを見渡す。

 ユキをおんぶし、頭の上にフェルが乗っている。


「さぁ、はじめましょう。そこに刃潰しした訓練用の武器があるから、それを使ってみなさい」

「わかった」


 獣人はもともと戦闘能力が高いらしい。

 大剣を振り回し、片手剣で剣を操り、双剣で舞い、拳を振るい、ハンマーで地形を抉り、槍で突き、斧を投げ、杖で叩き、弓を放つ。

 俺に戦闘経験がないからどこがどう凄いとかはよく分からないが、どの武器も器用に使いこなしているクロがなんとなくすごいのは分かる。

 が、全ての攻撃を受け流し、避け、あるいは受け止めているカヤさんもすごい。


「なるほど。大体の実力と使える武器は理解しました。」

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